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震駭のゴット・シュヴェルツェン  作者: コダーマ


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ミサ・ゴルト・クレーバー(1月10日・2)1

 美しい銀色の銃を右手に、女が立ち尽くしていた。

 割れた窓から吹き荒ぶ突風に黄金の髪を靡かせ、小声で何か呟いている。

 切れ長の目と長い睫毛が印象的な美貌。長く伸びた手足。肉感的な身体に纏った高価な毛皮の衣服。女の全てが、この部屋には異質だった。


 降夜と真霧を押しのけて、彼女は窓辺へとずんずん進む。

 思い出したように銃撃が再開されたと同時に、女の右手の銀が火を噴いた。


 音で分かる。小さなハンドガンのくせに、威力は絶大だ。

 無論、それを操る女の技術の程は言うまでもない。向かいと、それからその隣りのビルの屋上から人間らしき影がパラパラと落ちる景色を横目に、降夜は顔を引き攣らせた。


 この女は何者だ? 強盗? 何であれ、この女が厄介事を持ち込んだことだけは確かだと確信出来る。


「ああ、わたしだ。死体処理を頼む」

 突然彼女が声を張り上げたものだから、真霧がビクリと全身震わせる。

 黄金の女はこちらを見ようともしない。よく見れば左手に携帯電話。

「黙れ。わたしはボスだ! ああ、予定通りわたしは暫く姿を消す。考えがあるんだ」


 ──戦争が始まるぞ。


 恐ろしげな台詞を吐いて、女は一方的に電話を切った。

 左手をポケットに、それからまじまじと右手の銀に視線を落とす。


「さすがに良い銃だ。感触が全く違う。この小ささ(サイズ)で装填数36発。フル・オートマチック連射可能で、まるで小型の小機関銃(サブマシンガン)だな。しかも威力のわりに反動コレイルが少なく、命中精度も高い」


 マニアックな事を言いながら、派手なコートの下のホルダーに銃を装着した。


 それからだ。初めて気付いたように、ちらりとこちらを見やったのは。


「わたしは地位のある人間だ。だから、こうやって狙われる」


 開口一番、傲慢な口調で女はそう言い切った。


「な、何だよ。この女ァ」


 小声で降夜は呟いた。何て奴だ。やっぱりこの馬鹿派手な女が狙撃者を引き連れて来やがったんだな。ジロリと睨むも、彼女に応えた様子はない。


「しかし酷い有様だな」


 窓硝子も全て抜け落ち、壁中穴だらけの部屋を見回し蔑むように呟いた。


「だ、誰のせいだと思ってるんだ。お前が……ガッ!」


 叫んだ口に黄金女の右手の銀が突っ込まれる。翻るような瞬時の動き。

 何なんだよ、この女。ヤベェ……。


 あてにはしていないが、この場で唯一頼れる存在の真霧を横目で見ると相変わらず小型犬のように目を見開いて全身プルプル震えている。

 こりゃダメだ。諦めて降夜は肩を落とした。


「余所見をするんじゃない!」

 喉の奥に銃口を押し付けられ彼は噎せる。

「二度とわたしをお前とか、女とか呼ぶんじゃない! 分かったか!」


 コクコク。情けない姿だが口を開けっぱなしの為、涎を垂らしながら降夜は頷く。


「わ、分かった。分かったから……放し……」


 口から出るのは嗚咽にも似た情けない懇願。女は降夜に顔を近付けてニヤリと笑った。簡単には抜いてくれそうにない。


「たずけっ……ゲッ!」


 突然頬を張られ、降夜は呻いた。

 銀銃は右。もう片方の左手に、女は今度は札束を握り締めていたのだ。それで降夜の頬をバシバシ叩く。


「やめろったら!」


 突然、何故こんな仕打ちを受けなきゃならない? やたらゴージャスなこの女の笑顔が不気味だ。


「わたしをガードしろ。要求はそれだけだ」


 そう言って、彼女はようやく降夜を開放した。床に座り込んでゴホゴホ咳き込む彼に、真霧が駆け寄って来る。


「降夜さ……、だいじょ……ぶ?」


「大丈夫……ゴホッ。じゃねぇ……ゴホ!」


 そんな2人を見下ろして、女はもう一度ゆっくり言った。


「わたしは狙われている。だからガードをしろ。貴様、ボディーガードだろうが」


 派手なパフォーマンスの依頼、と考えるべきだろうか。確かに彼の本業はボディーガード業だ。しかし、どうだろう。とっさに口をついて出た。


「あんたにガードは必要ねぇ!」

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