10本の指(1月8日)2
彼女はレオめがけて煙を吐き出した。
昨日は眼球。
今日は指──。
まだ一本しか発見されていないものの、事件は前回と同じペースで進んでいる。
ならば明日は足の爪だ。
「な、何すんスか!」
レオがゲホゲホ咳き込む。
「にしても、何で爪なんスかね。足の指切断とか、いっそ足1本送ってきてもおかしくない残虐さなのに」
爪剥がすってとこが、また何とも……。
レオが顔を顰める。思わず想像してしまって、ガーネットも眉をひそめた。
「……やっぱり『シリアルK』かしらね」
「へ?」
状況証拠も操作能力も刑事の勘もクソもない。
『シリアルK』を中心に事件が起こっているのは間違いないのだ。
彼女が昨日宣言したように、あの中に犯人がいる可能性だって相当高いとみて良いだろう。
「アレじゃないスか? 前のストリッパーや、今回のラッパーのストーカーってとこで決まりなんじゃないスかね。ラッパーは昨日で店を辞めるって話だったんでしょ。しかも恋人と一緒に新天地へ行くなんて。それならいっそこの手で、みたいな」
「イヤね、気持ち悪い。怖いわね」
「先輩はどっちかって言うと、ストーカータイプっしょ? 付きまとう方。少なくとも被害者にはならないなぁ」
しれっとした顔で失礼なことを言う後輩の頭を、ガーネットはこれでもかというくらい強く殴った。
殴りながら、ふと思う。
あのピンク目のふざけた医者……ドクター咲良って言ったかしら。
一応調べたところ、本当に美容整形専門医として街に診療所を開いていると分かった。
麻薬クスリや武器の売人であり、そして──。
「ぶっちゃけ変質者よね」
今まで何度もストーカーや猥褻行為で捕まっている。
データを開くまでもなく、記憶の中だけで5件、6件……と前科が数えられる有様だ。
「とりあえず、奴を拘束するかしらねぇ」
「そんなアバウトでいいんスか?」
2人で「うーん」と唸った時だ。再び電話が鳴ったのは。
「ふぁい、ふぁい。そうっス……えっ!」
応対したレオが、今度は大声をあげて椅子から立ち上がる。完全に目が覚めた様子だ。
ガーネットも思わず煙草に噎せた。
「な、何よ。一体」
電話を置いて、レオがこちらに向き直る。
「証拠品……全部、盗まれたって……」
「証拠品?」
今回の『5』事件の証拠品なんて何もない。
犯人の手掛かりも、犯行現場すら分からないのだ。あるとすれば宅配の箱とか瓶とか。あとは……。
「まさか……?」
嫌な予感がする。
「ラッパーの眼球と、前回のストリッパーの心臓と指と爪と胸と眼一式っス」
「うそでしょ……」
責任の所在だとか、事の大きさだとか、処罰だとか減給だとか……。
不吉な考えが頭をグルグル回る。
「先輩がズサンだからっスよ。じ、自分は知らないっス」
「ア……アタシだって鑑識に預けて……」
オロオロした様子で2人は顔を見合わせた。
とりあえず、自分達のせいではないと互いに言い合って安心してみる。
しかしそんな事をしている場合じゃないは、明らかだ。
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