第ⅩⅡ話:そこはかとなくメニアック?
静流は征樹の許可の言葉を聞いて、そこまで拒絶されているわけじゃなくて良かったと思ったが、借りられた寝間着がジャージの時点で、"オマエにはジャージで十分だ!"判断された気がした。
やっぱり魅力がないのだろうか?とヘコんだが、冷静に考えて征樹の年齢でそんなに女性の扱いが上手かったりこなれていてもどうかと気づいて、なんとか精神の安定を保つ。
女性用のパジャマの常備とかあっても嫌だし。
「そう言えば、征樹君、彼女いるのかしら?」
気になる。
非常に気になる。
別部屋で着替えながら、静流は再びあれこれ考えを巡らす。
(まさか・・・彼女と比べられてたりとか・・・。)
嫌な汗が出てきた。
もしそうだとしたら、若さで勝てるわけがない。
完敗だ。
何の勝負をしているのかは、静流自身よくわかっていなかったが。
そう考えると、自分の身体に何の反応も示さないのは理解出来てしまう。
流石に若い張りのある肌には勝てない。
全く以って根拠の無い理論に静流は一人で敗北感を味わっていた。
「いいわ、それを含めて明日からの事を考えましょう。征樹君にもちゃんと言わないといけないし。」
何を含めてだ。
と、周りの人間が聞いたら、十人が十人突っ込む台詞を吐いて着替えを終えた静流は、再び征樹のいる居間に戻った。
居間に帰ってきた静流の姿を見て、征樹は自分の発言にはきちんと責任を持って行うべきだと学んだ。
征樹にとっては大分大きめのジャージでも、やはり静流には少し小さいようだった。
例え、それが伸縮性に富むジャージだったとしても。
サイズが合ってないせいか、ぴったりと身体に張り付くようになっているジャージは、先程までのスーツ姿より身体のラインをくっきりとさせていた。
ジャージの上からはそれ以上ジッパーが上がらないのか、肌色の谷間が少しのぞいている。
(いかん、ヤバイ、アカン。おぉ、三段活用。)
マトモに見たらヤラれる。
そんな圧倒的な破壊力がそこには秘められていた。
ちなみに、そんなのが三段活用であるワケもない。
「静流さんは、僕の部屋のベットで寝て下さい。一応、大人用のデカいヤツなんで。」
なるべく視界に入らないように目を逸らしつつ、静流に自分の部屋をすすめる。
一方の静流はそんな征樹を見て、自分のジャージ姿は見るに耐えないのだろうかと考えていた。
女性のそんな気持ちを色々とわかれというのも酷である。
征樹だって、色々と闘っていたからだ。
「じゃ、僕は居間で寝るんで、あの、おやすみなさい。」
さっさと静流の前から逃げ出し、居間から襖一つで隔たれている和室の押入れから布団を出そうとする征樹。
今日一日、本当に逃げ出すように行動するの多いな、トホホ。
と、征樹はがっくり来ていたのであった。