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完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない  作者: Kei
第三章 建国祭はフラグ祭り

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建国祭に行こう 1

 建国祭二日目。

 王国記念式典を無事に終え、自由を手に入れた私は、リナと共にフラグ回収の旅へ出る準備を整えていた。


 ──昨日は、本当に散々だった。


 「王妃の祈り」で王妃殿下に国花を献上するだけのはずが、なぜかアレクシスの謎の行動により、王族のお披露目にまで引っ張り出されてしまった。

 本来ならバルコニーの入口付近で王妃殿下に花を手渡し、ひっそりとその場を離れるだけの役目だったのに──

 結果的に、国民の前で王族のように振る舞う羽目になった。


 当然、式典後の晩餐会では「未来の王妃の座を確約された公爵令嬢」として、周囲の視線が痛いほどに突き刺さった。

 私はアレクシスの婚約者であることに違いないが、正直、それは“名ばかり”の関係だと思っている。

 おそらく、国王陛下や宰相である父が、アレクシスに危機感を持たせるために仕組んだ仮の婚約。

 その証拠に、ゲームのアレクシスルートでは、私はあっさり婚約解消され、ヒロインが彼の隣に立つことになるのだから。


 ──それなのに、どうして昨日のアレクシスはあんなに私を振り回したのか。


 晩餐会でも妙に距離が近く、終始彼に絡まれていた気がする。

 その度にルークが間に入って牽制してくれたが、二人の間に火花が散っていた気がするのは気のせいだろうか。

 ──いや、本当に。頼むから巻き込まないでほしい。


 私は忙しいのだ。これからリナを連れ出して、攻略キャラたちとのフラグを回収しなければならないのだから。


 建国祭の二日目以降は、貴族も平民に混じって祭りを楽しむのが通例だ。

 格式ばった正装から離れ、平民に近い装いで街へ繰り出し、彼らと交流を深めるのが恒例となっている。


 私は侍女のエミリアに頼んで、動きやすい服装へと着替えた。

 市民の中に溶け込めるように工夫したつもりだったが、鏡の中のクラリスはやはり少し目を引く。

 漆黒の髪を簡素にまとめただけでも、その美しさが際立ってしまう。


「エミリア。もう少し目立たないようにできないかしら?」

「不可能です。クラリス様の美貌は、どう取り繕っても隠しきれません」


 さらりと断言され、私は鏡越しにため息をつく。


「……なんだか、自分で聞いてて恥ずかしいわね」

「事実ですから」


 有能な侍女の言葉に、私は観念するしかなかった。


 支度を終え玄関に向かうと、そこにはいつもよりラフな装いのルークが立っていた。

 緑がかった金髪はさらりと整えられ、落ち着いた深緑のジャケットがすらりとした体に映えている。普段の制服姿も様になるが、こうしたカジュアルな姿もまた似合う。


 ──正直、かっこよすぎる。全国の年下好きが泣くレベルだ。

 ……いや、ヒロインにとっては同級生か。


 ルークはこちらに気づくと、少し目を見開き、すぐに爽やかな笑顔を浮かべた。


「よく似合ってるよ、姉さん。でも……ちょっと綺麗すぎて目立っちゃうかな」


 そういう台詞をサラッと言えるところが、末恐ろしい。将来が心配になるほどだ。


「ありがとう。あなたも準備は万端のようね」


 今日はリナだけでなく、ルークも一緒に建国祭を回る予定だ。


 建国祭におけるルークのフラグは、ヒロインと並んで祭りを巡ることにある。

 リナと同じクラスの同級生という立場であるルークは、最もわかりやすく、かつ鉄板の攻略ルートだ。


 リナとルークの時間を邪魔しないよう、私は適度に距離を取りつつ、合間に他の攻略キャラとのフラグもしっかり立てていく。今日一日でやるべきことは山積みだ。


「じゃあ、行こうか。姉さん」


 ルークが自然に手を差し出し、私の手を軽く取る。そのまま、何事もなかったかのように歩き出した。


 ──いやいやいや。待って、マイブラザー。


 あなたが手を取るべきは、私ではなくリナのはず。

 しかもこれ、イベントスチルになるやつじゃないの。


 混雑した人々の中、手を繋いで祭りを巡る二人のスチルが、脳裏によぎる。


 ──まだ建国祭の会場に着いていないのだから……ギリギリセーフ、かしら?


 馬車に乗り込むまでの間だと自分に言い聞かせて、私は繋がれた手を振り払うのを諦めた。

次回は2/19(水) 19:00更新予定です。

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 完全無欠の悪役令嬢はポンコツヒロインをほうっておけない
― 新着の感想 ―
ルークが好きすぎますw 一線を越えそうな危うさがいい
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