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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第拾縁:ほら、そこに愛はある。
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第C&Ⅷx十話:またねのキセツ。

「今日はこめんね。」


「なにが?」


 突然現れた奏は、征樹と一緒に夕飯をとった。

無論、彼女の手作りだ。

今は奏を途中まで送っているところで・・・彼女が呟いた。


「急に歌南に合わせたり、お邪魔しちゃったりと・・・。」


 しゅんと頭を垂れる。


「別に問題はないよ。」


 征樹は自分が一番気になっていた、今日のデートは奏的にあれでよかったのだろうかという点が、奏自身の中で問題になっていないのならばと、そう発言する。


「どうしても・・・向こうに行く前に会わせておきたくて・・・あの子の為にも。」


 以前、歌南の話を奏が征樹にした時、伝えようとして伝えられなかった事がこれだった。


「"帰って来てから"でも良かったけれど。」


 この世に必ずというモノはないかも知れない。

それでも征樹はそう信じる事にした。

信じて言わなければと。


「そう、だね。」


「これでも昔の僕なら、こんな事を言わなかったかも知れない。」


 言わなかったというよりは、言えなかっただろう。


「征樹くんは・・・歌南と会えて良かった?」


 もしかしたら、もう帰って来られないかも知れない。

その時、征樹はどんなに傷つくだろう。

奏はそう考えもした。

しかし、奏は歌南の姉として・・・。

どちらが大事という事はない。

当然、どちらも大切だ。


「会えて・・・。」


 少し考えて。


「うん、良かった。次に会う"約束"も出来たし。」


 正直、昔の事はあまり覚えていなかったけれども、これから先の事はそれとは別だ。

果たされない約束かも知れない、しかし少なくとも果たそうと今を生きてゆく事は出来る。

約束には、そういう面もあるのだと征樹は感じていた。


「・・・じゃあ・・・・・・私とは?」


「勿論。」


 これには考えるまでもなく、即答した。


「そう・・・ね、私がいなくなったらどうする?」


「どうって?」


 いつにも増して質問も口数も多い奏。

その横顔を見るととても儚げに思える。


「何かあった?」


 たとえば・・・歌南について行くとか。


「ううん。ちょっと進路で・・・。ほら、全寮制の学校とか、行ってみようかなって。」


 想像していたよりは深刻ではない征樹は安堵するが、彼女の横顔を見る限り、彼女にとっては深刻なのだろう。


「・・・ずっと会えなくなるわけじゃないから。」


 安堵しているという自分に、征樹は心の中で一人苦笑する。

それと、彼女も自分と同じような事を考えていたという事実にも。


「これから先、きっと色んな事があって、色んな道があって・・・そういう事はいくらでもあるから・・・でも、ずっと会えないわけじゃないなら、それでいいと思う。」


 生きてさえすれば。


「だから約束ってするんじゃないかな?」


 また会いたいから、もう会えなくなるのは嫌だから。

征樹にとって約束とは、"死なない限り"永続的に有効なものというのが、定義の一部に組み込まれてしまっているようだった。


「なら、私とも約束しよう?それとも私なんかとは・・・嫌?」


 自分で約束をしようと言ってみてから、嫌かと聞くところが奏らしい。


「かまわないけど・・・一体、何を約束すれば・・・?」


 奏が全寮制の学校に行けたとしても、それは半年以上も先の話だ。

確定してもいないし、今から約束するのは早過ぎる気もする。


「あ・・・そう、だね。何言ってるだろ私。あはは。」


 自分の抜けたトコロを指摘され、赤面する奏。

今までが散々シリアスだったが為に余計に恥ずかしい。

まさに穴があったら入りたいとはこの事だ。

征樹も征樹で、未だ女心の入口も理解出来ずといったところでもある。


「そうだなぁ・・・じゃあ、"またね"とか?」


 そう言って、征樹は自分の小指を奏にそっとさし出す。

多少、幼稚な気もするが、やはり約束の定番といったらコレだろう。

そこは征樹も譲れない。


「うん。じゃあ、"またね"。」


 そう言って、奏も自分の小指をそっと征樹にさし出し、そして二人は約束の指切りをした。

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