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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第捌縁:送受信してみたら・・・・・・?
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第C&Ⅲ十Ⅷ話:宣戦布告は叱咤・激励から。

 鈴村は既に周りにいる人間達の事は、ある程度把握している。

ただ、誰が誰であるという、個々の一致が出来てない。

せいぜい、外見で年長組と年少組とに分けるくらいだ。


「ええと・・・。」


 少々怪訝そうに静流が声を上げる。

征樹の名が出たからには、征樹の知り合いなのだろう。

しかし・・・。


「あぁ、失礼。私、征樹様の"お友達"の鈴村と申します。」


 鈴村は、自分で述べた"お友達"のフレーズに一人、感動を覚える。

こういう自己紹介は初めてである。

ちなみに、その部分を強調したのは言うまでもない。


「そして、清音様、征樹様のお母様の知人でもあります。」


 どーだ参ったか!とまではいかないが、ちょっとした優越感。

自分より多くの時間、征樹と一緒にいられるのだが、これくらい許されてもいいだろう。


「私達は・・・。」 「あぁ、結構ですよ。」


「はぃ?」


 同じように自己紹介しようとする静流を、鈴村が制する。


「正直なところ、征樹様さえ幸せならば、それで構いません。」


 ただ、鈴村としては釘を刺しておかねばならなかった。


「どうぞ、征樹様の幸せや自立の邪魔をなさらないよう。」


 鈴村とて好きでこのような事を言っているわけでない。

彼女達の優しい想いが、征樹の為になっている事も承知している。

但し、それが甘やかしになってはいけない。


「何よ、ソレ・・・。」


 杏奈が苛立ちを隠さずに口を尖らせる。


「そうではないと言い切れますか?お嬢さん、あなた、進路はどうします?ずっと征樹様と一緒にいられますか?そちらのあなたも。」


 杏奈を見つめ、次に奏を見つめる。


「そ、それは・・・。」


「それ以前に、征樹様が興味を持っている学校を知っていますか?・・・失礼。」


 皆の前を通り過ぎ、既に置いてある花束の横に持っていた花束を置き、再び向き直る。


「あなた達にしても、何時もまでも彼の保護者代わりではいられませんよね?」


 今度は琴音と静流に言葉をかける。


「というよりも征樹様を支えるどころか、支えられている始末でしょう?"怪我"までさせて。」


 事情はどうあれ、征樹が怪我をしたという事実は変わらない。


「そうね。そちらの方の言う通り。」


「琴音さん・・・。」


 そんな事は琴音だって充分に承知していた。


「確かに助けられてる。でも、"助言"されなくても、ちゃあんと私達は征樹ちゃんの事を想っています。彼が必要としてくれる限り。」


 そこは琴音だって譲れない。

そして琴音は、きちんと鈴村の言葉が、征樹を心配するあまり口から出た叱咤・激励と理解したうえで受け止めた。


「きっといつか離れていくかも知れない。でも、私達だって、征樹くんの幸せを願ってます。」


 琴音の反応を見て、静流も毅然とした態度で言葉を放つ。


「それに、もしかしたら、この中の誰かを選んでくれるかも知れないわよぉ~?鈴村さんも含めて~。」


 にっこりと微笑み、あっという間にシリアスモード終了の琴音であった。


「・・・・・・それは願ってもない事ですね。」


 どうやら相手の方が一枚上手だったと鈴村は被りを振る。

素直に認める。

口には出さないが。


「それは私も精進しなければなりませんね。」


「えぇ、お互いに。」


(・・・凄い・・・大人の余裕?)


 鈴村に一歩も退くことなく対峙する琴音。

互いに言葉少なだが、その何気ない間に数々のやり取りが見えるような気がして、杏奈は思わずたじろぐ。


「あれ、鈴村さん・・・?」


 冷え冷えとした場の空気に全くそぐわない声。


「奇遇ですね、征樹様。」


 介入者は、水を張った小さなバケツと円柱状に丸めた新聞紙を携えた征樹だった。


「うん、そうみたいです。」


 果たして本当に奇遇だったのか、他の女性陣は甚だ疑問を感じざるを得ない。


「鈴村さんも母さんに?」


「えぇ。」


 征樹に向けられた笑顔は、先程の辛辣な言葉を吐いていた者と同一人物だとは、誰も思わなかった。

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