始まりの朝
俺はこの春から高校に進学。
これを機にアパートを借りて、一人暮らしを始めた。
両親は、中学一年生の夏に事故で他界。父の弟である叔父さんの家に住まわせてもらっていたが、俺と同じ歳の叔父さんの娘もいて、居心地も良くないので、独立させて貰う事をお願いした。始めは、心配して引き留めてくれたが、最後は俺の気持ちを尊重してくれて許してくれた。
幸い両親はそれなりの遺産を残してくれていて、俺が一人暮らしして大学を卒業する位までの金銭は十分にあった。
「真一君!早く起きて!!」蘭の声がする。同事に腹部に重みを感じた。
「まだ、寝たい……って、お前!なぜ、この部屋にいるんだ!?」彼女は叔父さんの一人娘、大林蘭であった。
「一人暮らしで、学校に遅刻しないか起こしに来たのよ!」制服姿で布団越しに、俺の体に股がる彼女は、ニヤリと笑った。
「どうして部屋へ入ったんだ?!鍵は……」俺がそこまで言うと、蘭はスカートのポケットに右手を差し込んだ。
「たまに様子を見に行くようにって、合鍵貰ったのよ」彼女は勝ち誇ったように鍵を見せた。
「様子って……」正直、家を出たいと思ったのは彼女のこの無防備な行動に付いていけないところも一因であった。
小さい頃から、家が近く半分兄妹のように育ったせいか、俺を男として意識していない。風呂を出た後も、ほぼ半裸のような状態でリビングでくつろぎ、俺の居場所を奪う事など日常茶飯事であった。
「鍵を持ってるからって勝手に入ってくるなよ。ちゃんとノックするなりピンポン押すなり……」思い出してみれば、俺の部屋にも予告無しに飛び込んでくる事も多々あったような気がする。
「いいじゃん!私達の仲なんだから。それよりパン焼いてあげるから、早く着替えなよ!遅刻するよ」その言葉と同時に目覚まし時計のアラームが鳴る。俺は寝起きが良いほうなので、この音で起きていた筈である。彼女はまるで自分の家かのように、冷蔵庫や棚を開けると、卵やパンを取りだして朝食の準備を始めた。
「はあ……」もう俺の口からは、ため息しか出て来なかった。