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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第参縁:とりあえず顔を上げてみると・・・・・・?
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第ⅩⅩⅩⅨ話:無様でも退けない時は退けない。

 大人には大人の事情がある。

それは征樹もわかっている。

そこまで自分も子供ではない。

子供ではないと思うのだが、でも子供には子供の事情があるのだ。

退けない時は退けない。

押し黙ったままの琴音を前にして、今がその時なんだと征樹は思った。

相手にしてみれば、本当に失礼極まりないお節介なのも理解している。

かく言う正樹自身もそう思った事は何度もあったから。


「昨日の夜。お手伝いしている先で、酔った旦那さんに殴られた。」


「え?」


 顔と名前を覚えるのが苦手な征樹が、初めての客なのに何処かで見た顔などと思うはずがなかった。

当然、自分の生活圏内にいる人間に違いない。


「それに琴姉ぇの首にも腕にも痣があった。部屋には割れた陶器の欠片があった。」


 言ってて悲しくて胸が苦しくなって来る征樹。

一体、その感情が何処に根ざしたモノなのだろうかと一瞬考える。


「旦那さんが、琴姉ぇをあんな風に殴るのかと思ったら・・・。」


 "悔しい"のだろうか?

だが、征樹は顔を殴られたのに対し、琴音は見える箇所以外を殴られている。

つまり、それは"確信犯"という事なのだ。

非常に悪質な。


「征樹ちゃん?泣いてるの?」


 無様だった。

自分は何て無様なのだろう。

何と無力な子供なのだろう。

それだけが征樹の心を蝕み、腹の中で暴れている。


「私達ね、学生結婚だったの。」


 自分の感情が整理出来なくて、気分が悪くなっている征樹を琴音が優しく撫でる。

繋いでいない方の手も、征樹に差し出された。

自分は片方の手を差し出すのでさえ、こんなにも大変だったというのに。


「貧乏でも楽しくて幸せで・・・早く子供も欲しいねって、育てられるぐらいの暮らしをしようって・・・。」


 だから、余計に悔しい。

何が?と聞かれたらわからないが、征樹はそう思った。


「でもね、暮らしが楽になって色々と軌道に乗って・・・これからって時にわかったの・・・。」


 琴音は少し間を空けて・・・。


「私ね、子供が産めない身体なんですって。それからおかしくなっちゃったのかな。」


「違う。」


 それは間違っている。

征樹は真っ先に瀬戸の笑顔が浮かんだ。

比べるのはどうかと思うが、自分達が女性であると考えている彼女達は、当然、子供が産めない。

でも、幸せじゃないかと言えば話は別だ。


「だから暴力を振るっていいの?だからもう琴姉ぇが大事じゃないの?そんなの・・・間違ってるよ・・・。」


「そうね。だから、私も色々と頑張って・・・頑張ったんだけど・・・。」


 そして黙り込む琴音。

征樹は最初から、自分のこの行為が本当に琴音の為になるかわからなかった。

押し付けがましい自己満足なのかも知れない。

嫌われるのも怖いと思えるくらい。

しかし、少なくともこのままがいいとは思えない。


「・・・もうダメなのね、きっと・・・もう随分と前から・・・。」


 だから征樹は必死に吐き気を堪えて、琴音にかける言葉を紡ぐ。


「帰ろう?琴姉ぇの家じゃなくて・・・。」


 心臓の音がうるさい。


「僕の家に。そこに僕みたいな子供じゃなくて、ちゃんと琴姉ぇの力になってくれる人がいるから。」

何やら、うっかり鬱展開に入り込んでしまった・・・。

まぁ、鬱展開はここで終わりです、はい。


まず一つは、既婚女性の不妊割合は3割だそうです。

不妊は、女性だけでなく夫婦としての問題です。

どちらか一方が負うべき負担では決してありません。

(今回の琴音さんは不妊とは違いますが)


もう一つは、DVは日常に隠れている見つけにくい"犯罪"です。

それはとても根が深く悪質である事があります。

今回のように確信犯的なものもあります。

防ぐには、周囲の協力と対象者の早急な精神的安定が必要なのです。


あぁ、あと学生結婚が悪いとは一言も言ってないですからねー、私(苦笑)


何だ?このテーマ、私、どうしたんだ?

次はちょっぴりギャグ要素入れて、再び静流さんの登場です。

安心して読んでください。

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