その目(1月7日)5
「ミツキといったかしら。最初の被害者」
それは先日殺されたこの店の従業員の名前である。
「これは公にはしていない情報よ。彼女の時も眼球が片方送りつけられたの。当時の同棲相手にね」
ブラッドが微かに唇を噛む。
「それだけじゃないわ。翌日には、指。しかも10本全部ね。3日目には足の爪。これも10枚。4日目には切断した左胸を送ってきたわ。そして……」
そこで樹楽がヒッと悲鳴をあげた。むきだしの両腕を抱えてブルブルと震えている。
「樹楽とミツキは同僚だったんだから」
「言い方ってものを考えてあげてよね」
双子が樹楽の頭や肩を撫でて宥めてやりながら、非難がましく刑事を睨む。
「そして、何? 5日目は?」
ドクター咲良が身を乗り出す。
こちらは恐怖や恐れよりも好奇心が強いか。
「5日目は、心臓よ」
吐き捨てるように言って、女刑事は煙草をもみ消した。
「毎日送られてきたの。受取人は恋人だったり友人だったり、街に住む兄弟だったり。送る方法も様々だった。小包だったり、庭に落ちてたり。5回とも違ったわね。あら、失礼」
突然鳴り響いた着信音に、実は自分も肝を冷やしたのだろう。
ガーネットが震える手で携帯を取り出した。そのまま背中を向ける。
「びっくりしたわね、ライム」
「心臓爆発したわよ、レモン」
息を詰めていた双子が大きく呼吸をして、互いに何か言い合うのが聞こえた。
その場の空気が僅かに緩む。
「大丈夫ですか、兄さん……兄さん?」
Kの声は掠れていた。
気が優しく、そして誰よりもカンナを愛している兄が、こんな話を聞いて平静でいられるとは思えない。
「カ……」
兄の暗い緑の目は、異様なくらい激しく震えていた。
「カンナの……」
「何ですか、兄さん。しっかりして下さい」
「カンナの心臓が送られてきたら……オレは、気が狂う……」
巨きな手が震え、カウンターの上のカップがカタカタと音を立てる。
「兄さん、考えちゃいけません。第一、あの眼が本当にカンナさんかどうか……」
女刑事の視線に気付き、Kの言葉が消える。ガーネットは電話を切った。
「残念だけど、あの眼球は99・85%の確率でカンナのものと判断されたわ。DNA鑑定の結果が出たのよ」
ブラッドが固く目を閉じる。手はポケットの中のビデオカメラを握り締めていた。
「カンナ……」
──カンナ、オレはどうしたらいい?
「さぁ、ゲームの始まりだ──。眼を送り付けて、犯人はそう言ってるつもりかしらね。遊んでるのよ」
ガーネットがさり気なくブラッドに背を向けた。
残された男が気の毒で見ていられないのか。
しかし、空気を読まない新米刑事が場の緊迫感を裂く。
「先輩、こないだ酔っ払ったとき上手いこと言ってたじゃないっスか。この事件にはメッセージ性があるんだわって。眼を送って『見えない』って。指で『触れない』イテッ、何スか! 足の爪で『逃げられない』で、乳房で『明日はこの下の心臓だ』ってこと。そして5日目が『GAME OVER』だって。アテッ! 何すんスか」




