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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第弐縁:灯台下を照らしてみたら・・・・・・?
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第ⅩⅨ話:隣人は一人だけとは限らない。

あれ?

・・・昨日よりお気に入り数が増えている気が・・・(汗)

「はぁ・・・。」


 休み時間の溜め息。

征樹は学校に来たはいいが、授業に身が全く入らなかった。


(義務教育だからこそ、出来る事だよね。)


 義務教育だから良くて、そうじゃなければダメという理由も特にないのだが。

最優先で考えていたのは、当然、静流の事である。

今日自分が帰宅した時、静流は家にまだいるのだろうか?

居なくなったらそれはそれで清々するカモ。と、一瞬考えた自分を冷たいと自覚するのは、何時もの事なのでその点はどうでもいいのだが。

だが、心の片隅でちょっぴり寂しいカモと考えている自分も嫌だった。


(今までずっと独りだっただろうに。)


 何かもう、彼女に関して悩む事それ自体がもうダメダメというか面倒になっていた。


「慣れかなァ・・・。」


「何が慣れなんよ?アレ?独り暮らし?まぁ、アタシには想像つかないケドね。」


 独り言に対して返事がある。

が、征樹は華麗にスルーした。

特にその返事に興味がないからだ。


「お~い、またそうやって面倒くさがってスルーすんな~。」


 また反応。

わかっている、隣の席の女子が自分に指をさしているのが見えるから。


「確かに面倒だと思ってるけど、指をさすのはヤメて。」


 ようやく返ってきた隣人の返答がコレだった瞬間、少女はがっくりと項垂れた。

遅れて彼女の日に透けると濃紺に見える黒髪が揺れる。

少しシャギィの入ったショートの髪は、キューティクルたっぷりなのだが、彼女の敗北感もたっぷりだった。


「アタシ、何でキミの友人なのかわかんなくなるよ、全く・・・。もっと関われっての。」


 ゆっくりと目を細めて黄昏れる少女。

友人その1、細井ほそい 杏奈あんなは涙が出そうだった。


「友人だったんだ・・・。」


 征樹の更なる追い討ち。


「二年以上クラスメートでソレ?!その仕打ち?!」


 よく見ると濃紺に見える丸い瞳を見開き征樹の机をバンバンと叩きながら、かぶりを振ると杏奈の胸も合わせて揺れる。


「細井さんが一度見たら忘れられない程、可愛くてスタイルも抜群なのはこの二年間で十分理解したから、もう少し静かにして欲しい。すんごい、今、目立ってる。」


 征樹の言う通り、杏奈が周りを見渡すとクラスメート達の注目されまくっていた。

女子の中からは"痴話喧嘩"という単語と視線が来ているし、男子からは先程から揺れ続けている胸に関心が注がれている。


「なっ?!」


 征樹に手放しで外見を褒められたコトと周りの視線のW効果で杏奈は赤面する。


「な、なんか文句あるかーっ!」


 周りに向かって噛み付く杏奈を反抗期か?と思いながら、再び興味の外に置く。

別段、征樹は杏奈が嫌いなワケではない。

余り周囲の人間に興味を持たないタイプと自覚している征樹の中では、そこそこには彼女の評価は高い。

社交的で明るく、行動派。

どれをとっても征樹にはないモノを持っている。

外見も自分で言った通りだ。

嘘をついたつもりもない。

日本人形的な肌と猫のような瞳の形に外国人型の体型を彼女は持っている。


「はぁ・・・アホらし。」


 それでも今の征樹の精神状態では、そう切り捨ててしまう。

いや、何時もの事だ。


「誰のせいだ!誰のっ!他人事のようにすなっ!」


 振り返った杏奈が、猫目を開いて赤面しながら征樹の首を絞めてくる。


「自分で騒ぎ出したんじゃっ、苦しっ・・・痛っ・・・。」


 指が首に喰い込んで、苦しいというより痛い・・・爪も当たってる。


「痛っ・・・。」


 ふと、征樹は杏奈の腕を力強く掴んだ。

杏奈の腕を力づくで首から外し、今度は彼女の手を握ってまじまじと観察を始める。


「何?急にそんなしげしげと・・・。」


杏奈の指と爪。

じんじんとする首の痛み。


(まさか・・・ね。)


 痛みの中で、ふと過ぎったのは今朝の在家だった。

それと彼女が大量に常備していた絆創膏。


「ね、ねぇ?葵?手、放してくんない・・・かな?」


 杏奈の片手を両手で握った状態のまま止まっていた征樹は、彼女の手を言われたままに放すと席を立ち上がる。

朝から無駄に考え過ぎてモヤモヤが限界に、つまりオーバーヒートに達したのが征樹にはわかった。


「ダメだ・・・限界。帰る。」


 席を立ち上がり呟くと、すぐさま荷物をまとめる。


「あ・・・怒った?ゴメン、首絞めたのはやり過ぎた。」


 征樹の機嫌を損ね、その原因が自分のせいだと思った杏奈は顔色を変えて謝る。

が、もはやその言葉は既に征樹の耳には届いていない。

彼は本当は他人の事を集中的に考えるのが苦手なのだ。

独りに慣れ過ぎて。

それと・・・関心を持たない方がとても楽だという事を知っているから。

第一、自分を大切に出来ない人間が、他人を大切に出来るバズがない。

それでも、そう思っている征樹に常に声をかけて、ちょっかい出してきたのは杏奈だけだった。

二年以上ずっと・・・。

意識を杏奈に戻す。


「そういえば・・・。」


 荷物をまとめ終えた征樹は、ふと杏奈を見る。


「細井さん、昔は髪長かったよね。今のも似合ってるけど、髪質綺麗だから長い方も似合ってて良かったな。」


 さらさらと流れる髪を掻きあげながら、初めて自分に声をかけてくれた時の事を思い出した。


「え?」


 それだけ言うと、昨日散々やった"通称:脱兎的逃走"を強行。


「あっ・・・もぅ・・・バカ。」


 泣きそうな表情になった杏奈を見る事もなく、征樹は教室を出たのだった。

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