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どうやら父は俺のやろうとしている事を認めてくれたらしい。

 家に帰って来た俺はすぐに脱衣所に向かい、風呂に入った。

 今日あった事を思い出して振り返ってみると色んな事があったなぁと風呂に浸かりながらしみじみ思った。

 みるくの気持ち、謝罪配信、心々音の二つの告白、すべてに翻弄されて「人生で一番疲れた日はいつですか?」と聞かれたら今日と答えられる自信がある。

 「ふぅ~」と息を吐き、湯船に口元まで浸かった後、ちゃちゃっと体を洗い風呂からでた。

 風呂からあがると母親がいた。

 どうやら丁度仕事から帰って来たようで、アイロンをかけされていないシワシワになったYシャツを脱ごうとしていた。


 「あんた、帰って来たのね」

 「ああ、悪いかよ」

 「別に。くるみちゃん……どうだった?」

 「いつも通りだったよ」

 「でも――」


 母親と話すのが気まずくて俺は上着とズボンを持ち、履きかけのパンツを急いで履いて逃げるように脱衣所から出た。

 リビングに新聞を読んでいた父に話しかけられたがそれも無視して自室に逃げて来た。

 母親と話さなくなってから、なぜかは分からないが父親とも異様に気まずくなってしまった。

 父は母に気に掛ける事も無く、いつも通り母と話している。

 その光景が、俺には辛く見えてしまっていた。

 それこそ、みるくと同じくいつも通りの事がいつも通りではなくなってしまった、そんな感じがする。

 

 ベッドに倒れ込み、スマホに保存されている時間割の写真を見る。

 一時間目は国語から始まり、保健、家庭総合、数学、化学、世界史という時間割だった。

 よくよく考えてみると、みるくは時間割の写真も持っていないしグループLIMUにも入っていない。

 いきなりグループLIMUに入れるのは他のクラスメイトも混乱してしまうだろうと思い、とりあえず時間割の写真だけみるくに送った。


 「これ時間割だから」

 「あ、助かる!丁度聞こうと思ってたんだよね~」


 みるくから「thank you!!」と泣きながら言っているアニメのスタンプが送られて来たので、「何か困った事あったらまた連絡してくれ」と送り、スマホを枕元に投げた。

 

 まだ9時前でいつもなら日課のHEROXをするところなのだが、疲れのせいか今日はそのまま寝てしまった。


 ~~~


 軽快でいて尚且つ爆音でかかっている音楽で俺は目覚めた、気分は最悪と言った所だろうが。

 しかし、良く寝れたせいか体調面はとても良い。

 スマホのアラームを止めて時間を確認すると、今は6時ちょっきりとの事。

 電車が来るのは7時20分頃なのでちゃちゃっと準備してみるくを迎えに行こうと思い階段を下りた。

 リビングに行くとまだ誰も起きていないようで明かりは点いておらず、カーテンからうっすら差し込む光が眩しく見えた。

 軽い足取りでカーテンを開け、キッチンに行き冷蔵庫から冷凍食品の一口ハンバーグと枝豆、そして封の開いたもやしを取り出した。

 俺は朝ご飯を自分で作っている。

 別にイキってるからとかじゃなくて、父は6時30分頃には家を出るし母も朝ご飯を作るので精一杯と言っていた。

 だから、母親に「高校入ったら自分で弁当は作る!」と中学3年生だった俺は母親にそう言った。

 まぁ、寝坊した時は購買に頼るけどね。

 

 今日のメニューは至って簡単な冷凍食品を使ったもの。

 俺はハンバーグと枝豆を電子レンジに入れ、取り出したフライパンを軽く熱した後ごま油を敷いてその上にもやしを入れた。

 1分程炒めたところでもやしをボウルに取り出し、その中に白ごまを加える。

 軽く混ぜたところでもやしのナムルは完成。

 レンチン出来るまで時間があるので、その間にご飯ジャーから白飯を弁当箱に詰めてナムルも他のおかずとくっつかないようにアルミホイルの容器に入れて弁当箱に盛り付けた。

 「ピーピー」と電子レンジが鳴ったので、中からハンバーグと枝豆を取り出して、こちらも弁当箱に盛り付けた。

 最後に風呂敷に包んで、弁当は完成した。


 弁当箱をケースに入れ、リュックの隣に置こうとしたところリビングの扉が開いた。


 「お、涼真。今日は早起きだな」


 寝間着姿の父が眠そうに起きて来たようだ。

 30代の頃の写真を見せてもらったことがあるが凄いイケメンだった事を覚えている。

 そんな父も今年で56、写真と比べたら老けはしたがその老けがハマっていて、所謂イケオジになっている。

 そんな父だが、今日は様子が違った。

 手には何の紙かは分からないが一枚の紙が握られていた。

 俺が「何その紙?」と聞くと父は「とりあえず座りなさい」と俺を席に促した。

 促され席に座ると、父はその紙をテーブルの中心に置いた。


 「今日FAXで送られて来たんだが、この紙はなんだ」

 

 その紙書かれた文字を見て俺は目を見開いた。

 紙の一番上に書かれた文字は「Steralive所属規約について」と書かれていた。

 

 「これは……その……」

 「何か言いにくい事なのか?」

 「……まあ、言いにくい……」

 「そうか、なら俺から話がある。まずこの紙についてだ、多分これはお前が企業に選ばれて送られて来たものなのだろう?」

 

 選ばれたというかコネというか何とも言えなかったので俺は黙ってしまった。


 「言えないのか。まあ父さんは別に怒っているわけじゃないんだ」

 「えっ……」

 「逆に父さんは涼真が何かして企業に選ばれて凄いと思ってる。まあ、何かに応募するなら母さんに言うか、言いにくかったのなら俺でも良いから話してほしかったがな」

 

 てっきり怒っているのかと思った。

 気まずくてずっと下を見ていたが顔を上げると父は笑って話していた。

 勝手に気まずくなって父を無視ばっかりしていた、けれど父は俺がしでかした事を知らずただ単純な気持ちで褒めてくれている。

 そんな父に申し訳なくなって俺は重かった口を開いた。


 「あのな、父さん……」


 俺が口を開いた事に最初は少しだけ驚いていたがその後は真剣な表情で何も言わずに話を聞いてくれた。

 みるくの配信に乱入してしまい迷惑をかけた、その代償として企業に所属して配信に出ることを全部ありのまま話した。


 「そうか、くるみちゃんに迷惑をかけたことはお前が悪いな。でも、どんな形であれ罪を償おうとしているのは良い事だ。そうだ、お前はまだ未成年だったな。多分だが保護者の承諾がいるだろう、印鑑を持ってきなさい」

 「それって……」

 「俺はお前の活動を応援する。多分、今の母さんに言っても認めてくれないだろう?だから俺が許可してやる。困った事があったら俺に言え、力になってやる」


 父の言葉を聞いた俺は、涙をせき止めていた防波堤が崩れ涙が零れた。

 将来の夢ではないが、人に自分が今やろうとしていることをこんなにも応援されるとは思わなかった。

 それに父は俺と母親の関係が悪化していることを知っていて、それを配慮してくれた上で俺がやろうとしてくれている事を認めてくれた。

 俺は両目から大量の涙を流し、印鑑を取りに行った。


 印鑑を父の所に持って行くと保護者署名の部分に父の名前が書かれていた。

 

 「ほれ、貸しなさい」

 

 父に印鑑を渡し、ハンコを押してもらった。

 だが俺はここで気づいた。

 運営に俺の家の電話番号を教えたのは誰なのかと。

 FAXを送る方法は俺が知っている限りでは、送りたい相手の電話番号を打つというもの。

 この紙はしっかりと運営から来ているもので、代表者名に「二宮椿(にのみやつばき)」と書いてあった。

 この「二宮椿」という人は実在していて、Steralive公式ホームページでも確認したが代表取締役の部分にこの名前があった。

 とりあえず署名しなければいけない所は全て記入し終えたので、FAXで運営に送り返した。

 FAXを送っている間、父に「涼真、それと勝手に電話番号を教えてはいけないぞ」と軽く怒られたが実際に教えてない俺は真実を伝えるべきなのだろうが、怒られた反動で咄嗟に「ごめんなさい」と謝ってしまった。

 最悪個人情報流失という可能性もある、俺は心の中で犯人捜しをしようと決めた。

 

 

 

 

まずは今もこの作品を読んでくれいている皆様に感謝を。

最近伸びが悪くてモチベが……

こういう話は良くないですね、すみません。

謝るなら書くな!って言いたいかもしれませんが、言わせてください。

とりあえず10万字までは書く予定なのでボチボチ見てくださると嬉しいです。

最後に投稿者のモチベーション維持に繋がりますので評価、ブクマの方をよろしくお願いします。

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