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震駭のゴット・シュヴェルツェン  作者: コダーマ


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死の色彩(1月10日・2)2

 叫んだ瞬間、パンという軽い銃声。背中に衝撃。

 撃たれたと悟った瞬間、上体が崩れる。

 ライムは立ちあがり、ブラッドの巨体を床に蹴り倒した。


「大丈夫? ライム」

「行こう! レモン」


 今度はレモンに蹴られ、ブラッドは体を折り曲げて悲鳴をあげる。

 撃たれた背中をヒールで抉られ、全身に激痛が走ったのだ。


「待て……」


 裏口の扉が開く音が聞こえた。

 双子が出て行ったのだろう。

 ブラッドはふらつきながら起きあがり、冷凍庫から転がり出る。急に空気が常温に戻り、背中の傷口が焼け付くように痛んだ。


 逃がすわけにはいかない。

 裏口へ駆け、路地裏へ飛び出る。


 双子の名を叫ぼうと口を開けかけたとき、今度は右足に熱が走った。

 カクン、と重心が傾いで巨体は地面に叩き付けられる。


 背後からレモンが近付いてくる。

 その銃口からは硝煙が立ち上っていた。

 再び撃たれたのだと、ようやく気付く。


「あたしたち、マフィアに銃器を流してるのよ。それなりの腕は持ってるわ」


 もう一度、引金を引く気配。

 小さな銃声と共に、今度は左足腿を撃ち抜かれる。衝撃で大きく跳ねた巨体は、最早ぴくりとも動かずその場に倒れ伏していた。


「……こいつ、失神したのかしら」


 この短い時間で3発も撃たれたのだ。急所は外れているとはいえ、ショック死してもおかしくない。


「やめなさい、レモン。危ないわ」


 ライムの静止を聞かず、片割れはブラッドに近付いた。


「あたしの銃のウデは知ってるでしょ。ライム、大丈夫よ。ほら、失神してる……きゃっ!」


 巨体の腹を蹴った瞬間のこと。レモンの体が傾いだ。

 剥き出しの足首をつかまれたためだ。


 死んだ振りでもしていたかのようにブラッドが飛び起きる。

 レモンの足を取ると、そのまま地面に押し倒して銃を奪った。不自由な両手で、それでも彼がハンドガンを構えた瞬間。

 今度は腕に焼け付く痛み。


「レモン、早く離れて!」


 背後からライムに撃たれたのだ。

 今度こそ、大男は地面にのた打ち回る。せっかく手にした銃も落としてしまった。


 すかさず銃を蹴り飛ばしてから、レモンが立ちあがる。

 危ない、危ないと口の中で呟きながら、ポケットから大振りのボールペンを取り出した。


「これも小型の銃よ。武器なら売るほど持ってるから」

「馬鹿なブラッドは相変わらず振り回されっぱなしね」


 からかうような調子で2人は声を合わせた。

 地面に転がる大男を見下ろす彼女たちの視線は冷たい。


「失敗したわ、ライム……」

「失敗したね、レモン……」


 1発ずつブラッドにぶち込んでから、彼女達は顔を見合わせた。


「ミツキは胸が大きかったから切りやすかったけど、カンナはないから切るのが難しくて」

「冷凍庫の中で苦心惨憺してたら、欲深店長(マスター)がカニを独り占めしようって入って来るから」

「しかも血に気付いてパニック起こすんだもの。小心者とは思ってたけどここまでとはね」


 そこで2人はクスッと笑う。

 ストリッパーの遺体もカンナもあの冷凍庫に隠していた。

 ウエイトレス兼厨房手伝いをしている自分たち以外であそこに入るのは店長くらいだが、彼はどうせ手前の方しか見ない。

 凍っているから血や死臭も殆どないし、隠し場所としてあそこは盲点だったと言えよう。

 切断面が鋭かったのは、軽く凍らせたところを大包丁でズバッと叩き切ったからだ。


「うぅ……」


 ブラッドは呻いた。

 双子の会話で徐々に感じてきた。カンナが死んだのだという事実に。

 でも今助けを呼べば……。いますぐ病院に運べば彼女は助かるかもしれない。


 未だ希望を捨てずに起きあがりかけたブラッドを未練がましいと感じたのだろう。

 双子は無表情でその足首を撃ち抜いた。


「全部狂ったわ。あたしたちのカンナは明日まで生きてるはずだった」

「あんたと弟と、あと可哀相だけど樹楽にもトドメをささなくちゃね」


 それから顔を見合わせ、互いの銃口を見つめた。


「あたしたちも、ちょっと怪我して発見されなくちゃ」

「あたしたちが黙ってても、犯人はあんたにされるわ」

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