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どうやら俺にも恋愛イベントが発生したらしい。

 会計をして店を出た。

 俺がみるくの分と心々音の分も払おうとしたが、心々音はそれを断固として拒否した。

 結局、話がつかなかったので俺がみるくの分を払って、心々音には自分の分だけを払ってもらった。

 かっこつけさせて欲しかったなぁと思いつつ外に出ると、頬を膨らませたみるくが待っていた。

 

 「あ、りょーくん!」

 「なんだよ」

 「もう、なんだよじゃないよ!私、心々音ちゃんの前ですっごく恥ずかしかったんだからね!?」


 どうやら俺がみるくの口を拭いてあげた事が気に食わなかったらしい。

 おかしいな、中学の頃はみるくが気づかないから毎回拭いてあげていたんだが。

 みるくも大人になったって事にしておくか。


 「ふふっ、ほんとに面白い。そして尊いです。もっとこの会話を聞いていたいですが、私はもうすぐ電車が来るので先にお暇させて頂きますね」


 心々音は「最後に二人とも、連絡先を交換しましょう。涼真くんのLIMUは亮くんから貰うはずだったのですが、すっかり忘れてました」と言いスマホを取り出して来たので、みるくと俺はメッセージアプリ「LIMU」で連絡先を交換した。

 連絡先を交換すると心々音は「それじゃあ、また明日」と手を振り走って駅方面へ行ってしまった。


 「行っちゃったね」

 「ああ、それにしてもよく喋れたな」

 「もう!りょーくんそういうとこ!」

 「なんだよ、俺は心配で――」

 「私も大人になったの!」

 

 みるくはそう言うと手をグーにしてポコポコと俺のお腹辺りを殴って来た。

 勢いもあり力は込めているのかもしれないが、痛みは無く心地よいぐらいの強さだった。

 だが、こういう時のみるくをこのまま放っておくと何かと面倒くさい事になる。

 拗ねてしまって口を聞いてくれなくなってしまう、だから謝るのが筋というもので俺はちゃんと謝った。


 「ごめんって、俺が悪かった」

 「もう、今回は許してあげるけど次回は無いからね!」


 と言いつつも今回でこのような事態に陥るのは5回目、次回が無くなるのはいつになるのやら。

 

 こんなやりとりをした後、俺とみるくは駅に向かって歩き始めた。

 スマホで親に帰りの連絡を入れた後、メッセージ画面で亮の名前が目に入った。

 みるくが俺を呼ぶ時は「りょーくん」だ。

 今後、亮とみるくは関わる事になるだろうから、俺の呼び名を変えさせた方が良いかと思った。


 「なぁ、みるく」

 「何?」

 「みるくってさ、俺の事呼ぶ時【りょーくん】って言うだろ?」

 「うん」

 「それさ、やめて欲しいんだよね」

 

 みるくは立ち止った。

 どうしたと思い、隣を見るとみるくの顔はこの世の終わりみたいな顔をしていた。


 「ど、どうした!?みるく!」

 「私、やっぱりりょーくんに嫌われてるんだ……」

 

 どうやらりょーくん呼びをやめてほしいって言葉が、みるくには俺に嫌われたという意味合いで伝わってしまったようだ。

 俺の言い方が悪かったなと思いつつ、俺はやめてほしい事情をみるくに話すといつも通りの明るい表情のになったので安心した。


 「もう、それだったら最初にそう言ってよね」

 「悪い、俺の伝え方が悪かった」

 「もういいよ、私は優しいから許してあげる。それで、なんで学校の友達の話なんて急にしたの?」

 

 みるくは凄く不思議そうに聞いて来た。

 俺の予定では明日、今は謹慎期間で配信も無い。

 だから、みるくと一緒に登校しようと考えていたのだが、コイツの頭の中では学校に行くって考えがなさそうだな。

 

 「俺は明日、みるくと学校に行くって決めたから」

 

 みるくは思考が停止したかのようにまた立ち止り、思考が戻って来たのか「えーー!?」と大きなリアクションを取った。


 「そそそ、そんなの無理だって!?」

 「いや、何が何でも連れて行くから。決定事項だから」

 「で、でも私機材のチェックが……」

 「無いよね?」

 「……」

 「無いよね?」

 「……無いです」

 「じゃあ学校に行けるね」

 「で、でも私コミュ障だし人見知りだし……」 

 「そこは俺が何とかするから、じゃあ明日迎えに行くから」


 みるくの家に行った時、みるくの部屋に北嶺高校の制服が壁に掛けられていたのを見て、俺は一緒に登校しようと誘おうと思っていたが、タイミング的に昼に言ったら絶対みるくは拒絶して学校に行かなくなる、そう思ったのでみるくには今伝える事にした。

 しかし、中学とは人と勉強内容が変わった以外に変わりはほぼ無い。

 他に違う点としては登校の方法ぐらい。 

 なにがそんなに嫌なのだろうか。


 「何か、嫌な事でもあるの?」

 「……無いけど、強いて言うなら友達出来るか心配なの」

 

 「友達なら今日出来ただろう?」と聞くとみるくは少し浮かない顔をした。

 

 「確かに心々音ちゃんとは今日初めて会って、それで、同じ事務所の唯一絡んでいたVtuberだったって事が知れて嬉しかった部分もあるよ。でもさ、心々音ちゃんにこんな根暗で引きこもりの女の子と一緒に活動していたんだって思われてるかもしれないじゃん。そしたら何か、嫌になっちゃって……」

 

 またみるくの悪い所が出ている。

 心配し過ぎて逆に悪い方向に考えてしまう、悪いクセ。

 どうにかして治してあげたいが、今は慰めてあげる方が大事だ。


 「そんな考え方すんなよ」

 「でもさ……」

 「でもじゃない。心々音だって俺とお前のやり取りを見ていた時、凄く楽しそうに笑っていた。それに、みるくと心々音が電車で会った時心々音は最初、敬語でみるくと話してただろ?」

 「うん」

 「でも飯を食ってる時には、その敬語がだんだん崩れて来て、最終的には【オタク心がくすぐられる】みたいな事言ってただろ?」

 「……うん」

 「多分あれって心々音の素なんだよ。素を見せるっていうのは信頼した人だったりこの人なら素の姿を見られても大丈夫って時にしか見せないんだよ」


 心々音は俺が配信に乱入する前に会った時、あいつは敬語だった。

 そして今日電車で会った時も敬語、だが店内に入って少ししてから砕けた話し方をしていた。

 告白を全部振ったのも主に配信が関係しているだろうが、相手の事を全く知らない状態だったからってのもあると思う。

 それに比べて俺らには少し砕けた喋り方で話してくれる。

 それは、宮下心々音という女性と少しでも信頼を築けたという立派な証だと思う。


 「だから安心しろ。心々音は絶対みるくの事、嫌な風に思ってないから」


 俺がそう言うと「そうだね……」とまだ何か思う所があるのだろうが顔に少しだけ明るさが戻って来た。

 

 「まぁとりあえず、明日困ったことがあったら俺でも良いし、心々音を頼ってみろ」

 「りょー……涼真を頼るのは分かるけど、なんで心々音ちゃんなの……?」

 「心々音を頼ってみて力を貸してくれたら信頼されてる、力を貸してくれなかったら信頼されてないって分かるだろ?あ、無理難題を押し付けるのはやめておけよ?」

 「そっか、じゃあ考えとく……」

 「無理だったら俺に相談してくれ。あと、明日学校行くって事で良いよな?」

 「うん、ちょっとだけだけど久々に学校行きたくなってきた。それに涼真がいるなら安心できるし」

 「よっしゃ、決まりだな」


 こうして歩いているうちに、北野駅に着いた。

 駅構内に入り、電光掲示板を確認すると5分後に電車が来るとの事だったのでみるくと待合室に行った。

  

 待合室に入り、暇潰しにゲームでもしようかなと思いスマホを取り出した。

 電源を点け、通知欄を確認するとLIMUの通知が来ていた。

 親からかなと思いLIMUを開くと心々音からの連絡だった。

 内容を確認しようと思いメッセージ画面を開くと、そこにはこう書いてあった。


 「涼真くん、急にごめんね」

 「もう、怖いから言っちゃうね」


 

 「付き合ってください」



 思わず俺は「は~~!?」と周りの事など考えず、人生で一番大きな声を出してしまった。

 

 

いつも読んで頂きありがとうございます。

これからも毎日投稿頑張っていきます。

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