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震駭のゴット・シュヴェルツェン  作者: コダーマ


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降夜(1月11日・2)2

 ゴルトの表情に微かな安堵が浮かんだのを見て、降夜は小さく呟いた。


「本ッ当、ついてねぇ」


 絶対に動く気なんてなかった。マフィアなんかと関わったらろくな事にならないと分かっていたのに。

 命の危険、何より面倒臭い事に巻き込まれるのは御免だった。

 なのに彼は今、激しく息を切らしてここにいる。彼女を探して全力で走って来たのだ。

 人の事は言えねぇ。僕だって相当のお人好しだ。


「グッ……!」


 どこからか飛来した弾丸が降夜の耳たぶを掠めた。

 咄嗟に頭を振っていなければ完璧に額を撃ち抜かれていたに違いない。

 流れ弾か? それともゴルトの命を狙って?


「こっちだ、ゴルト」


 銃をぶっ放しながら、とにかく彼女を引きずるようにしてその場から逃れる。

 射撃時に妙な呻き声が出たのは、銃の反動の少なさとブレにくさに驚嘆したからだ。ゴルトの言う通り、こいつは大した銃だ。


 そもそも利き手の小指というのは射撃体勢の中では意外に重要な役割を果たすもので。

 ハンドガン程の小さな獲物であれば尚の事。銃底を支える、あるいは薬指と小指を揃えてグリップを固定するという役割を果たす。


 降夜は左利きだった。小指がないせいで射撃は苦手だ。

 支えのない銃身は発砲の度に暴れ、狙いを逸らすのが普通だ。ほとんど無反動のこの銃にはそれがない。


「ミサ!」


 手放すのが惜しい気はしたが、そいつをゴルトに放ってやる。

 彼女は片手で受けて、複雑な表情をこちらに向けた。

 足元に横たわる部下達は完全に息絶えている。思いがけない再会を手放しで喜ぶわけにはいかなかった。


「貴様、釈放されたのか。クソ餓鬼が上手く交渉したようだな。何しにここへ来た?」


「あなたを助けにですよ」


 そのクソ餓鬼がうるさく言うから、なんて細かい事は言うまい。

 その真霧はヨタヨタ走りながら『黄金屋敷』前まで付いて来た。中まで入る勢いだったが、それだけは止めてくれと無理矢理追い返したのだ。

 警察に逃げ込むよう言ったが、もしかしたらまだその辺をうろついているかも知れない。

 ゴルトは一瞬目を見開いて、それから笑った。


「わたしを助けにか。真霧と貴様が……」


 声をあげて笑う。


「おいおい、すごい余裕だな。何笑ってんですか。状況見て物言ってくださいよ」


 周囲は火の海だ。足元の床だっていつ崩れるか知れない。

 助けに来たも何も、まず退路を確保しなければ共倒れになってしまう。


「心配するな、降夜。いざとなればわたしを差し出せ。残る部下も全員、それから貴様の命も助けたい」


 降夜は呆れた。気楽な調子で何を言ってるんだ、この女は。

 人の気持ちをまったく分かっていない。


「何のために僕がここに来たと? ミサの命令でもそれはできません。そもそも命令される筋合いだってないでしょ」


「……貴様、馬鹿だな」


「バカで結構。僕はミサを助けに来たんだ」


「な、なぜだ。わたしの命にはそんな価値なんて……」


 彼女は小さく首を振った。周囲の炎にきらめく黄金の髪がサラサラと音を立てる。


「……格好悪いな。普通ならここは敵の元へ乗り込むところなのに。やられっぱなしで、こんな風に終わるなんて……」


 手に馴染んでいたシルヴァー+クロイツが急に重く感じられたか、ゴルトは降夜の肩に頭を凭せかけた。

 この屋敷の中で部下が何人も死んでいるという事実が、彼女からいつもの傲慢と自信を奪っていた。


「わたしは一人だ。今、仲間は誰も側にいない。いや、元々部下たちに仲間ファミリーと認められてすらいなかったじゃないか……」


 肩に触れているミサの頬が色を失っていくのが分かった。降夜にも彼女の震えが伝わってくる。



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