第ⅩⅥ話:二人で迎える朝には。
「ん。」
息苦しさで目を覚ました征樹の視界は、肌色一色。
「▲×○■?!」
息苦しいのもそのハズ、彼の唇は肌色の谷間に埋もれていた。
慌てて動こうにも肩はきつく抱かれ、足は長くてスラっとした別の脚で絡め取られていた。
更に悪い事に、お年頃の征樹君には朝の生理現象状態。
こればかりはどうにも回避できない。
「ぶはっ。」
何とか呼吸を確保して、さらなる段階の脱出を試みようとしてもがいてみるが、はちきれんばかりの胸は今にもジャージからこぼれて、その頂が・・・。
しかも、その肌色が何処まで行っても肌色な所を見ると、ノーブラ確定。
「静流さん!苦しい!起きてっ!」
もうこうなったら静流を起こして離脱するしかない。
「ねぇ、静流さんってば~。」
段々、嬉しいやら泣きたいやら恥ずかしいやら。
しかも、下半身のとある部分が静流のフトモモに触れて、擦れる度にジンジンとした刺激を征樹に伝える。
(ムリ・・・。)
脳内では既にメーデーサインがけたたましく鳴り響いている。
「だぁっ!静流!起きろ!出ちゃうっ!!」
半ば限界に達した悲痛な叫び声を上げた瞬間、静流の身体を締め付ける力が少し緩んだ。
"脱皮人間ここに現る!"
そんなビックリ人間ショーのように抜け出し、ベットから転がり落ちる。
股間を隠すのは、相変わらずのお約束で。
「あ、危なかった・・・。」
肩で息を整えながら、征樹はうっすらと瞳を開けた静流を覗き込む。
「征樹・・・?」
静流は壁際に張り付いた征樹をぼんやりと見る。
何故あんな所にいるのだろう?
私の腕の中ではなくて。
自分の腕を見つめ、たっぷり数十秒思考して・・・。
呼び捨てで名前を呼んだ少年が目覚めて、自分も目覚めて、うん、これは現実だ。
そういう領域に到達した。
「お、おはよう。」
自分の痴態に赤面する静流。
「お、おはよござい・・・ます。」
同じく自分の痴態に赤面する征樹。
片や、思春期の生理現象を刺激されまくって暴発寸前。
片や、年若い少年にすり寄って乱れた寝姿。
どちらが悪いというと問題があるが、少々静流の方が大人として酷い。
「と、とりあえず、着替えてきますっっ。」
再び脱兎の如く。
昨日、何度もやったアクションなので、自分の情けなさはもはや棚上げっ放しにしておくことにした征樹であった。
その後ろ姿を見ていた静流は、昨日の避けられてるのでは?という考えは何処かに飛んでいってしまい、普通に可愛いなどと思ってしまう。
(それにしても・・・。)
自分の唇を指で触れながら、昨夜の寝る前の事を回想する。
「結局・・・朝方までしちゃった・・・。」