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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第玖縁:微笑みある方へ向かってみたら・・・・・・?
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第C&Ⅶ十Ⅲ話:何事も順序正しく?

「でっ、でぇと?!征樹様とですか?!」


 "でぇと"とは、はてさて一体なんだっただろう?

携帯を耳にあてたまま、必死に脳内検索をかける鈴村。

そして、その横では騒音公害にキルシェが眉を顰めている。


『デートというか、日頃の感謝というか・・・鈴村さんには迷惑かけてるし・・・。』


 受話部分の向こう側から聞こえる征樹の声はこうだった。


「いえいえ。それは私が好きでやっているのですから、はい、はい、では、また後日。はい!」


 ふぅ・・・と電話を切り、恍惚の表情の鈴村。


(ここまで来ると病気だな。いや、中毒か?)


 征樹の言動で一喜一憂する姿は、恋する乙女のそれなのだが、どこかしらそれを越えた狂気的なものというか、妄信的なものがあるように感じられ、"恋"という文字より"変"という文字の方が似合う。


「幸せそうだな、オマエ。」


 いまのところ、それが唯一の救いだ。

それと、征樹が被害届を出さない事も。

時間の問題という単語が浮かびはしたが。


「あぁ・・・まさか、こんな日が来るなんて・・・。」


 鈴村の姿は、まるでプロポーズされたかのような、まさにソレだった。


「デートでそこまで幸せを感じられるなら、オマエ、生きているのは楽しいだろうな。」


 もはや呆れるという反応は既に通り越していた。


「あぁ、勿論!なんたって征樹様とデートだぞ!」


 どうやら、なんとかデートという単語の脳内検索に成功したようだ。


「オマエがどう思おうが勝手だが、変な気を起すなよ?」


 同僚が警察の世話になるような事があっては、キルシェは目もあてられない。


「何だ、その言い方は!」


 キルシェのあまりの自分に対する扱いに反論の声を上げるも、今は上機嫌MAXなせいか、全体的に締りが無い。

総じて説得力に欠ける。


「いいか、征樹の事だ。大方、"日頃の感謝を込めて"とでも言ったのだろう?優しいからな、アレは。」


「な、何故それを・・・。」


 キルシェの言葉が、一字一句征樹の述べた言葉と一致している事に鈴村は驚かざるを得なかった。

しかし、理由など冷静に考えれば解る事。

何時もの冷静な鈴村であれば、それに気づく事が出来ただろう。

平常ではないという事を、嫌という程理解させられたキルシェは、ここでようやく溜め息をつく。


「そんなのは簡単だ。」


 キルシェは懐から携帯を取り出し、ぴぴっと何やら操作を始して、画面を鈴村に見せた。


「オマエより"先に"征樹から電話をもらった。」


 鈴村に見せたのは、征樹の携帯番号が表示されているアドレス画面だ。

ちなみに試しに"先に"の部分を強調してみた。


「な・・・な・・・。」


「それは・・・私が誘われたという件に関してか?それとも先に連絡が来た件に関してか?」


 相当のショックだったらしく、言葉にならない為、わざわざ聞き返す必要性が出た。

全く、これだから・・・と、自分がからかったくせに、それを棚に上げてヤレヤレと心の中で更なる溜め息。


「まぁ、いい。日頃の感謝を込めて誘われたというコトだ。そしてオマエより先に連絡が来たのは・・・。」


「来たのは・・・?」


 一番大事な部分での長い溜めに、鈴村は我慢出来ずに答えを急かす。


「簡単だ。私が"オマエより先に出会っている"からだ。」


 単なる出会った順。

そこに全く以って深い意味などなく、単純過ぎる程明快な理由であるとキルシェは結論づけた。

無論、それは推測の領域を出ないものだが、非常に征樹らしいとも言える。

女心が解っていないと言ってしまえば、それまでだが・・・。

第一、一番最初に日頃の感謝を込めてと断っている分、誠実ではないか?とも。

大ショックを受けている鈴村には残念だったとしか言いようがない。

しかし、事実には違いない。


「あぁ、ちなみにだが、オマエより"ニアの方が先"だからな。」


 それがトドメ。

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