第Ⅳ話:自然な違和感のある笑みって?
静流が想像してたよりも部屋内は綺麗に整理がされていた。
どちらかというと使われていないという方が、表現としては正しい気もする。
(なにか・・・寒い家・・・。)
静流の観察力と直感はそう表した。
柔軟性のある思考能力と直感は、彼女が弁護士として戦う為の武器だった。
「紅茶でいいですよね?」
にっこりと微笑みかける黒髪の少年。
確か、年齢は14歳だったかだろうか。
同世代の子よりは少し小さめで華奢な印象を受ける。
なにより、本当にアノ所長と血が繋がっているのか信じられないくらいの暖かな優し気なイメージ。
「えぇ。」
飲み物を何するか静流に聞いた征樹は、平静そうに見えたが実は全くそうでもなく。
征樹は自分の脈が早くなっているのを自覚していた。
(仕方が無い。大丈夫、顔見なきゃ・・・あ、でも胸とか視界に入ってもヤバいな。)
とかテンパっているウチに落ち着いてくるのだから、自分は案外能天気だなぁとも再認識する。
結局は、紅茶を入れている時間がいい方向に働いたらしい。
「どうぞ。」
再び微笑みながら静流の前にお茶が出て来る。
征樹は、静流の目の席に座った。
一口飲んだ紅茶は、ストレートのように見えて、ほんのりと甘く喉を通っていく。
「あ、あの、父が言っていた件ですが、聞かなかった事・・・というか、無視して下さって結構ですから。」
「?」
自分から切り出そうとした事を、先に征樹に言われた静流は多少驚いたが、すぐさま疑問に変わった。
「何故、そんな事を言うの?」
きっと目の前の男の子なら、ちゃんと答えてくれると思った。
「どうせ、父が無理難題を言ったんでしょう?」
正解だ。
「あの人は自分さえ良ければいいんです。あ、大丈夫ですよ、僕は家事はそこそこ出来ますから。」
「それだけ?」
それ以外にもあるような気がして、静流はもう一度聞き返してみた。
「それだけ・・・と、言われても、貴女も嫌でしょう?そんな面倒くさい事。ちゃんと後で口裏を合わせますから。」
「口裏って、私これでも一応弁護士なんだけれど?」
ちょっぴりイジメてみたり。
「・・・すみません。でも、どうせ父は僕には興味ないから、たいした問題じゃないですよ。」
征樹は先程と全く同じ微笑を静流に返した。
全く同じ笑み。
同じ笑みで話す内容だっただろうか?と静流は思う。
そして、赤の他人の自分が触れてもいい線かどうかを考えた。
「深い意味はないですよ、事実ですから。あ、そうだ、夕食食べて行きませんか?断って手ぶらで帰ってもらうのもアレなんで。」
征樹は一応、冷蔵庫の中身で出来る献立を考え終えていた。
「用意してたんですよ。僕が家事が得意だっていう一端を見せちゃいますから。」
再びにっこりと笑った征樹に静流は頷いた。
少なくとも、もう少しだけこの少年の事を知りたいと、彼女の直感が告げたからだった。
やっぱり一人称交互の方が、書き方としては楽だという事実を再確認。




