どうやら俺は二股しているように見られているらしい。
新大久保ではタッカルビ、原宿ではスイーツを堪能した後、俺たちは秋葉原に行く事になった。
時刻は2時を過ぎていた。
再び山手線に乗り込む。
先ほどと変わらず人の量は変わらないというか、むしろ増えている。
人波に飲まれながら一番線のホームに着いた。
一分もせずに来る電車、これだけは本当に便利だ。
そう思いながら人の列について行き、電車に乗り込む。
俺の腕には頬を膨らませ拗ねている心々音、そしてなぜかみるくも引っ付いていた。
満員電車の荒波に抵抗しながら揺られる。
原宿から秋葉原は10駅以上離れている。
座る事が出来れば良いが、この状況。
座る事なんてまず不可能に近かった。
腕を開放してもらいつり革に腕を伸ばす。
痴漢冤罪が多発する昨今、俺は片手でつり革を掴みもう片方の腕でスマホを握ろうとしたが人が多すぎて腕を上手く動かせない。
仕方が無いと思い、つり革に手が届いていない様子のみるくの手をそっと握った。
「秋葉原~秋葉原~、ご乗車ありがとうございます」
ぞろぞろと出ていく人々、それに押し流されるように電車から降りた。
アナウンスが耳に入って来て秋葉原に着いたと分からせてくれる。
電車内は人が多いせいか、とにかく暑い。
クーラーなどは入っているのだろうが、人が多すぎてクーラーの冷風が負けてしまっているのだろう。
それに移動中、席に座る事は一度も出来なかったので足腰が特に痛い。
運動していればまだ変わっていたのかもしれないが、俺は帰宅部。
運動なんてしてるわけない。
「ふう、暑かったですね」
「まじ人ヤバい」
「……りょーくんのバカ」
「お前はいつまで拗ねてんだ?」
「へぶっ」
みるくに軽いチョップを加えたところで、心々音が歩き始めたので俺はついて行く。
ホームから出て、駅構内に来たらしい。
原宿や新大久保の人たちと比べると、こうなんと言うか服装が質素な人が多く見られた。
別にバカにしているわけじゃない、それこそ俺のファッションセンスだって心々音やみるくに指導してもらって無かったらこれぐらいだったと思う。
そう思うと、二人には本当に感謝しなければ。
心々音は慣れたように道を進んでいきあっという間に外に出た。
赤色で染められた大きなビル、アニメの看板が飾られているゲームセンター、ゲームの宣伝なのか【サランティックセレクション、10月12日発売!】とでかでかとビルに映像で映し出されてたりしている。
流石、オタクの町と言った所だろうか。
「ふっ、私のオタク脳がくすぐられるぜ……」
「急なキャラ変どした」
「やっぱアキバは最高だよなぁ……」
「ごめん、着いていけんわ」
「あー、ちょっと待った。ごめんね?私の彼氏くん」
「なぜそうなる、てか抱き着くな」
「ぶぅ~、つれないな~」
「あ、ちょっと心々音ちゃん!抜け駆け禁止!りょーくん腕貸して!」
「もうやだ」
両手に花、そう言えば羨ましがる人は多いかもしれないが本当に面倒臭い。
そもそも、一気に二人の相手をするというのはとんでもなく難しい事。
常に両者の意見を尊重しつつ、相手の質問を覚えておかないといけない。
みんな、一番良いのはお互いが愛し合う相思相愛だ。
それを覚えておいてくれ。
「てか行きますよアネメイト」
「どこだそれ」
「アニメのグッズが沢山置いてあるところです」
「なるほど」
結局俺は二人に抱き着かれながら移動する羽目になった。
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えーっと、周りの皆さん。
特に男性の方、どうしてこちらを見るのでしょうか。
さっきから視線が凄い、めちゃくちゃ見られてる。
こいつらって高校でも人気は凄いけど、東京でも顔面偏差値は高い部類に入るのか?
となると俺は完全に二股しているクズ男。
そう捉えられているに違いない。
それに、女性からの視線はどっちかって言うと二人ではなく、俺に向けられている。
自意識過剰なだけかもしれないが、俺よりも身長の低い二人を見るなら普通はもう少し下の方をみるはずだ。
それなのに、なぜか俺と目が合う。
それに、目が合ったら合ったでなぜかひそひそ話し始める。
なんだこれ。
俺は早く離れてほしかったが、二人とも離れる気は微塵も無いはず。
俺はこの視線に耐えなければならないのか、憂鬱だ。
「あ、着きました」
心々音が指さす方には青く染められた看板で中央に「AneMate」とデザインされた文字が入っていた。
心々音に引っ張られ俺とみるくは店内に入った。
東京観光一日目、長々と延ばしてしまいすみません。
一日目を詳しく描いて、二日目と三日目は短く終わらせる予定ですのでもう少しお付き合いください。
お願いします。
あと時間が取れなくて少し短くなってしまいました、次回はもっと書きます。