第ⅤxⅩ話:カレはサンカクのチュウシンテン?(挿入話)
いや、ほんっっっとうに申し訳ありません。
それもこれも皆、暑さと某氏のからのプレッシャーのせいと思ってくださしまし。
申し訳ありませんでした。
これからもご愛読お願い致します。
"何故?"
今日、一日はこの単語ばかりだった。
「どうぞ。」
「おじゃまします・・・。」
キョロキョロと周りを見渡しながら、ソロリと家の中に足を踏み入れる。
現在の奏の状況、只今、葵家内なぅ。
征樹は征樹で、厄介事未だ途中の気分なのだが、個人的に微かな尊敬の位置にいる奏の相談を受けるのは悪くないと思った。
誰かに恋をして、想いまで伝えるという行為がどういうモノなのかを知りたかったというのもある。
但し、相談は"自分一人で"とは全く考えていなかったが。
「気にしなくていいですよ、今、家は"一人"しか居ないから。」
どうもタメ口になってしまう征樹。
奏の華奢さと可憐さが、年上と感じさせないのだ。
「知ってる。」
「え?」
征樹が母を亡くし、父も留守がちで一人でいるなんて、奏にとっては既得情報だ。
寧ろ、常識。
「ただいま。」
そう形だけ述べて居間であろう扉を開く征樹の背中をぽーっと熱を帯びながら眺めていた。
ずっと気になっていた意中の男の子の自宅訪問。
そして何より"二人きり"。
舞い上がるなという方が奏には無理だった。
下手したら、鼻血だって出せそうな自信がある。
「おかえりなさい。」
この返事が返ってくるまでだったが。
(誰かいる?!)
彼は独り暮らし状態のはずなのに。
疑問に思う奏だったが、征樹は確かに最初に言っていた。
"一人しか居ない"と。
つまり、家の中には一人、"静流がいた"。
「あの静流さん、一つお願いがあって・・・。」
「あら、なぁに?」
努めて冷静な声で対応する静流だったが、征樹からのお願いである。
これが初体験だけに、少し舞い上がり気味だったのは言うまでもない。
ただでさえ、琴音の時も征樹が倒れた時も何も出来ず連敗続きなのだ。
心の中では小踊り状態、もう何でも叶えてアゲル♪と思わず言いそうになったくらい。
「学校の先輩の恋愛相談に乗って欲しいんです。」
(え?)
征樹が相談に乗ってくれるものだとばかり思っていた奏は当然驚いた。
というか、静流とは一体どんな人物なのだろう?
随分と親しげな感じがすると、未だ居間の扉の向こうで姿を現さない女性が気になる。
「男の意見だけじゃ、参考にならないと思うし・・・それに僕の場合は、そういう経験すらないんで。」
一度、恥を掻くような宣言をしたのだから、征樹としては同じ内容を二度言おうが構いやしなかった。
「いいわよ、征樹君の頼みだし。」
「ありがとう。さ、先輩入って。」
「え、あ、うん。」
ゴクリと喉を鳴らし、居間で待つ静流という人物の元へ・・・。
「ただいまー。うぃ~征樹~代わりに買い物してきてやったゾ~。この貸しは高いか・・・ら?」
持っていたスーパーの買い物袋を玄関に下ろし、一息ついた杏奈の視界に入った見知らぬ女性。
しかも、自分の学校と同じ制服。
女友達が自分しかいないハズの征樹が連れて来るような、親しい相手という条件に杏奈はピンと来るものがあった。
「ら、ラブレターの人・・・?」
「え?!」
目の前の女性から出た言葉にまた驚かされる奏。
しかも、よく見ると征樹の彼女(だと自分が思っていた女性)ではないか!
「ラブレターがどうしたのかしら?」
凍りつく二人の向こうの居間から、訝しげに静流が出て来る。
二人の固まった姿を見た静流は、その冷静かつ、回転の早い脳ミソであっという間に杏奈と同じ思考に達した。
だが、杏奈より確実に優秀な脳ミソは、更に先の答えを弾き出している。
それは"新たな敵"の出現。
そんな三者三様の中で全く空気を読めていなかったのは、当事者達の一番ド真ん中にいる征樹だけというのも滑稽である。
かくして、どこからどう見ても絶対に"コジれる"だろう葵家での長い夜の開幕だった。




