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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第捌縁:送受信してみたら・・・・・・?
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第C&Ⅲ十Ⅲ話:輪の中へ。

「けど、意外と元気だし、周りの人と馴染んでたね。」


 突然の訪問で驚いたニアだったが、クラスメイトに断りを入れ、今は中庭に場所を移していた。

正直、衆人環視での会話は恥ずかしく願い下げだったので、征樹としてもそれは願ったり叶ったりである。

ただ、突然現れた征樹に対するクラスメイトの好奇の目と黄色い声(?)で、結局恥ずかしい思いをしたのは、変わりがなかった。


(なんか、なんで、こんなコトに。)


 そう思っても、ニアに悪気は全くないというのが解りきっているだけに、なんとも言えない気分になる。


「楽しいデス。」


 てへへと笑うニアが、ことのほか可愛く見えてしまって、強く言い出せないというのもあったが。

いもしないのに、彼女が妹のように見えてしまうのは何故だろうと、征樹は心の中でしきりに首を傾げるしかなかった。


「自分カラ・・・。」


「ん?」


「自分カラ笑わナイと、相手モ笑っテくれナイって・・・。」


「自分から笑わないと、か・・・。」


 何もしなければ、何も変わらない。

そんな単純な理屈は、赤ん坊でも解る。

しかし、自分から笑いかけた時に、もしそれが相手から返ってこなかったら?

それはとても恐い事だと征樹には思える。

無防備に笑うという事も難易度が高い。


「ニアは偉いね。」


 ぐっと手を伸ばして、高い位置の頭を撫でる。

果たして自分は、そんな風に自然に周りの人達に笑いかけられているだろうか・・・?

やはりこれも難易度が高いように思える。


(壁を作っているのは、僕の方なんだろうね・・・。)


 それでも、そんな簡単に恐怖心が薄れたり、割り切れたりするものではない。


「そんなコト、ナイ・・・デス。」


 褒められたのが嬉しかったのか、ニアの頬はほんのり赤い。


「僕にはうまく出来ない事だから、それだけでも僕には凄いって思えるよ。」


 それでも愛想笑いくらいは出来る、と心の中に付け足したが。


「?デモ、お兄サン、私にはヨク笑ってくれマス。」


「僕が?」


「ハイ。」


「笑ってる?」


「ハイ。」


 当然、征樹に自覚症状はない。


「そうなのか・・・。」


 他人に指摘されるまで気づかないのが、征樹らしい。


「ダカラ、お兄サンと話スの楽しい、デス。」


 再び照れ笑いをするニア。


「もっと沢山話したくナルデス。もっと仲良ク。そしたら家族、なれマス。」


「いや、それはなれないんじゃないかな。」


「えっと、家族、日本の家族と違ウ意味。大切な大切な輪の中って、意味デス。」


「大切な輪か・・・。」


 ニアの言葉足らずな説明を、なんとなくだが征樹なりに理解する。


(僕は・・・誰を輪の中に入れられるんだろう・・・?)


 今日、何度目かの自問自答。


「だから、私、沢山、沢山、色んな人と沢山話すデス。」


 一人息巻くニアを見て、征樹は微笑む。


「そうだね。僕ももっとニアみたいに話さないとね。」


 今度こそ、自覚して出た微笑だった。

微笑んだまま、ニアの頭をもう一度撫でる。


(若いっていいなぁ・・・。)


 ふとニアの頭を撫でながらしみじみと思う征樹だったが、ニアは身長が大きいだけで、確かに若い。

しかし、そもそもが征樹と一つ違いなのだ。

ニアが若いというのではなく、征樹が年寄りくさい、或いは実年齢より落ち着き過ぎているといった方が正しいだろう。


「ニア、ありがとう。お陰で為になったよ。」


 まさかニアに教えられるとは思っていなかった。

いや、ニアだから教えられたのだろう。

征樹はそういう考えに至る。


「え・・・と・・・どういたまして。」


「・・・それを言うなら、"どういたしまして"だよ。」


「あ・・・あぅ・・・。」


 どうやら、まだまだ自分が教えられる事の方が多そうだ、と征樹は再び笑ってニアと別れた。

道中、色々な事を征樹は考えながら。

ニアの笑顔を言葉を反芻しつつ、征樹は帰宅したのだった。

そして、征樹は今日一日で考えた事の結論を発表しようと決心しながら・・・。

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