表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第拾縁:ほら、そこに愛はある。
191/214

第C&Ⅷ十Ⅸ話:Late-blossomed

 まとめてみる事にしよう。

いや、整理して考えてみよう。

初恋にも近い、まるで運命の出会い。

自分の人生を変えた恩人のような人間に子供がいた。

恩人はとうに亡くなり、その恩はついぞ返せずじまい。

しかし、その子供は恩人の面影を宿した愛らしい少年に育ち、ようやく恩を返せそうな機会が巡ってきた。

自分と恩人とは別の一個の人間と見ろ、その少年は自分にそう言う。


そこだ。


では、その少年は自分にとって何になるのか?

正直な話、この葵 征樹という人間は恩人の息子という点を除いてみても、充分に愛らしい顔立ち(自分から見れば)なのだ。

その全部の関連付けを切り離して考えるとなると・・・。

なるべくそのように考えたとしても、初恋の人に似た容姿端麗、品行方正な少年。

トドメは男性。

男のような格好をしなくてもよい、初恋の人とは性別の違う男性。

かつてキルシェもそう述べたように・・・。


「あの、鈴村さん?」


 この整理された理論(恐らく暴論)を瞬時に導いたかは定かではなったが、その結果、或いは現実は背中から倒れ込んだ征樹に馬乗りになっている。

その手は征樹の頬に添えられたままでかたまる二人。


「・・・だとしたら。」


「?」


 征樹の頬を擦りながら呟く。


「だとしたら、私は貴方の"何になれる"でしょうか?」


 征樹の母、清音という存在を外したら、一体?

征樹の周囲にいる女性陣と違って、どんな居場所、立ち位置があるというのだろう?


「・・・・・・変なの。」


 一瞬だけ鈴村の言葉にきょとんとした征樹は、自分の頬に触れている鈴村の手を取る。

手のひらとひらを合わせ、指と指を絡ませ・・・。


「鈴村さんは鈴村さんだよ?」


 その言葉に今度は鈴村が意表をつかれたような顔をする。

葵 征樹は葵 征樹。

ならば鈴村 蘭も鈴村 蘭。

人間関係の出だしなど何時も誰もがそのようなものではないか?

そこから先は互い次第。

征樹にしてみれば、そう認識してくれる人を自分がずっと求めたいたから。


「あぁ・・・そうですね・・・確かに変でしたね。」


 クスリと征樹に微笑みを返し、ふと握られた手を見やる。

しっかりと結ばれた手。

互いに差し出しあって、そのうえ互いに握り返さなければこのように結ばれない手。

まるで人と人の絆のように。


「では、私は母君に負けないくらい貴方を大切に致しましょう。」


 まるでプロポーズか何かと勘違いしそうな男前の台詞だったが、それもセーラー服でなければの話だ。

そんな事を意にも介さずに、鈴村は自分の手が握られている征樹の手の甲に口づけをする。

今度は誓いのキスのように。

だが、これもやはり服装がアレでなければ・・・と。


「あ、別に慌てて隠れる必要なかったですね。」


「?」


「だって僕達、ここの制服着てるし、何とでも誤魔化せたんじゃ・・・それかさっさと謝って逃げちゃうとか。」


 制服に着目して何気なく思いついた事を征樹は言ったのだが・・・。


「そ、それは征樹様だけですっ!わ、私なんかど、どうせもう女子高生なんて無理です!通らないですっ!」


 それは致命的かつ精神的な大ダメージを鈴村相手に叩き出していた。


「そうなの?」


 以前、杏奈達が着ていたのを思い出してはみたが、琴音は(成育した分)ともかく、静流も意外と似合っていたように思えた。

それは鈴村も同じように思える。


「そうなんですっ。」


「似合っているのと、そう見えるってのはまた別なのか・・・。」


 それが違和感に繋がるという事に今更気づきつつ。


「もうっ、征樹様いぢわるですっ。」


「・・・なんか、鈴村さん可愛い・・・。」


「知りません!」


 甚だ不謹慎というか、デリカシーに欠けるというか、結局相も変わらず征樹は征樹だったのだというお話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ