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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第壱縁:ボーイ・ミーツ・・・・・・?
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第Ⅶ話:『ただいま』と『おかえりなさい』の関係。

「ただいま~。」


 と言っても、誰の返事があるワケでもないと理解はしているのだが、なんとなく言うようにしている。

じゃないと少し寂しいから。


「ふぅ。さっさか風呂に入って寝よう・・・あ、さっきの片付けもしないと・・・。」


 逃げ出すように、実際、逃げ出したが。

そんな風に家を出たので、夕飯を片付けもしていないのを忘れていた。


「あら、おかえりなさい。意外と早いのね。」


「えぇ、皿洗いだけだし、お小遣い程度なんで・・・。」


 今の声は?


「て、村迫さん?!帰ったんじゃ?!」


 そこには先程、家を逃げ出す事になった原因がいた。


「静流。」


 問いかけには答えずに一言。


「え、あ・・・静流さん。」


「よろしい。帰るなんて私、一言も言ってないわよ?」


 確かに勝手に帰っていいと言っただけで、本人は帰るとは一言も言ってないし、征樹自身も帰れと言ったワケではない。


「いや、まぁ、そりゃあ・・・。」


「とりあえず、お夕飯の洗い物はしておいたわ。収納場所はわからなかったら、しまってはいないけど。勝手とは思ったけれど、お風呂も沸いているし、とりあえず入ってらっしゃいな。」


 説明はその後だと言わんばかりに静流は、征樹を風呂場へと追い立てる。


「なんなら、背中流してあげましょうか?」


「い?!い、いや、いいですっ!」


 征樹は顔が赤らめながら、居間を猛ダッシュで出ていった。


「カワイイんだから。」


 静流はその様子に吹き出しそうになりながら、征樹の背中を見送る。

自分の考えも悪くはないんじゃないだろうかと思いながら。

バイトに行く征樹を見ながら、彼が出かけている間に一人で考えていたのだ。

正直、征樹の生活環境は悪い。

一人の大人ならばまだしも、思春期の少年。

未成年としては最悪だ。

母親は既に亡くなっているし、保護者の父親は住む箱だけは用意しているが、それ以外の保護者としての責任は完全放棄と言ってもいい。

人間には最低限の生活ラインのうち、二つは欠落している。

いくら父親がワーカーホリック並の仕事人間でも、これは酷い。

しかも、お陰でバイトもしなければならないし、帰宅しても家人がいない、話相手もいない。

これではストレスも溜まるだろうし、非行に走りかねない。

現状はまだ大丈夫みたいだが。


「でも・・・。」


 現状、何故、あんなマトモな子供になっているのかが不思議だ。

余程、幼少期の祖父母の教育が良かったのか?

第一、あの所長の息子の時点で、人生のスタートラインからして残酷な現実だ。

などと頭を高速回転させて考えた結果。


"ちゃんとした大人が保護すべきである"


という地点に着地した。

幸い想像していたような子とは正反対の温和な少年だったし、元々は父親が帰ってくる間という約束で有給なのだから。

現状で、非常に合理的かつ、一番適している人材は自分。

そうまとまったらあとは征樹に話して、許可を(形式的に)取って、明日にでも荷物を持ってくればいい。

決定。

脳内では、すでに移動する荷物のリストアップに入っていた。

そこまで到達すればあとは簡単で、洗い物をして征樹の帰りを待つだけ。

誰かの帰りを待つ。

これが意外とドキドキする事に気づく。

静流自身、大学時代から一人暮らしで、誰かの帰りを待って過すという体験は久しくない。

あんまりにも所在なさ気で、うっかり風呂掃除をしてしまったくらいだ。

そこへ征樹の『ただいま。』の声が聞こえて、自分が思っていたよりも驚いてあがってしまい"おかえりなさい"の一言もちゃんと言えなかった。と、自分では思う。

自分以上に驚く征樹に背中を流そうかと聞く自分にも驚いたが、慌てて風呂場に向かう征樹に向かって微笑んでいる自分にもかなり驚いた。

意外と母性本能が強い方なのかもと改めて自覚したのだった。

ただ、静流自身は気づいてなかった事もある。

確かに静流は母性本能は強い方なのだろうが、征樹一人の帰りを待つのに、乙女の様に胸を高鳴らせるものなのだろうかという事に。

台詞少ないなぁ・・・バランスが悪いか。

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