第Ⅶ十Ⅳ話:VIPチケット。
すみませんっ!
投稿したつもりでいました!(爆死)
『遅いーっ!何やってたのさ!』
スザンヌの間・・・ではなく朱雀の間まで、例の外国人を送り届けた征樹を待っていたのは、既に風呂から上がった杏奈達とこの言葉だった。
『ちょっと館内を探検に。』
征樹はちょっぴり嘘をついた。
別に女性と一緒にいたのが後ろめたいとかそういう事ではなく。
ただ、ふと気まぐれに誰かに親切にしたという現象というべきものが、恥ずかしかっただけ。
所謂、シャイボーイなのである。
征樹のその発言は、それ以上突っ込まれる事はなく、部屋に戻って一息つくと夕食の時間がすぐに訪れた。
問題は寧ろ、そっちの方で・・・。
夕食を部屋で取ると、部屋の定員上、分かれるないし追加の机を入れなければならない。
それならば、大広間で他の客と一緒に夕食を取るという流れになったのだ。
そして・・・"席順"である。
和室で座席。
征樹の隣は2ヶ所。
それを狙うは3人。
現状、どのように想っているのか曖昧な琴音を入れたら4人。
一列に並ぶ座椅子を見れば、征樹の両隣を逃したら最悪、一番端となり下手したら、夕食の間の征樹との会話すらなくなる。
"負けられない戦いがここにあるッ!"
一瞬、交錯する女性陣3人の視線。
ちなみにそこに琴音は含まれていなかった。
どう声を征樹にかけたらいいか、緊張し三竦み状態になる中、にこにこと微笑む琴音。
が。
「征樹ちゃんは何処に座る?」
と、こう笑顔のまま言い放ったものだから、他の女性陣は、はっと征樹の答えに注目する。
「ん~、別に僕は何処でも・・・"一番端"かなぁ、落ち着くし。」
たいして深く考えもせず、出てきた答えは一番端。
5席並んだ中央ではなく、端。
大体において、自分達は征樹が必ず中央に座るものだと決めつけていたのだろうと・・・。
だが、今、この時、"征樹の隣"という2つあったチケットは1枚となり、そして果てしなく高価なプレミアチケットになったのだ。
「じゃあ、お姉ちゃんはその隣にしようかしら?」
ここで仕掛けて来たッ!
誰もが続いて出た琴音の言葉に危機感を持つ。
(琴音さんは最初から・・・。)
あなどれない年長の経験値に同じ年長である静流は愕然とする。
「何時もと同じアタシの隣のが落ち着くんじゃない?」
次に出た年少の杏奈の言葉にも驚き、完全に出遅れた奏と静流2人。
「逆にうるさくてダメそう・・・。」
返ってきた征樹の返事も酷いものだったので、静流と奏はほっとしたが、どうしてなかなか、年少の経験値も侮れない。
「折角の旅行だものね。」
結局、同年代にも年下にも及ばなかった静流の経験値では、そんなよくわからない言葉しか出てこなかった。
「・・・そっか、折角だものね。」
そう征樹は漏らすと、近くにいた仲居さんに声をかける。
「すみません、端の席5人分、向かい合わせに出来ますか?」
その案は何の問題も無く受け入れられ、テキパキと仲居さんが作業し出す。
ここにきて、遥か高みにまで昇っていたプラチナチケットは暴落し、1つだった隣の席は征樹隣2枚、征樹向かい2席となる。
まさに青天の霹靂。
鶴の一声。
「まぁ、正しい家族団欒の風景ね。」
席の形の様子を見た琴音は、そう感嘆の声を上げる。
琴音は最初からこれを狙っていたのだろうか?
そんな錯覚が他の女性陣の頭に過る。
征樹の"家族"というものに対する執着・固執。
そういったモノを読んで、あえてそんな発言をしたのだろうかと。
「じゃ、お姉ちゃんは、征樹ちゃんの隣~。」
ちょこんとちゃっかり宣言通りの席を琴音が確保したとしても、もう誰も文句は言えなかった。
琴音さんの戦闘力はッパネェっス。(苦笑)




