エピローグ「金色の麦畑で」
数年後。
かつて耕作放棄地だった場所は、見渡す限りの金色の麦畑へと変貌していた。
風が吹き抜けるたびに、黄金の波がさざめく。
その畔に、二つの人影があった。
たくましく成長したリアンと、より一層威厳を増したジェラルド。
そして、彼らの足元には、よちよちと歩く小さな子供の姿があった。
「パパ! 見て、虫さん!」
「ああ、元気な虫だな」
ジェラルドは子供を抱き上げ、高い高いをする。
子供はキャッキャと笑い声を上げた。
金髪に翠色の瞳を持つその子は、二人の特徴を色濃く受け継いでいる。
魔法による懐妊は奇跡に近いとされたが、彼らの愛と魔力の結合は、その奇跡さえも起こしてしまったのだ。
「今年も豊作ですね」
リアンが麦の穂を手に取り、微笑む。
かつて「破滅回避」と「平穏な生活」だけを願っていたモブ従者は、今や王太子妃(男)として、そして農業改革の旗手として、国民から敬愛される存在になっていた。
「ああ。お前が蒔いた種は、国中に実りをもたらした」
ジェラルドは子供を片手に抱いたまま、空いた手でリアンの腰を抱き寄せた。
「だが、俺にとって一番の実りは、お前との出会いだ」
「……恥ずかしいので、外でそういうことを言うのはやめてください」
「事実だ。愛しているぞ、リアン」
「……私もです、ジェラルド様」
二人は麦畑の中でキスをした。
風が祝福するように吹き抜け、麦の穂がサラサラと歌う。
かつての乙女ゲームのシナリオは完全に書き換えられ、そこには誰も知らない、彼らだけの新しい物語が続いていく




