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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第弐縁:灯台下を照らしてみたら・・・・・・?
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第ⅩⅩⅨ話:声に出して呼んでもらえるということ。

気づいたら、もう29話目とか・・・もっと落ち着いて書こうな、自分。

 心臓が破裂する・・・。

杏奈は思った。

そもそも何でこんな事に?

ただ単に征樹に嫌われたくないだけだったのに。

何故、今、自分は征樹と台所に立っているのだろう?


「人参、玉葱、ジャガイモ。肉はどれにするの?牛・豚・鶏と3種類あるみたいだけれど?」


 肉の好みがわからないので、種類を買い揃えておいた。

宗教上、この肉がダメとかは多分ないだろうが、なるべく征樹の普段食べているカレーの好みに近づけたかったから。

しかし、その配慮を主張することなく、征樹の質問は右から左へと・・・。


「杏奈?杏奈、聞いてる?」


「っ?!ひゃぅっ!」


 今一番聞いてはいけないフレーズを二連発。


「何さ?夕飯を作りに来てくれたんでしょ?」


 征樹は手を杏奈の前で振っている。



「そりゃ、そうなんだけど・・・さ。」


「ん?」


 自分は汚い・・・。


「ほら、ノリとはいえ、首絞めちゃったじゃん?だから怒ってると思ってさ。葵、帰っちゃったから。」


 嫌われると思ったから、だから。

心の中で続ける。


「それでか・・・。」


 苦笑しながら征樹は、とりあえずジャガイモの皮を剥き始める。

少し呆れられているようにも杏奈には見えたが、重要なことなのだ。


(他にいないんだもん・・・。)


 そう思うと恐怖が募る。


「意外と、杏奈も心配性だな。」


 声に身体が熱くなる。


「そ、それよ、それ!」


「どれ?牛?豚?鶏?」


「ち、ちがっ!その呼び方は何!というか、学校と雰囲気全然違うじゃん!」


 呼び方は革命的現象だが、言葉遣いや雰囲気が学校にいる時と少し違う。

学校にいる時は、もっと人を寄せ付けないというか・・・。


「呼び方?だって幼馴染なんだろう?僕達は。」


「あぅ・・・。」


 意地が悪いのは全然変わらなかった。


「確かに学校と違うかな・・・でも、今日は自分でも普段より更に違う感じかな。」


「静流さんが来たから・・・。」


 あの女が征樹の心に踏み込んだから。

手が震えた。


「きっかけはそうかも知れない。でも、さ、少し見てみようかなって・・・考えてみようかなって・・・。」


「見る?考える?」


「例えば、杏奈はなんで来てくれたのか、とか。」


「だから、それは・・・。」


 呼び捨てが一向に慣れない。


「そうじゃなくてさ、来てくれた事を。更に遡れば、何で声をかけてくれたのかなって・・・そういう事を前より考えたり、見たりしてもいいんじゃないかなって・・・ちょっぴりだけね。」


 今日、確かに学校で月日の話はしたけれど・・・。


「つまり、省略すると。幼馴染と知り合った年月なら"杏奈"って呼ぶ権利はあるんじゃないのかなぁ・・・なんて、思ったりなんだり・・・。」


「ナニソレ!・・・むぅ・・・だ、だったら、だったら、アタシも好きに呼んでもいいってなるじゃない!」


 今日の(すり替わった)目的の一つ。

それが出来たら、もっと近づけるんじゃないかと考えてた。


「ぉ。」


 ジャガイモの次の人参を切り始めた手を止めて、ぽんっと叩く征樹。


「成程。人間関係は相互だから、相手側から考えたらそういう事にもなるね。」


 何処まで人付き合いが希薄なんだろう・・・。

征樹を理解してたつもりでも少し悲しくなる。

反面、杏奈は自分が同級生・同世代では、きっと第一号なんだという事実が嬉しい。


「むぅ・・・まぁ、いいかな。呼び方によっては却下するけど。」


 本気だ。


「じゃ・・・・・・ま・・・征樹・・・。」


 本人が目の前にいるといないとでは、段違いだ。

しかも、呼ばれる当人は、ずっと自分だけを見ている。

今、征樹を独占しているのは、紛れも無く自分なのだ。

顔に火がつくというのは、きっと本当に違いない。

誰かがきっと体験したんだ。とワケにわからない思考に到着。


「うん、ありがとう。」


 征樹が笑ってくれた。

しかも、自分に向かって。

自分だけに・・・受け入れられた安心感が心地良く心に伝わる。

元々、征樹は誰かを否定する事だけは絶対しない人間だと確信していたから、受け入れられるという行為もらった杏奈は、一歩前進出来た気がした。


「じゃ、さっさとカレーを作ろう。・・・ん?そういえば、何故に僕の好物がカレーだと?」


 唐突に指摘された。

何と答えたらいいのか杏奈は・・・迷う。


「・・・?・・・うん。」


 征樹は一言。

そしてカレーを作る作業を開始する。


「何を一人で納得してんのさ、何を考えた葵 征樹。」


「別に。」


(もう何時もの征樹に戻っちゃった・・・。)


 一歩前進と考えていいのだろうか?

目的は果たしたし、成功していると思ったのだけれど。


(アタシの欲張り。)


 征樹が見てくれれば、それで自分は良かった。

まだ自分が見てもらえる存在なんだと認識出来れば。

そのクセ、静流に対抗意識を燃やしたりした。

本当に自分勝手だと杏奈は思った。


(ヤな女・・・。)


 それから二人で黙々と作業をした。

したのだが、狭い台所で二人。

"二人で初めての共同作業"という言葉が頭に浮かんでからは、征樹の横顔をマトモに見る事さえ出来なかった。

とりあえず、この辺りでひとまず一日5話以上の連続更新は終わりですかね。

パソコン自体を借りてるもので(苦笑)

あ、完結って意味じゃないですよ?まだ書きますw

それと【花束】は宣言通りの更新です。

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