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どうやら俺は鈍感らしい。

 心々音に「ここで待ってて」と少し強めな口調で言われ、俺はプリクラ機の中で待機している。

 俺自身、プリクラという物を撮ったことが無い。

 やったことがあるのは、写真を撮る時にエフェクトが出るスマホの写真アプリぐらい。

 お金が投入されたのかプリクラ機が動き始める。

 しかし、心々音は帰って来ない。

 

 「次は写真撮影だよ!」

 

 少しして、プリクラ機から声が聞こえた瞬間心々音が帰って来た。

 

 「よし、設定終わった」

 「プリクラ初めてだから、何が何だか全然分からん」

 「ふふっ、そんな感じするもん」

 「おちょくるな」

 

 「好きなポーズを取ろう!」とプリクラ機から声が聞こえると、心々音は両手で顎を押さえ俗に言う小顔ポーズをした。

 それに合わせるように俺も小顔ポーズをする。


 「ぷっ、涼真くんがそのポーズって……あはっ、面白い……」

 「二度も笑うな」

 「あ、ほら撮影終わりましたよ。次のポーズしましょ!」

 「あ、ちょっと」


 今まで俺と心々音が表示されていたのに、急に画面に文字が出てきた。


 「彼女さんは彼氏さんの腕に抱き着こう!」


 えーと、なんですかこれ?

 心の声が漏れそうになったが、本当に何なんだこれは。

 これがプリクラという物なのだと俺は心の中に言い聞かせた。


 「えーと……」

 「ほら、プリクラ機が言っているんです。早く腕を出してください」

 「……」

 「早く!」

 「……はい」


 俺は渋々腕を差し出し、心々音は少し恥ずかしそうに飛びついてくる。

 狙っているのか知らないが、胸が、胸が当たってます、心々音さん。

 「心々音、胸当たってるぞ」なんて大胆な事は言えず、俺はひたすら悶えていた。


 「じゃあ、次のポーズに行こう!彼氏さんは、彼女さんの後ろにまわってバックハグをしよう!」


 オーマイガー、なんだこのお題はふざけてんのかな?

 

 「ほ、ほら涼真くん、後ろに行ってください」

 「行けってなぁ……お前は良いのか?俺で」

 「い、いいですから……早く……」


 心々音は照れているのか恥ずかしいのか分からないが下を向きボソボソと喋っている。

 心臓の脈拍が速くなっているのが分かる。

 ドキドキが止まらない。

 本当にしてしまって良いのか、俺と心々音はカップルじゃないのに……不思議な気分、それなのにドキドキしてしまう。

 俺は何も考えないようにして、心々音に問いかける。


 「じゃあするからな」


 心々音は小さく首を振った。

 俺はそれを確認して心々音の後ろに行き、首辺りから腕を回し心々音を抱きしめた。

 回した腕を心々音は受け入れるように優しく両手で握った。

 天使の羽のように白く、力を入れたら折れてしまいそうな細い指、整えられた爪、じんわりと伝わって来る体温によって俺の心臓は悲鳴を上げていた。

 こんなの、耐えられるわけがない。

 早く、早く終わってくれ。

 俺はそう願うしか出来なかった。

 

 シャッター音が鳴り、プリクラ機から「撮影は終わりだよ!隣のブースに移動しよう!」と声が聞こえてくる。

 しかし、心々音は俺の腕を離してくれない。


 「おい、心々音」

 「……なに」

 「撮影終わったって言ってるぞ?」

 「……うん」

 「ほら、移動するから腕を離してくれないか?」

 「……もうちょっと、もうちょっとで良いから、少し待って……」


 俺の心臓は爆発しかけている、それなのに待てとなると死亡確定みたいなものなのだが。

 俺が強引に抜こうとしても、ぎゅっと力が加えられる。

 なんだかこの光景に俺は既視感を覚えた。

 小学生か幼稚園の頃、何か似たような光景があったような。


 「ごめんね、もういいよ」

 

 心々音は掴んでいた手を離した。

 

 「あ、うん。大丈夫か?何かあったのか?」

 「いや、何か涼真くんの腕はあったかいんだなって」

 「……意味が分からん」

 「気にしないで。それより、早く移動しないと!」


 心々音はプリクラ機から出ると隣のブースにそそくさと移動してしまった。

 心々音を追い、隣のブースに移動すると心々音は器用にタッチペンを使い画面を操作していた。


 「うし、デコりますか!」


 さすが現役JKと言った所だろうか、全ての手順を把握しているのかすでに完璧な自分の顔を加工したり、周りを色のついたペンで可愛くしたりしていた。

 操作が分からない俺もタッチペンを握り、いかにもデコしてる風を装う。

 

 「涼真くん、ほんとにプリクラ撮った事無いんだね。動きがぎこちない」

 「ふん、俺は嘘をつかないからな」

 「そっか、じゃあさっき助けてくれた時、彼氏って言ってたのも嘘じゃないって事?」

 

 おう、キラーパスが飛んできた。

 確かに嘘をつかないと言ったし彼氏とも言ってしまった。

 

 「前言撤回だ。俺は嘘をつく嘘つき人間だ」

 「ふっ、何それ」

 「笑うな、あの時凄く怖かったんだからな!」

 「ふーん、そっか。私は嬉しかったけどなあ」

 「男として当たり前の事をしただけだ」

 「ほんと面白い人。だけど、また助けられちゃったな」

 「また……?」


 俺が過去に心々音の事を助けた事があっただろうか。

 俺は真剣に考えてみるが、心々音と仲良くなってからあったイベントと言えばオフコラボとカラオケぐらい。

 確かにカラオケに関してはかなり手助けをしたようなものだが、今回のように危機から助けてあげた!みたいな助けでは無かったはず。


 「あ、えっと……気にしないで、こっちの話」


 俺が聞き返しても心々音ははぐらかすだけ。

 俺が不思議に思っていると、いつの間にかデコレーションタイムが終わっていた。


 「あ、ほらこっち来て!」

 「おい、まてぃ」

 

 心々音に腕を引っ張られ移動すると、プリクラが印刷されて出てきた。

 

 「ははっ、面白い」

 「なんだこれ、お前めっちゃ照れてるじゃん」

 「そういう涼真くんこそ、顔凄い事になってるけどね」

 「ぐっ……あんなポーズ要求されてお前みたいな可愛い女子にバックハグして照れない男子なんてこの世にいるか!」

 「……せこ」

 

 心々音は頬を膨らませて、俺の脇腹に一発グーパンを入れてきた。


 「いって、なにすんねん」

 「涼真くんが鈍感だから悪いんですぅ~」

 「鈍感って……俺、何かしたか……?」

 「気づけよ、この鈍感男!」

 

 心々音は再度、俺の脇腹に一発かました。

 

 プリクラ機の隣に設置されているプリクラコーナーに行き、心々音は店員からハサミを借りると撮ったプリクラを半分に切り、片方を俺に渡してきた。

  

 「はい、人生初めてのプリクラが可愛い女の子と二人で撮れて良かったね」

 「自分で可愛いって言うのか……」

 「事実だから良いんですぅ~、涼真くんも可愛いって言ってくれたし……」

 「まぁ、確かにそうだが。お前は可愛いからな」

 「……うざっ」

 「なんで!?」


 時刻は2時過ぎ、意外と時間が過ぎていたがすごく楽しくて、とても充実出来た。

 

 「この後涼真くんは暇ですか?」

 「ああ、今日は特に用事は無いな」

 「じゃあご飯食べに行きましょ、お腹が空きました」

 「おっけ、どこ行く?」 

 「私、デザートが食べたいです。あ、最近できたデザート食べ放題のお店に行きましょう!」

 「了解、それでどこにあるんだ?」

 「確かすぐこの近くだったはずです、北野駅の近くだったような……」


 心々音がスマホを使い、場所を調べている。

 

 「あ、分かりました。4丁目の上の方ですね」

 

 近くだったのでバスも使うことなく、心々音の行きたいというお店に向かう。

 

 少し歩き、4丁目まで来た。

 そこで心々音が急に俺の腕に抱き着いて来た。

 どうして俺は毎回抱き着かれるのだろうか。

 みるくと言い今度は心々音さんですか、誰か助けてください。


 「いきなりなんだ」

 「いいじゃないですか、彼氏なんだし」

 「あれは嘘だと言っただろ?」

 「私には嘘だという風に聞こえませんでした」

 「なんでや、意味わからん」

 「まぁまぁ、いいじゃないですか。今日はみるくちゃんもいないですし」

 「もう、わけわからん……」


 俺は呆れながら心々音と歩き、心々音の言うデザート食べ放題の店に来た。

 しかしそこで俺を待っていたのはとある看板。

 

 「今日はカップルの日!カップルしか食べられない!?限定のデザートあります!」


 もうダメだ、今日は心々音の彼氏になるしかないのか。

 嫌でも今はそう思ってしまう。


 

この展開、長くなりそうです。ごめんなさい。

でも、せっかく心々音と二人きりになったんです!もう少し見守ってください!

はい、次回はデザート食べるし、意外な人間と出会うかもしれないです。私はショートケーキが好きです。

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