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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第一章 完璧にサポートしてみせます

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乙女ゲームのヒロイン 2

 私は嫌な予感がしていた。


 窓の外で行われている一年生の剣術の授業を横目に眺めながら、込み上げてくる不安を押し殺す。自分の表情筋が仕事をしないことに、これほど感謝したことはない。


 教室では一般教養の授業が行われている。昼時の陽気な気候に半分ぐらいの生徒は必死に眠気と戦っている。窓際の席に座る私にも温かな陽光が眠気を誘うが、それどころではなかった。


 窓の外では一年生たちが、ライオネルの剣術の指導を受けている。彼は落ち着いた威厳をたたえながら、生徒たちに剣術の基礎を教えている。鋭い眼差しと熟練の動きで、生徒一人ひとりに丁寧に教示を与える様子は、見ているだけで感嘆してしまうほどだった。


 その中でひときわ異彩を放つ──というか、剣を握ったままじっと固まっているヒロイン──リナ・ハートがいた。

 ここは、ゲームにおけるライオネルとの初イベントシーンだ。ゼノとの授業シーンと同様、剣の構え方を指導するライオネルにリナが頬を染め、照れながらも剣を構える……という場面になるはずだった。


 ……のだけれど。


 リナは剣を握りしめて動かず、木剣をじっと見つめたままだ。さすがに気づいたライオネルが声を掛けるが、彼女は聞こえていないかのようにプルプルと震えながら木剣を突き出している。


 デジャ・ブ? 最近こんなシーン、どこかで……


「おりゃぁぁぁぅ!!」


 三階にあるこの教室まで響く音量で雄叫びを上げるリナ。彼女は全力で木剣を振りかぶり、振り下ろした。勢いは十分だが、剣の型はめちゃくちゃで、振り下ろした木剣がその場で不格好にぐらついた。


 あ、ライオネルが固まっている。いや、むしろ引いている。


 ヒロインらしからぬ形相で剣を振るう彼女に、周りの生徒はもちろん、この教室で眠気と戦っていた生徒たちまで何事かと窓から外を覗き込んでいる。他の部屋からも次々と生徒が顔を出していた。


 私はそっと顔を伏せた。


 あかん、これダメなヤツ。


 やはり、私の予感は当たっていたのだ。このヒロイン、ポンコツステータスの持ち主に違いない。


 ゲームのシステム上、ヒロインの初期ステータスはランダムで決定される。始めから高い数値で楽に進められるパターンもあれば、逆に低すぎて苦労するパターンもある。プレイヤーは最高のステータスを引き当てるためにリセット&マラソン、通称リセマラを繰り返す。

 そして、その中でも最低最悪のステータスを引き当てると「ポンコツステータス」が付与される。すべての能力が最低値、イベントがことごとく失敗するという地獄の設定で、マゾヒストなプレイヤーでなければ即リセット必至のパラメータだ。


 まさかとは思っていたけれど、初イベントすら成功しないなんて。これでどうやって攻略キャラと絆を築けというの!? まさに無理ゲー……


 だがしかし、ここで諦めてしまえば世界が終わる。つまり、私の未来もない。


 私はこの無理ゲーを攻略すべく、心の中で決意する。


 この高難易度をクリアして、なんとしてでもヒロインを幸せに導いてみせる──私の命がかかっているのだから。

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 完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない
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