第C&ⅩⅠ話:三人一緒でもWデート?
これにて、冬休み、引きこもって読もうぜ期間(違)ラストです。
「・・・楽しい?」
今、置かれている現状でようやく征樹が言えたのはコレだった。
「うん。」 「えぇ。」
あっさりと即答されてしまって、ぐぅの音も出ないとはこの事である。
「・・・そう。」
「うん。」 「えぇ。」
昨日、夕食時に二人から提案された(彼女達の中の認識での)Wデートとやらで、翌日の今、征樹達は近くのショッピングモールに来ていた。
それはいいのだが・・・。
(別に逃げたりはしないんだけど。)
右腕を奏、左腕を杏奈がそれぞれの腕を絡ませ、がっちりと征樹の両腕をホールドしている。
どう見ても、捕獲された未確認生物でしかない。
しかも、二人ともそこそこ以上の可愛らしさを備えてる。
そんな二人を両手に・・・つまりは、目立つ。
流石にあからさまに直視する者はいないのだが、征樹的にはそっちの方が居た堪れない。
(結局、二人は何がしたいのか・・・と。)
視線を周りから二人に戻すと、ふと奏の力が弱まるのを感じる。
「何?」
「え、あ・・・・・・やっぱり葵くんも、大きいのがいいのかなって・・・。」
「は?」
何を言いたいのか更に問おうとすると、今度は杏奈側の腕の力が緩む。
「でも、どう頑張っても・・・これが限界でっ。」
そう言うとぎゅぅぅっと征樹の腕を抱きこむ奏。
「えぇと・・・。」
「征樹のドスケベ。」
「え、僕?」
自分は何も言っていないのに、そのような称号をいきなり付けられてはたまったものではない。
「でも、杏奈さん、男の方はその、誰でも、多少は・・・その、えっちだって・・・。」
(何処からの知識ですか、先輩。)
もう何が何やら、突っ込みどころが山盛りで対処し難い。
「もぉ・・・男ってバカなんだからっ。」
顔を赤らめた杏奈も、呆れながら再び征樹の腕を組む力を強める。
すると、もにゅぅっという柔らかい感触が征樹の腕に・・・。
(あぁ、成る程。)
ここにきてようやく二人が何ついて話していたのかに征樹は気づく。
(寧ろ、女性の方がこの場合はスケベなんじゃ・・・。)
ミもフタもあったもんじゃない。
かと言って、この場合は意気込んでいる(?)二人に何か言ったら、逆ギレされそうである。
「ところで。」
「んー?」
「何を買いに来たの?」
デートとはいえ、わざわざショッピングモールに来たわけだから、何か買いたい物、或いは見たい物があるのではないかと。
「いや、特に。」
「は?」
「これと言って、何があるってわけじゃなくて・・・。」
「はぁ。」
じゃあ、何しに来たんだ?!と突っ込みたいし、用もないなら帰りたいと思うのが征樹である。
「ん~、まぁ、ウィンドゥショッピング?」
何故か疑問形。
そして、女性は時に見るだけでも数時間の買い物が可能なスペックを持ち合わせているのだ。
「あの、私は、その、征樹くんの好きなモノというか・・好みを知りたいかなって・・・。」
そして、またメモを取るのだろうか?
昨夜のメモ帳を持った奏の姿が、征樹の脳裏に浮かぶ。
ある意味、夏の旅行は、奏を前向きに変えた。
違う意味、色んな意味で悪化したとも言えるかも知れないが。
「あ、それいいね~。」
奏の提案に杏奈が珍しく乗る。
どうやら、こちらの友情関係も変わったようだ。
「んじゃ、まずは根本的なトコでぇ~、アレかなっ♪」 「却下。」
ノリノリの杏奈が指さした先には、可愛く、時に妖艶な色とりどりのレースの群れが並ぶ・・・所謂、下着売り場。
ランジェリーショップというヤツだ。
「え~。」
「え~、じゃない。誰が行くか。というか、恥じらいを持て。」
流石に突っ込んでしまう征樹。
「大事なんだよ~、大事なんだよ~。」
「何故、2回も言う。」
「大事だから。」
低レベル過ぎる会話にほとほと呆れて、征樹が脱力する。
「ち、ちなみに、ど、ど、ど、どんなのが好みだったり・・・しますかっ?!」
「・・・ノーコメント。」
すかさずメモ帳を構える奏の姿が完全にトドメだった。
「僕はここで待っているから、二人だけで行ってくれ。」
「も~、ノリが悪いなぁ。」
ノリが悪いとかいう問題ではない。
一体全体、どんなノリだ、完全に悪ノリじゃないか、と。
「じゃあ、先輩、行こう?」
「あ、はい。」
「征樹にはアトでどんなのか見せてアゲルね~。」
そう意地悪く笑う杏奈を、征樹は払い除ける様に手を振って無言で答えるのだった。
というコトで久々のスキル:連続更新の発動でした。
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