第C&Ⅴ十Ⅶ話:トン・トン・トン・ズコっ・・・OK?
(期待していたワケじゃないけれど・・・予想は出来た・・・かな。)
トン・ズコ。
でもなく、
トン・トン・ズコ。
でもない、
どちらかといえば、
トン・トン・トン・ズコ。
が、リズム的には丁度いい。
征樹だって別に"オチ"だとも思っていなかったし、彼女をオチ要員とも思ってなどいない。
しかし、何度も言うようだが、予想はしていたのである。
もしかして・・・と。
「あ~・・・。」
何と声をかけたらいいのか、途方に暮れる。
いや、それよりも声をかけていいのだろうかと。
ここはあえて声をかけずに、いっそ見なかったという事に・・・。
そう考えを巡らすも、いい案など出てくるはずもなかった。
だが、居間とキッチンを結ぶ扉の壁から、ひょっこりと顔だけを出して器用にこちらを覗いている人物。
その小動物を思わせるような怯えっぷりを見てしまっては、色々と考えざるを得なかった。
(弱ったな・・・。)
征樹の視界の片隅で、心なしか震えている・・・静流。
考えつく原因は、恐らく壁に隠れている身体側の方にあるのは間違いない。
これは確定。
「静流さんも、こっちにいらっしゃいな~。」
「で、で、でも・・・。」
琴音の招きにも渋る静流の姿は、あまりにも哀れだった。
「大丈夫。皆、同じなんだから~。」
赤信号、皆で渡れば恐くない(?)の法則。
(やっぱり・・・。)
やっぱりそうなんだ、決定なんだと自分の予想の答え合わせに一人納得する征樹。
「さぁさぁ、征樹ちゃんだって見たがってるわよ~。」 「僕?!」
無論、征樹は一言だってそんな事を述べてはいないのだが、このフレーズには静流も弱い。
弱いの静流だけではなく、この場にいる女性全員だったが。
「僕、いつから制服フェチになったんだろう・・・。」
勝手に付与されそうになる称号に関して、一人呟くのを華麗にスルーされた中、渋々におずおずを足した状態で、ゆっくりと静流の全身が現れる。
黒タイツに膝丈より長いスカート・・・およそ奏と同じ制服姿・・・に、眼鏡。
を、除けば・・・。
「なんか、クラス委員長みたい・・・。」
「えっ?!征樹くん、どうしてそれをっっ?!」
どうやら外見のイメージのまんまだったらしい。
それも勿論、納得。
「ほらぁ、可愛い♪ね~、征樹ちゃん?」
「そ、そんな琴音さん!」
約束した通り、杏奈と奏の為に保管してあった制服を引っ張り出してきたのはいい。
二人とも喜んでいるし、想像通りに似合っている。
それも、まぁ、いいだろう。
しかし、こうなるとは予想はしていなかった。
まさか、そこまでの無茶振りを琴音がしてくるとは思わなかった。
考えが甘かった、全く以って甘かったのだ!
(うぅ~っ、征樹くんも呆れてる~っ!!)
じょしこぉーせーなどという年代から、一体何年経ったと思っているのだ!横暴だ!
静流の胸中は穏やかではない。
寧ろ、大雨だった。
静流の学生時代は、今の杏奈や奏と比べ、そんなに楽しいものではなかった。
どちらかというと、地味で・・・。
この制服を着ているとそれを思い出す。
「ほら、征樹ちゃん感想は~?」
琴音に促されて、ようやくちゃんとした感想らしい感想を言わねばならぬという事に気づく。
先程と同じ感想以外のモノを言わなければ、琴音の合格点は出ないだろう。
「えと・・・可愛いですよ、学生時代風の静流さん。」
結局、似たり寄ったりな感想しか言えなかった。
気の利いたセリフがさらりと出て来る征樹というのも、想像出来ない。
ある意味でこれが一番征樹らしい。
「え、あ、う・・・うん・・・ありがと。」
逆に静流の方が返す言葉に困ってしまう始末。
「うふふ~。今回はそれが正解♪」