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貴方と背中を合わせる理由。(仮)  作者: はつい
第陸縁:深まらない愛は愛じゃない・・・・・・?
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第C&Ⅰ話:幾数を重ねたとしても・・・。

 長かったような、短かったような。

そうぼんやりと考えながら、静津は暗闇を見つめている。

色々な事があった旅行も、最後の夜となっていた。

今は布団の中。

日中かなりの運動をしたにも関わらず、一向に眠くならないのは、頭の中で琴音の言葉がぐるぐると回っているせいである。


(はっきりか・・・。)


 確かに征樹にとっては、大切な事なのかも知れない。

信頼関係が強くなればなる程、後々が辛くなるだろう。


(だからって、言ってどうなるのかしら・・・。)


 それは戸惑いしか生まないのではないだろうか?

征樹にとって、新たな混乱の・・・。



「はぁ・・・。」


 思わず溜め息が漏れる。

何が征樹にとって必要で、何が自分のエゴなのだろう・・・次々とそれが浮かんでは消えてゆく。


「静流さん?」


 暗闇に自分とは違う声。


「な、なぁに?」



「眠れないんですか?」


「ちょっとね・・・。」


 本当はちょっとどころではなく、今夜はもう徹夜くらいの覚悟をしていたのだが。


「僕もです・・・色々とあって、楽しすぎて・・・。」


 そんな旅行も、明日の朝には帰路についている。


「旅自体もほとんど初めてだったから。」


 初めて。

今日、散々聞いたフレーズだ。


「沢山、思い出は作れた?」


「はい。」


 横を、征樹が寝ているであろうベットを見る静流。

二人を包む暗闇の中では、征樹がどんな表情をしているのかまでは、伺う事は出来ない。


「征樹くん?」


「はい。」


 征樹の返事だけが、彼が自分の横にいるという証拠。

逆に言えば、それが現状の距離と同じだという錯覚。


「初めてって、通過点なんですって。」


 静流は琴音の言葉を繰り返す。


「これからも続くの。だから、初めてだけではなくて、2度目、3度目、ううん、それ以降も大事にしましょう?」


「静流さん・・・。」


「征樹くんが望めば、きっともっと沢山創れるわ。」


「僕が・・・望めば・・・僕が・・・。」


 反芻の声。

静流にそう言われても、征樹には実感がわかない。

信じられないと言った方がいい。

けれど、確かに旅行自体は、そんなに悪くはなかった。

楽しかったし、為になったし、来て良かったと思っている。


「楽しかったでしょう?」


「えぇ。」


 頭で思った事をすぐさま指摘されては、肯定するしかない。


「だから・・・また来ましょう?同じ場所でなくても構わない。色んな所へ。」


「そう・・・ですね。」


 沈黙。

それが数十秒。

その数十秒でも静流は色々と思考する。

主に琴音に言われた征樹との距離感に関して。


「ねぇ、征樹くん?」


 征樹からの返事はない。


「寝ちゃった?」


「・・・起きてます。」


 征樹は征樹で、いつもの自分の思考に集中していた。


「そっちに・・・行ってもいいかしら?」


 恥ずかしい。

いいトシした大人の女が。

そう静流は思う。

けれど、このままだと眠れそうにないのは確定だろうし、やっぱり琴音の言葉が引っ掛かる。

言わなければ変わらないし、伝わらない。


「こっちにですか?」


 返ってきた征樹の言葉には、驚きという意味合いは含まれてはないないようだった。

単なる事実確認。


「お願い。」


 甚だハシタナイと思うが、征樹と同じ布団に入るのは何も初めてじゃない。

・・・自分からこのように口に出した事はなかっただけで。


「・・・・・・どうぞ。」


 こんな事を言われると思っているはずもなかった征樹も相当に困っていたが、無下に断る理由もない。

もっとも、許可する理由もないと言えばない。


「ありがとう。」


 そう言われてから、しばらくして布団がめくられ、もぞもぞと静流が押し寄って来る。


(静流さんの・・・匂い・・・。)


 自分は匂いフェチか?と、馬鹿馬鹿しい考えくらいしか浮かんでこなかった。

心臓は高鳴っているが、やがてそれは安らぎに変わる。

よく魘されている自分を救ってくれてた、匂いと温度。

いつも辛い夢のを視た時には横にいて、優しく寄り添ってくれた静流だったから。


「それじゃあ、おやすみなさい。」


 何度目か感じる温もり。


「おやすみなさい。」


 こうして旅行最後の夜は更けていく。

次回、新章突入します。

次ぎは誰の話になるのやら・・・(トオイメ)


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