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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第玖縁:微笑みある方へ向かってみたら・・・・・・?
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第C&Ⅵ十Ⅱ話:信頼が伝わる条件。

 今まで二人でこの家で暮らしてきて、ドキドキする事は何度もあった。

そして気まずいと思う事も。

現在は後者である。

先程まで皆がいたのだから、尚更だった。


(制服か・・・。)


 静流は、自分が今、着ている物に視線を落とす。

征樹はあれから無言のまま居間のソファーに座っていた。

その姿を見て、そしてまた自分の制服を見る。


「やっぱり制服を着られて良かったかも知れないわ。」


「え?」


 自分の方が年上。

制服を見て(ある意味現実を見て)静流は意を決して自分から声をかけ、征樹の横に腰掛ける。


「こうしていると、征樹くんと同級生気分を味わえるから。なぁんて、ちょっと無理があるかしらね。」


「え、あ、いや・・・。」


 確かに年齢的にはアレかも知れないが、特に似合っていないという程でもないと征樹は思うのだが、それにはあと少しのところで声にならない。


「でも、私も一緒の学生生活を送ってみたかったな。杏奈ちゃんや奏ちゃんみたいに。」


 そうしたら、もっと容易に近い距離へと飛び込んで行けたかも。

少なくとも、好意というものを今より出せただろう。

大人になると失敗の恐怖が増すのだ。

そして、立ち直るにも時間がかかる。

故に・・・。


「羨ましいな・・・。」


 要約して帰結するとそうなる。

或いは、嫉妬とも言う。


「・・・ごめんなさい。」


 長々と皆が帰ってからずっと何を言おうと考えいた征樹だったが、結局、思いついた第一声はコレだった。


「?どうして?」


 征樹の言葉に静流は首を傾げる。それが何を指しているか見当がつかなかったからだ。


「最後は僕が決める事だけど、静流さんに相談・・・最低でも報告するべきだったんだって・・・。」


 自分が一人で生活をしていた頃と、これじゃあ何も変わらない。


「琴音さんと瀬戸さんが言うまで、僕は何も気づかなかった。」


 どちらかというと気づかなかったという事実のダメージの方が大きい。


「僕の今の保護者は静流さんなのに・・・。」


 出だしは自分が頼んだ事ではなかった。

しかし、これではあんまりだ・・・と。


「それは、私を頼りないから・・・。」


 対して静流は、自分の信用度の低さが原因だと指摘する。


「違う・・・そうじゃなくて・・・。」


 征樹にとってはこういった感情を吐露する事は、以前の生活にはなかった事なのは言うまでもない。

第一相手がいない。

瀬戸の場合は、なるべく対等に近く扱ってくれたからだ。

無論、それも征樹は感謝している。


「・・・いてくれるんだなって・・・静流さん・・・うぅん、静流さんだけじゃなくて・・・僕の周りには。一人じゃない、話を聞いてくれる、助けてくれる。楽しい事も、辛い事も。」


 それを蔑ろにしようとした。

静流はこんなにも自分を心配して、文字通り一緒にいてくれるのに・・・それを征樹は詫びた。


「静流さん?」


 隣合った肩と肩が触れ合う。じんわりと伝わる互いの体温。


「一人じゃないって、いいわね。」


 征樹の詫びに大して、応えるわけでなく、肯定を以ってでも否定を以ってでもない。

答えの全ては、温もりのみ・・・。


「うん・・・。」


 征樹は静流の行動を受け入れる。


「何か・・・変な感じだ。静流さん、制服だし。」


 見慣れない制服姿の静流に、征樹はふと学生時代の彼女はどんなだっただろうと考える。


「あ、あんまりじろじろ見ないでね。」


 折角、いい雰囲気だったのに、これでは台無しだ。


「静流さんと一緒の学生生活かぁ・・・ちょっと興味ある・・・かな。」


 実際のところ、静流の高校時代は勉学で埋め尽くされていて、面白味のカケラもないものだった。

前回の海水浴や旅行などした事もない。

あるとしたら、勉強合宿とボランティア活動くらいのもの。


「今年の夏の思い出の方が断然素敵よ。」


 そう言って静流は温もりを求めて、より一層接地面積を広げるのだった。

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