第ⅩⅩⅩⅩⅩⅥ話:関わるというコトは踏み込むというコト。
静流が気づかなかった征樹の違和感。
ベッドに横たわった征樹自身も理解出来てなかった。
見慣れた天上を眺めながら、先程までの出来事を思い出す。
きっかけは別に大した事じゃなかった。
家が比較的に近い奏を先に送って、次に杏奈を送る最中。
「悪いな、後回しになって・・・。」
「全然ヘーキだよ、それに送ってもらうのに文句言ってたら、次から送って貰えなさそうだしぃ。」
あはは、と笑う杏奈。
確かにその発言は一理ある。
一理どころか、確実にそうしそうだ。
そんな事よりも、杏奈は征樹と二人で居られる時間が嬉しかった。
特段、何かあるわけでもない。
互いに言葉を発さぬまま、別れの言葉のみという時もある。
それでも嬉しかった。
同じ空気にいられるという事が。
以前と比べて確実に縮まった二人の距離が如実にあらわれているから。
「それにしたって、今日は少し遅くなり過ぎたな。」
当の征樹は、基本的には常識的な人間である。
年頃の女性が夜に出歩くなんて、と思う。
そろそろ補導されてもおかしくない時間に差し掛かる。
最近は、塾帰りと言えばそこまでされる事はないが。
「だから、征樹が送ってくれてるんでしょ?」
杏奈もまさか、自分が夜の町を征樹と二人で歩くなんて思っても・・・いや、想像はした事はあるが、夢想の類いに近い。
「まぁ、杏奈も一応女性だしな。」
「・・・一応でもそう見てくれるんだ。」
「何か言ったか?」
「ううん、なんでも。ま、ほら、今日は色々あったから仕方ないよ。」
色々とは、奏の事に他ならない。
征樹が奏をどう思っているかは、恐らく以前の静流をどう思っているかと大差ないだろう。
聞いたところで大した返事も返ってこない。
逆に奏が征樹をどう思っているかは、ちゃんとわかっている。
「はぁ・・・。」
「どうした?」
「ううん。」
杏奈は最近の自分がどうかしていると自覚している。
最初は少しでいいから、自分を見て欲しいだけだった。
それなのに今は・・・。
(もっと・・・か・・・。)
どうしてもそう思ってしまう。
止めようとしているのに・・・それでも征樹が気になる。
今、こうやって自分を見てくれるようになったからこそ、なおさら。
「あの、さ・・・。」
「ん?」
今まで他の女性に関しては征樹に聞いた事があるが、自分に関しては聞いた事はない。
「征樹はさ・・・。」
緊張感が一言ごとに増す気がする。
「征樹は・・・私の・・・。」
「あれ?キミ、アレだろ?"ミツの彼女"の。」
ふと、通行人からの声に杏奈の身体が震える。
「ほら、覚えてない?オレ、ミツの友達で・・・あっ。」
瞬間、杏奈は我を忘れて全力で走り出していた。
いや、逃げ出していた。
よく理解出来ていない征樹だけが残される。
「おっかしぃなぁ・・・。」
先程、声をかけてきた男もだ。
どう考えて、この発言で杏奈は脱兎の如く・・・そういう逃走(?)の仕方は自分の十八番だったはずなのに、と。
そんな下らない事を考えてながら整理。
そして、ぐっと例の声をかけてきた男の肩を掴み、征樹にしては社交的に(と本人は思っている)声をかける。
「さっきのはどういう事だ?」
それが、静流が部屋を漁っている間に征樹達に起きた出来事。
そして、現在のベッドの上に至る。
(アイツ、彼氏いたのか・・・。)
ぼぉっと天井を見つめながら考える。
まとまるわけのない考え。
解答が出るハズのない事なのだから、考えがまとまるわけがない。
一番簡単なのは、杏奈本人に直接聞く事。
答えは杏奈が持っているのだから。
ただ・・・。
「なんとなくイライラする・・・と、思う自分にイライラ?」
征樹自身が持て余し気味な感情のまま、夜は更けていく。
そして、翌日、学校に杏奈の姿はなかった。
その次の日も・・・。
ようやく杏奈話に突入かっ?!
というか、杏奈の人気低くないですか?
いや、確かに女性に嫌われるキャラギリギリのラインにいると思いますけれどね・・・。
ヒロイン(?)話は全員やらないと、ね?
というコトで、翌日も更新させていただきます。




