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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第玖縁:微笑みある方へ向かってみたら・・・・・・?
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第C&Ⅴ十Ⅴ話:イベント・・・発生。

 元来、征樹は口数の多い方ではない。

今の生活は別にしたとしても、家の中に誰も話し相手がいなければ喋る機会も減るというものだ。

第一、家の外でも瀬戸とその仕事場にいる人間達くらいしか話相手はいなかった。

と、何故、長々とこんな現実逃避気味な説明をしているかというと、今まさに征樹が現実逃避しているところだからだ。

絶句、もしくは呆気と言ってもいい。

そんな状況に追い込まれていた。



「あ、おかえり~。」


 残暑とはいえ、未だ汗ばむ気候の中、外出から帰った征樹を出迎えたのは杏奈である。

それに関してはもう突っ込む気もない。

しかし、今、問題なのはその状況、そう事件は現場で起きている!


「ん?コレ?どぉ?なかなかに似合うと思うんだケド?」


 服を見せつけるように胸を突き出した杏奈の姿は制服だった。

それも征樹が"見た事のない"モノ。

プリーツの数が40以上はあるだろうひらひらのチェックのスカートに、大きめのストライプのリボン。

そしてブレザー。

征樹には思い出そうとしても思い出せない制服姿なので、やっぱり見覚えない制服だった。


「・・・・・・とうとう・・・沸いたか?」


 主に脳ミソが。

ここ連日、暑かったものなぁと、杏奈の姿を"コスプレ"の一言、もしくはそういう趣味に走った人と認識する事でこの件を処理しようとする。


「ちっがーうっ。琴音さんに高校時代の制服を借りたの!どぅ?お嬢様に見える?」


 スカートの裾をちょんと摘まんで軽く膝を折り、挨拶をする。

この場合の言葉はきっと『ごきげんよう。』といったところだろうか。


「・・・見えなくもない。」


 そうは言ったものの、やはり杏奈は杏奈だなと、彼女の喜ぶ様を見て、征樹はそう思う。

早々、服の一つや二つで中身まで丸ごと変わる事はない。


「あのぉ・・・わ、私はどうでしょう?」


 今度は杏奈の後ろから奏が恐る恐る姿を現す。

勿論、彼女も制服。

但し、こちらの制服は濃紺を主体とした服で、膝丈も長く、ブレザーの丈も短い。

白のシャツに巻かれているタイも紐に近いタイプ。

そしてトドメに黒のタイツ。

杏奈の制服がお嬢様というのならば、奏の姿は超お嬢様・・・。


(超お嬢様ってなんだ?)


 思わずのセルフ突っ込み。

ともかくお嬢様度(?)は奏の方が上だった。


「先輩の方がよりシックなお嬢様というカンジだよねぇ。」


 元からお嬢様だったと判明していた奏に対して、杏奈の言葉には卑屈めいたものがある。


「似合う・・・かな?」


 制服は着てみたかった憧れのモノだったので、思わず着てしまったが、まさか征樹に見せるとは思っていなかった奏は、恥ずかしさのあまり顔が赤くなっている。

しかし、杏奈だけが褒められるのは、少々悔しい。

かくして現在、征樹の評価待ちである。


「似合ってます。あぁ、でも・・・。」


 しかし、この家は帰宅する度に起きるイベントが多い。

征樹はそう思う。

以前とは全く違う家だ。

一時期は本当に自分の家なのだろうかと違和感だらけの帰宅だったが、今では少々、あくまでほんの少しだが、慣れ始めている自分に驚く。

そっちの方がいい、まだマシと思える事に更に驚く。

"誰かが待っていてくれる家"に。


「逆のパターンも見てみたいかな。」


 お嬢様然とした奏がまんまの格好をしていたとして、それは似合うのは当然である。

それならば、逆でもいいじゃないか、と。

理知的(風)なお嬢様の杏奈というのも面白い。


「なるほどね。じゃあ、先輩、今度は交換して着てみましょう。」


「えぇ。」


 征樹の言葉があったからだけじゃない。

二人とも相手の制服を着てみたいと思っていたところである。

寧ろ、互いに互いの制服を着てみる事は、ハナから考えていたとも言う。


「なんか、楽しいですね?」


 笑う奏。

同じく頷いて笑う杏奈。

二人が楽しいなら、まぁいいかと気楽に考えて流す征樹。

とりあえず、起きたイベントは楽しんでみる事にしたのだった。

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