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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第捌縁:送受信してみたら・・・・・・?
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第C&Ⅲ十Ⅴ話:ソコに在った事実を想うコト。

「お墓参り?ナニソレ?!行く行く!」


 夕食を(何故か)一緒に食べた後、例の件を杏奈に話した反応(リアクション)はこれだった。

征樹が思っていた以上に大きな反応で、寧ろ言い出した側の方が引いたくらいだ。


「別に、特に何かあるってワケじゃないんだけど・・・。」 「行く!」


 もはやダダっ子のそれに近い。


「一応、琴姉ぇがお弁当作ってくれるって。」


「尚更行く。」


(花より団子・・・。)


 半ば呆れる征樹だったが、当の杏奈はウキウキだった。

確かに墓参り自体は、自分の祖父母の時のそれと流れは変わらないだろう。

しかし、それとこれは別だ。

征樹に誘われて、征樹という存在をこの世に生み出してくれた人の墓参り。

そこに感謝等の念がないはずはないし、一度は行ってみたいと思わないわけがない。

つまり、断るハズがないのだ。


「そっか、ありがとう。」


「なんで、そこでお礼かなぁ?皆で行くんでしょ?なら、楽しく行こうよ、おーっ。」


「おーっ。」


 ノリノリで拳を高々と上げた杏奈と、それに同調する琴音の姿に征樹は苦笑するのだった。




「征樹くんのお母様のお墓参り?」


 ハイテンションの反応とは違い、奏の反応は落ち着いていた。

電話の受話器越しだったので、その表情までは解らなかったが。

なんら変わった感じはしなかった。

変わったといえば、時折"葵くん"ではなくて、"征樹くん"と呼ぶ事くらいだろう。

征樹にとっては、どちらも大して変わらないようなので、特に突っ込むような事はない。


「琴姉ぇがピクニック代わりにお弁当を作ってくれるって言うから、墓参りの後に合流でも構わないですけど・・・。」


 墓参りは退屈。

それが征樹の一貫した認識である。

最初から強制もしていない。


「うぅん、行くよ。私も・・・"会って"みたい。」


「会う?」


 それを言うならば、"行く"の間違いではないだろうか?

奏がこんな事を言い間違えるとも思えないと、征樹は首を傾げる。


「行くっていうよりも、お墓参りは亡くなった人に会って、生きてる人が今を話す場所だと・・・思うから・・・。」


 奏には退屈以外の認識があった。


「そういう考え方もあるのか・・・。」


「想い入れが強ければ強い程、そういうのは強くなると思うの。」


 征樹の疑問に補足の説明をする奏。


「想い入れ?先輩は何かある?」


 征樹の母との面識はあるわけがない。


「お母様が亡くなってからの征樹くんを知ってるよ?」


 それが残された者との一番の大きな違い。


「征樹くんだって、沢山、話す事あるんじゃないかな?」


 受話器越しの奏の声は、いつものオドオドしたものではなく限りなく優しい。

いつもより近くに聞こえる、響いてくる彼女の声。


「・・・・・・そうかも・・・知れない。」


 奏の言いたい事はなんとなく理解できる。

今まで・・・というより、最近は色んな出来事があったから。


「楽しみにしてる。」


 これで杏奈も奏も一緒に来る事になった。

そこで、ふと、征樹は一連の思いつきの発端になった鈴村を思い出す。

ニアも思い至った発端ではあったが、墓参りという案は鈴村の言葉からだ。


「一応・・・。」


 置いた受話器をすぐさま取り、再び電話をかける。

だが、鈴村が電話に出る事はなかった。


「・・・まぁ、またの機会でもいいか・・・。」


 別れ際にも、"また今度"という話をした事だし、いずれその機会はあるだろうという事で、一人納得する征樹。

他に瀬戸を誘うという事も考えたが、瀬戸の事である、きっとお盆の期間中に墓参りは済んでいるだろうと推測する。

そういう一般的な礼儀作法については非常に厳しいのだ。


「父さんは・・・行かなかったのかな・・・?」


 出張中である、現実的に考えて行かなかっただろうと。

もしからしたら、その事を含めて瀬戸に頼んであるのかも知れない。


「僕は・・・母さんに何を話せばいいんだろう・・・。」

残された人間がただ泣いてるだけなんて思うなよ!

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