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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第捌縁:送受信してみたら・・・・・・?
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第C&Ⅳ十Ⅱ話:先を行く者。

ハッピバースデー、自分・・・。

「進路かぁ・・・。」


「突然、とうした?変なモノを・・・食べたわけじゃないし・・・。」


 近くの公園で皆で昼食を済ませた後に、杏奈が突然に変な話題を口にした事に征樹は驚く。

訂正しよう、"杏奈が言うには"変なコトだ。

本当は変なモノを食べたのかと突っ込みたかった征樹だが、今しがた皆で同じ琴音お手製の弁当を食べたばかりである。

征樹がそんな事を口に出来るわけがない。


「いやぁ、そろそろ漠然でも考えなきゃいけないのかなぁ~って。」


 実際は鈴村に痛烈に批判・指摘されての発言なのは明白である。

杏奈もまさか、この後きつく言い過ぎた事を鈴村が悶々と後悔して、キルシェにツッコミと説教を受けているとは思わなかっただろう。


「熱でもある?」 「ナイッ!」


 これだけ即答出来るのだから、少なくとも風邪等の症状ではない。

が、征樹としては何かが引っ掛かる。


「・・・まぁ、一理あるけれど。」


 征樹は視線を奏に移す。


「そっか。」


受験生が目の前にいるのを配慮しようとする征樹の視線に、杏奈も気づいたようだ。


「まずは奏先輩が先だもんね。先輩は何処の学校を受けるんですか?」


「え?私?」


 他に誰がいるというのだろう?

現在は彼女だけだ。

そういえば、奏の志望校を聞いた事がないのに杏奈は気づく。

征樹も同じだ。


「父は、私立のT女を受けろって勧めるんだけど・・・。」 「嘘ォ!T女?!」


 T女とは全寮制のミッション系で、超お嬢様学校だ。

特に制服がこの辺りでは可愛い事が有名で、杏奈もそういう意味で知っているくらいだ。


「せ、先輩て・・・お嬢様だったんだ。」


 高校の学力としては、そこそこのグレードだが、自立の中では入学金・授業料もかなりのグレードでもある。

通常、私立は公立に比べたら高いのは普通といってもいいが、私立の中で比較してもとびきり高い。


「そうなの?」


 男であるうえに、特に進学先・進路をチェックしていない征樹にはチンプンカンプンである。

知っていたとしても、杏奈のハイテンションにはついていけなかっただろう。


「そうなの!制服とか、すっごい可愛いんだからっ!」


(制服で選ぶ事なんだろうか・・・。)


 力説する杏奈に対する征樹の懸念ももっともだが、時に女子にとってそれは非常に高い比重を占めていたりする。

同じレベルの学力・進学率(学費を含む)なら、当然制服が可愛い方を選ぶ。

学校側をそれを理解したうえで、有名デザイナーに依頼するなどという事もよくあるのだ。


「あらぁ~、じゃあ杏奈ちゃん、着てみる~?10年くらい前のだけど。」


「はぃ?」


 思わぬ方向から飛んできた言葉に、きょとんとする杏奈。

征樹は意外とこういう顔をする杏奈が、気に入っている。


「せ・い・ふ・く・♪懐かしい~。」


「え?琴音さん、もしかして・・・?」


「私の母校~。」


 まさかの展開に、聞き返した奏まで固まる。


「こ、琴音さんもお嬢様ァ~ッ?!」


(なんとなく解る気がする。)


 杏奈の叫び声とは裏腹に至って冷静な征樹。

それ以前の段階、制服云々の時からこんな感じではあったが、寧ろ、琴音がお嬢様と指摘された点に一人納得していた。


「記念品ってわけじゃないけど、捨ててないハズだから~どぉ?」


「ぜ、ぜ、ぜ、是非!」


 心なしか杏奈の目が血走っているようにも見える。

杏奈にしてみれば家の懐事情でも、頭の事情でも着れないだろう制服を着るチャンスだ、これを逃すテはない。

いや、逃さない。

杏奈は少し喰い気味に琴音の質問に答えたところで、その意気込み(?)が解る。

そしてそれは征樹には全く理解出来ない。


「あ、あ、あのぉ~?」


「なぁに?」


「私も、いいですか?」


 そろぉ~りと、控えめに手を眼前に上げる奏の様子に琴音が微笑む。


「どうぞ~。」


 思わぬところで、思わぬ事が判明したのに加え、大喜びの杏奈と奏。

理解はし難いが、二人が喜んでいるならそれでいいし、そんなもんかと征樹は思う。


「じゃあ、静流さんも着てみる~?」


「へ?」


 それまでずっと会話の流れに入らず、広げられた弁当箱の重を片付けながら傍観していた静流にまさかの矛先が向けられる。

全く関係ないと思っていたからの静観だったのに。


「制服。この際だから着てみましょう?」


 それはそれで、どことなく退廃的とうか、罪のかほりが・・・。

もっとも琴音の言葉に深い意味は全くないのは解りきった事で、ただ単純に面白そうだからという、もうお決まりになりつつある、いつものアレ。

ただの思いつきというヤツである。


「遠慮しておきます。」


「・・・面白そうなのに。」


「え?!」


 こういう時に一番最初に呆れて突っ込むだろう征樹がぽつりと漏らした肯定の言葉に、目を剥く静流がそこにはいた。

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