第C&Ⅲ十Ⅳ話:笑う角には・・・?
年度末更新ですねぇ・・・。
そういえば、大晦日も更新したから、これも年末進行と言えたのだろうか?(苦笑)
「お墓参り?」
鈴村達と出会ってから帰宅した征樹は、道中で考えて決断した結果を静流に告げた。
「いつも一人だったから、今まで行けてなかったけれど、どうかなって。お盆は過ぎちゃったけれど。」
お盆といっても幼い記憶の母の墓は、日本の墓石というより洋風だったので、あまり関係ないかも知れないと征樹は思う。
そういえば、自宅に仏壇もない。
恐らく、母親は仏教徒ではないのだろう。
・・・父が、かも知れないが。
「それはいい事だと思うけれど・・・それって私達も?」
征樹は"いつも一人だったから"と述べた。
つまりは、今年は一人じゃないから、イコール静流がいるからという事になる。
一瞬、自分と二人でだろうかとも静流の頭に過ぎったが、あえて"私達"とそこは答えておいた。
「突然だし、場所が場所だから・・・。」
つまり、強制ではないが、来てくれたら嬉しいという事なのだろう。
感覚としたら付き添いといったところか。
しかし、墓参りの付き添い、まさにこれは"保護者代わり"たる自分がやるべき事ではないか!
恋人でも良かったが。
「征樹くんが行きたいのなら。」
寧ろ、ウェルカム、大歓迎だ。
「ありがとう。」
「そうねぇ~、じゃあ、お弁当でも作って~ちょっと暑いけど、お外で食べましょ~か~。」
珍しく誰の乱入がなく二人きりでの会話だったのだが、やはりそうは問屋が卸さなかった。
二人の会話を覗き込むように琴音が、部屋の扉の縁に・・・。
「で、いいかしらぁ?」
一応、断るという事はないだろうが、琴音は征樹にお伺いを立てる。
こういう事は、細かい事かも知れないが、人間関係を円滑かつ円満に運ぶ為には必要なのである。
「うん、もちろん。」
当然、征樹から返ってくる答えは、予想通りのものだった。
「ただの墓参りじゃ、面白くないもんね。」
苦笑する征樹。
征樹にとっては、色々と考えた結果で、今の自分と皆とでという気持ちだったが、冷静に考えれば生没と名が刻まれた石と墓標があるだけだ。
他の人間には些か味気ないものだろう。
「そんな事は・・・。」
もっとも静流達からすれば、保護者代わりを自負する自分達が"本当の保護者"と対面するのだ。
それは非常に意味のある事だと思っていた。
たとえ、それが物言わぬ冷たい石との対面だとしても。
それに思い出し、偲ぶ悲しみを少しでも和らげ、分担できる方がいい。
「これなら、杏奈ちゃんも、奏ちゃんも後から合流出きるものね~。」
「琴姉ぇ・・・。」
その優しい気遣いがどうしようもなく嬉しい。
「中身は何がいいかしら~?タコさんウィンナー?オマケしちゃって、イカさんウィンナーにしちゃう?」
どうやらオマケされるのは、足2本分らしい。
色合いの問題は一体どうするつもりなのか。
少々興味がないわけではないところだ。
「それは琴姉ぇのお任せで。」
お弁当は、開けるまで何が出てくるかびっくり玉手箱派な征樹である。
生まれてからこの方、弁当と言えばコンビニ弁当か弁当屋のものくらいなので、そういう楽しみは味わった事がなかったりするせいもある。
墓参りにお弁当とは、ミスマッチな感もするが、これはこれで"らしい"のではないだろうか?
征樹にはそう思える。
「はぁ~い。りょ~しょ~。」
そう返事をすると、覗き込んでいた琴音がすすすっとフェードアウトしてゆく。
その様子を見た後、征樹と静流は互いの顔を見合わせて笑った。
次にこの笑いの輪の中に誰が入ってくるのだろう。
ふと、ニアが言っていた言葉を思い浮かべて、征樹はそんな事を考えた。
こうやって日々が過ぎてゆくのも悪くはないと思いながら。