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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第捌縁:送受信してみたら・・・・・・?
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第C&Ⅳ十Ⅳ話:進むべき道。

(進路・・・。)


 制服に関する大論争(?)が終息したのも束の間、征樹はふと・・・。


「杏奈はもう目標とか、あるの?」


 普通ならば同学年の友人数人で話すような内容も、征樹にしてみれば杏奈くらいしかいない。

最近の征樹は、以前より取っ付き易くなっていて、クラスメイトと会話する機会が増えてははいるが、未だにこういう話を出来る相手はいない。


「ふっ、アタシの場合、選ぶような立場にないの、これが。」


 勝ち誇ったかのように胸を張る杏奈。


「・・・聞いた僕がバカだった・・・。」


 頑張っても中の下程度の成績を残している杏奈には、仕方のない話だ。


「ん~、でも、多少こんなカンジがいいなぁってのはあるかな、制服とか?」


「それはもういいって・・・。」


 杏奈の制服談義対して征樹は、呆れるという領域を既に通り越している。


「征樹くんは・・・あるのかしら?」


「僕?」


 遅々として進む気配のない会話に思わず静流が口を出す。

なんの事はない、静流自身も鈴村の言葉が気になっているのだ。

たとえ、それが叱咤・激励の類いであると理解していても、だ。


「そう。ないのかしら?」


「僕は・・・。」


 小さくう~んと唸る征樹の仕草、その一挙手一投足をその場にいた皆が見つめる。


「特にこれといった夢があるわけじゃないから・・・。」


「から?」


 夢がないからといって、人生が終わるわけではない。


「そういうのを自分に合ったペースで見つけられそうな学校がいいかな。」


 大学全入学世代に突入かと言われる現代では、流石に低学歴というわけにはいかないだろうという事は、征樹にも解る。

という事は選択肢は、"進学"という事になるのだが・・・。


「いいですねー、選べる学校があるヒトはー。」


 棒読みにも程がある。

ちなみに征樹の成績は、上の中くらいだ。

足を引っ張っているのは、以前も苦戦した歴史系。

そこもきちんとやれば、もっと上位を狙える位置。

・・・その気力が本人にあればだが。


「どうだろう・・・僕には、なんていうか、偏差値とかで選ぶってのはない気がする。」


 そういう基準も目安としては必要なのは理解している征樹だが、それだけで選んで果たして自分が適応していけるのかと考えると、甚だ不安だ。


「そう考えると、鈴村さんが紹介してくれた学校へ行くのもアリかなぁって。」


 また"鈴村"。

琴音を除く三人は、声に出さずとも同じようなフレーズが脳裏を過ぎる。


「"あの人"が紹介した学校って?」


 それはそれで興味がある。


「瀬戸さんの所に来てるお客さんが理事をしている学校で・・・多国籍のパブリックスクールみたいなもん?」


 何故疑問形なのかは別として・・・。


「瀬戸さんの知り合い?」


「うん、竜木っていう人なんだけれど。」


 瀬戸はあれでも日々征樹の事を心配して、気を配っている。

恐らく征樹に関しては、一番信用出来る人物だろう。

その瀬戸が何も言わず、征樹の好きにさせているのならば、特に害がないという事に違いない。


「征樹くん、今度、私にも紹介してくれないかしら?その竜木という方を。」


「え?一応、聞いてはみますけど・・・。」


 それとこれとは別。

瀬戸が征樹を気にかけているように、静流だって征樹を心配する気持ちは負けていないのだ。


「お願いね。」


「うふふ。」


「な、なんですか?」


 急に笑みをこぼす琴音に静流が後ずさる。


「いえいえ~。静流さん、お母さんしてるな~って。ん~、お母さんってトシじゃないから、お姉さんかしら~?」


 非常に楽しそうな微笑みである。


「わ、私は、征樹くんの"保護者代わり"ですからっ。」


「うん、そうねぇ~。」


「もう、琴音さんっ。」


「なぁに~?」


 終始にこにこしたまま非常に満足げな琴音に、静流は赤面して声を上げるくらいしか出来ず、結局この話自体もぐだぐだのまま、墓参りは終わるのだった。

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