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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第肆縁:出会いは化学反応のように・・・・・・?
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第ⅥxⅩ話:誰が為に賽は投げられる?

「本当に杏奈だ・・・最近、会ったってヤツから聞いて・・・?」


 杏奈にかける声を止めて、チラリと征樹を見る男。

私服姿でわからないが、確実に年上だろう。

と、相手が自分を観察してくる視線と全く同じ視線で征樹も見返す。

少し明るめの茶髪と高めの身長。

体格は全体はそんなに良くはないが、征樹より二回り大きい。


「新しいカレシ?」


 どう答えたらいいのか、困ったような視線で杏奈は征樹の様子を見る。


「征樹、この人はね・・・。」 「杏奈のモトカレってヤツ。しかし、懐かしいなぁ、キミ、アレでしょ?コイツ根暗だから大変でしょ?」


 杏奈の言葉を遮り、軽薄だが何処か高圧的に喋り出す男。


「別に。それはそれで面白い。」


 確かに振り回されて、大変でうんざりする事が多いが、今は悪くないと少しだけ思えるように征樹はなっていた。

だが、男にとってはその答えは満足するようなものでは無かったようだ。

一方、杏奈は征樹の反応に驚きつつも、どう対処したらいいのかわからずにいた。

ただ今回は逃げ出す事は出来ない。

出来るはずがない。

それをしたら、今度こそ本当に二度と征樹に合わせる顔が無くなる。


「へぇ、物好きなんだな。ま、俺も人の事言えないケド。」


 相変わらず征樹に対する高圧的な態度は変わらない。


「でも、残念だったなぁ。」 「?」


 正直な所、征樹はこの男に全く興味は無い。

高圧的な物言いもスルー出来たが、その口から一方的かつ勝手に語られるのはいい気はしなかった。

"自分アンナ自分アンナでしか語れない。"

何故だか、この時の征樹はそう思えた。

杏奈の口から語られる事、自分が見聞きした彼女。

それ以外の誰かの口から出るのなんて知った事じゃない、と。


「コイツと俺さぁ・・・。」 「寝たの!この人と!」


 それだけ知られたくなかった。


「・・・処女じゃないの、アタシ。」


 軽蔑されると思ったから。

はしたない女だと思われたくなった。

でも、もうこれで全部が終わり。

ただ杏奈は、どうしてもこの事だけは他人の口からではなく、自分で言う事にした。

征樹に嘘や隠し事だらけのまま、さよならをしたくない。


「だから?」


 今まで聞いた事がない征樹の冷たい声に身体が震える。


【拒絶】


恐怖が足元から這い上がる。

まるで底無し沼に足を踏み入れたような。

刹那、征樹が杏奈の手を掴む。

ビルの屋上での時よりももっと強く、痛いくらいに。


「杏奈、帰るぞ。」


  そのままぐぃっと引っ張られる。

力強い勢いに杏奈の身体が揺れ、すぐ傍に征樹の顔があった。


「オイ!」


 男を完全に無視して去ろうとする征樹の背に投げつけられる声。


「まだ何か用?」


 元々、征樹はこの男に何の興味もないのだ。

それよりも久し振りに、征樹は"本気で怒って"いた。

こんなに自覚出来る程、頭に血が昇ったのは何時以来だろう?と自問自答するくらいに。


「今のなんとも思わなかったのか?!」


「あ?別にアンタには関係ないだろう?」


 別に相手がどうとかこの際、征樹にはどうでもいい問題だった。

本当にどうでもいい。

目の前の人間が、傷つかなければそれで。


「杏奈は自分で言ったんだ、"アンタの口からじゃなく"自分で。それがどういう意味か、そのくらわかれ。」


 言いたくなかった、聞かせたくなかった。 

それは何故か?

知られたくなかった事を、杏奈は自分の口から言った。

目の前の杏奈だけが全て、今はそれでいいと征樹は思う。


「アンタは"過去"、でも僕は"今"・・・で、合ってるよな?」


 でも、ちょっぴり自信がないので、確認。

格好が悪いけれど、それは仕方ない。

葵 征樹という人間は、自分の価値というモノが全く見出せないのだから。

小さく頷く杏奈の涙を見ながら、征樹は再び男を見る。


「それでも、アンタがまだ杏奈を悲しませたいというなら、僕はどんな手段を使ってもオマエを潰ス。」


 抑えきれない衝動が今にも溢れそうになる。

征樹は、ふと思い出していた。

前にこんな風になったのは、"母が助からないだろう"と、そう確信して自分をひたすら責めた時だ。


「帰るよ、杏奈。"僕の家"に・・・。」


 今夜は絶対に杏奈から目を離さない。

誰にも興味を持とうとしなかった少年が、母を亡くして以来、初めて誰かに対してそう強く思った瞬間。

ヒロインに処女性が必須だと思ったヤツ、ソコ、正座。

今回の話もさらーっと流して書いているけれど、難しい話ですよね。

まぁ、全力で人を好きになれば、こういう事もあるワケで。

今回はそれとは微妙に違いますが。

結局、今を歩く先を考えられるか否かで・・・。

うん、正座解いてヨシっ(苦笑)


明日も更新。

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