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22番世界  作者: めくおそきみ
神様、22番世界へ行く
2/2

タピオカには気をつけろ

22番世界 part2

作者:めくおそきみ

大作家五十音先生の「神様の暇つぶし」

非公式スピンオフです。

原作との設定矛盾、キャラ崩壊はパラレルワールドだからです。

できるだけ先生に見つかりませんように。(作者は9月1日に五十音先生に見つかりました。

また、その時に公式にはして頂けませんでしたが、

小説掲載の許可は頂いた事をここに報告します。)

※非公式ですが公認です。

「うーん、暇だなぁ...。」




 その神は美しい少女のような姿をしていた。

名をリクシアといい髪は白く輝き、目は黄金色と暗い赤色のオッドアイだ。その二色は光と闇の象徴である。


 リクシアはそう言いながら、1つの『世界』に目を向けて、こう言った。


「人間って羨ましい...。やることがたくさんあるし、何より自由だから。」


 神だといっても、特に『世界』に大きな影響を与えることはない。『世界』のバランスを崩しかねない、禍への対処が主な仕事となる。例えば、人間を『勇者』や『神の使徒』として異世界に転生させたり、神が直接滅ぼしに行くこともする。


 ・・・しかし、ここ三十万年は禍など全くと言っていいほどに出現しない。


 しかし、これが今のリクシアの唯一の『暇つぶし』である。


「そうだ、今『世界』ではやっているモノを知ろう!何よりそれを知ることは神様の義務だろうしね!」


こうして神様の暇つぶしは突如として始まった。


1.どの『世界』について知るか

2.どうやって知るか

3.そんなことが本当に楽しいのか


「ざっとこんなもんかな?じゃあまずは1番からかな。えーっと、面白そうな『世界』だからここがいいかな?22番世界だね。」


リクシアは、迷うことなく調べる『世界』を決めた。


「次は2番だね。『因果の書』を使えば一瞬なんだけど…。折角ならこの『世界』の生物に聞こう。3番?そんなのどうでもいいや。暇が潰せれば充分。」


そう言ってリクシアは再び22番世界に目を向けた。


「誰に教えてもらおうかな。どうせなら話してて楽しそうな生物がいいな。」


そんなリクシアの目に1人俯いて歩く少女が飛び込んできた。


初めて見た少女のはずなのに、リクシアはなぜか強く惹き付けられた。


「じゃあ、あの子に聞こう。『瞬間移動』!」



――――――――――――――――――――



リクシアは22番世界に降り立つと辺りを見回した。


「あれっ、ちょっと座標ずれたかな。最近やってなかったからなー、まぁいいや。あっ、いたいた。おーい!」


少女は振り返るとあからさまに訝しむ目でこちらを睨んできた。


「ねぇねぇ、私にこの『世界』のこと教えてよ。」


すると少女はおもむろに無言でポケットから何か取り出したかと思うとそこに生えている紐状のものを引っ張った。


・・・ピロピロピロピロ!!!!


目の前で不意に鳴り響く高音に思わず耳を塞ぎ、叫んだ。


「ちょっ、待って待って!1回それ止めて!」


なおも謎の物体はなり続け、その電子音に腹を立てたリクシアは思わずそれを少女から奪うとすぐさま握り潰した。


「何これ?なんでこんなもの鳴らしたの?」


リクシアが問うと少女は涙目で


「お母さんに怪しい人には近づくなって言われたから。」


そうか、いきなり見ず知らずの人から声をかけられるとそうなるのも無理はない。

さては夜にトイレに行けないタイプだな。


誤解のないよう自己紹介しなきゃ。


「私はリクシア、神様やってるんだ。あなたの名前は?」


「ちょっと待って。その前に神様ってどうゆうこと?」


あぁそうか。きっと神様とか見たことないんだ、可哀想に。


どうやって信じさせようかな。


「じゃあ私の手を見てて!」


私は手から純水を出した。


「きゃっ!手から水が…ブクブクブク・・・」


そう言って少女は気を失った。


・・・えっ、そんなに!?流石に気を失うことはなくない?


そんなことなくもなくないのかな?




数分後…


「やっと起きた!気を失う程だったの?まぁいいや、これで私が神様だってわかった?」


「・・・何のことですか?」


・・・マジのことですか?気と一緒に記憶も失ったのか。


「じゃあこの水を飲んで?これ、私が創ったから。」


ごっくん。少女は水を飲むと、


「きゃっ!軟水…ブクブクブク・・・」


えぇ…さすがに引いてしまうよ。




数分後…


少女は起きたが再び直前の記憶を失っていた。


「じゃあ、あなたの好きな飲み物は何?それ今から創ってあげる。あ、ちょっと待って、当ててあげるから。」


そして『精神感応』を発動するとリクシアの脳内に未知の言葉が浮かんだ。


「何これ、トゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノ?!?」


「すごい!よくわかったね!それは今期のスクバの新作で1番人気のドリンクなんだ!」


少女は目を丸くして言った。


そうなのか。この星の生物は何を考えているのかわかったもんじゃないな。そんなのどうでもいいけど。

『因果の書』を見て知り得た情報からリクシアはトゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノを創り出した。


「はい、どうぞ。」


「わぁっ、ありがとう、神様。これ無駄に高いし買うのに行列待たなきゃ行けないから助かったよ、マジ感謝。」


最後の一言がちょっと気に食わないが聞かなかったことにして、


「ねぇねぇ、この『世界』ってそのツーゴーなんちゃらの他に何が流行ってるの?」


「ツーゴーなんちゃらじゃなくって、トゥーゴーパーソナルリストレットベンティツーパーセントアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラキャラメルエクストラヘーゼルナッツエクストラクラシックエクストラチャイエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラパウダーエクストラチョコレートチップエクストラローストエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノ。これくらい覚えてないと時代に置いてかれるよ。」


よく噛まずに言えるな。


少女は続けて、


「そうだ、自己紹介が遅れたね。私はハイム・サカイ。私のことを1割の人はハイム、2割の人は引越センター、大概はセキスイって呼ぶわ。ちなみに自慢じゃないけどその1割は親戚よ。」


そう言ってセキスイは笑っているとも泣いているともとれない微妙な表情をした。


「立ち話もなんだから移動しない?私いい所知ってるの。見ての通り暇人だから話し相手になってあげる。」


そう言うとセキスイは私の手を引っ張ってお花畑に連れて行ってくれた。



―――――――――――――――――――



少女が連れてきたそこには赤、白、黄色、どこから見ても綺麗なチューリップが群生していて、5世界のお花畑を起想させた。


「私この場所が好きなの。ここにいるとハチドリになったみたいな気分になるの。」


とセキスイは言う。2人はそばにあるベンチに座った。



「じゃあ教えてあげるね。ここだけの話だよ、ゼッタイ誰にも言っちゃいけないからね。実は今この星で流行っているのは…タピオカっていう、うさぎの○のようなカエルの卵のような物体だよ。」


この子は食べ物の話しかしないのかと思いつつリクシアは『因果の書』でタピオカとやらを調べた。


「へーっ、これって美味しいの?」


「芸人のくっきー!ほどじゃないけど好き嫌い分かれるらしいよ。ちなみに私は食べない。近くにタピオカミルクティー売ってる所あるから買ってきてあげる。」




数分後…


「はいこれ、あなたの分だけ買ってきたわ。お金は後で返してね。昨年はどえらい人気だったんだけど最近は色々あってそうでもないからあまり並ばずに買えたよ。原材料安いのにあんなに値段上げたらそりゃ滅びるも一瞬だよね。ざまぁ。」


と言いつつセキスイからタピオカミルクティーを渡された。


パッと見はよく見るミルクティーだが底の方を見るとセキスイの言う通りカエルの卵のようなものが入っていた。


「うへぇ、何これ?まぁ飲んでみるよ、ごっくん。……ウヘッ、ゲホッ、ゴホッ、」


「気をつけてね、よく噛まないと喉につまるから。うちのおばあちゃんはそれが原因で窒息死したんだ。」


・・・縁起でもないなぁ、私が死んだらこの『世界』なくなっちゃうんだよ。


でも美味しくないこともなくもなくもない。歯にあたるときのグミのような弾力がなんともいえない心地良さを覚えさせる。お腹に溜まりそうなのもポイントが高い。


もしかしたらセキスイはおばあちゃんのトラウマで食べられないのかもしれない。


「どっちかっていうと好みかな。あなたも飲んでみたら?」


「いっ、嫌じゃ!そのような下賎な下級民族が食らうようなどこぞの誰が作ったか分からぬ出来損ないなど口にしておってはこの世にいられなくなる!それだけはアインシュタインの稲田と1分目を合わせ続けるよりも嫌じゃ!」


・・・とても嫌いなのがよく伝わります、はい。


「私この『世界』のこともっと知りたい。他には普段どんなことして遊んでるの?」


「今はねぇ……麻雀かな。あ、それとパチスロもやってるよ。特に1パチがおすすめ。」




数時間後…


リクシアは21世界の殆どの流行を知り得た。


「あっ、もうこんな時間!私帰らなきゃ!楽しかったよ、神様!」


引越センターは帰ろうとした。


「ちょっと待って、せっかく話し相手になってくれたんだから何か願いを一つだけ叶えてあげる。」


「ホントに?!何でもいいの?!」


「いいよ!」


所詮容姿8歳の子供だから望むのは駄菓子かおもちゃだろう、そう思っていたリクシアを裏目にセキスイは意外なことを言い始めた。


「…私のママね、2年前から原因不明の病にかかっててずっと寝込んでるの。病院の先生は余命が何とかって言ってた。」


ハイムは俯きがちに言う。


「パパは私が生まれてすぐタバコの吸いすぎで死んだんだって。他に身寄りもいなし妹もまだ小さいからママの病気については何も言わず、心配ないよを繰り返してるの。ママの代わりに私が家事をしてるんだけどもう耐えられそうにもない。お姉ちゃんだししっかりしなきゃって思ってるんだけど、ママが死ぬところなんてみたくない!」


ハイムはここまでよっぽど頑張ってきたのだろう、胸の奥から溢れ出る想いは並相応のものではなかった。


「もしも、もしも願いが叶うならね、ママを元気にして欲しいの!そしたら他には何もいらない!私が死んだっていい。お願い、ママを元気にして、神様!」


泣きながら懇願するハイムを見てリクシアにも込み上げてくるものがあった。

しかし病気になっている人を元気にするということは、代償に他の誰かが同じ病気にかかることになる。しかもそれが誰になるかはリクシア自身でもコントロールすることはできない。


それでもリクシアはつられて叫んだ。


「あなたは死んじゃダメ!あなたが死んだら元気になったお母さんが悲しむだけ!いいよ、お母さん元気にしてあげる。でも私があなたのお母さんを元気にしたことが広まったら面倒なことになるから、あなたから私との記憶を排除しなきゃいけなくなるわ。それでもいいの?」


「おなしゃす。」


急に軽いな!



――――――――――――――――――――



ハイムの家を訪れたリクシアはハイムの母を見て愕然とした。


「何これ!」


彼女は体が赤く発光していたのだ。


リクシアはしかしこの病気を知っていた。

かつて、この病が流行して絶滅寸前までいった『世界』があったからだ。


「この病気はとても珍しい寄生虫によるもので、この『世界』の人間に到底見つけられるものではないわ。あなたが私に合わなかったら、ママはこのままカラフルに光り続けて死ぬところだったわ。」


そう言うや否やリクシアは早速『回復魔法・究極』を使った。


するとみるみるうちに体の発光は治まっていった。


「ママはあと数時間もすれば目覚めるわよ。運が良かったわね。」


ハイムは泣いて喜んだ。


「ありがとう、神様!私は幸運だわ!神様って本当にいたのね!毎日天にお祈りしてたから報われたのかしら!」


リクシアは少し躊躇いつつ、


「急で申し訳ないんだけど、すぐにあなたの記憶を消さなきゃ。最後に言い忘れたことはある?」


と言った。


「じゃあ一つだけ。神様、思ったより声高いね。」


…やかましいわ!


「あなたのお陰でこの『世界』のことよく分かったわ。ありがとうハイム。そして、さようなら。」


リクシアは優しく微笑んだ後、『記憶操作』を使った。



――――――――――――――――――――



今朝も飼っている鶏の鳴き声で目を覚ました。窓の外を見ると木々に囲まれた湖のほとりに鳥たちが集まっている。いつもと同じお気に入りの景色だ。


「ハイムー?起きたー?」


ママの呼ぶ声がした。


「うんーっ、起きたよー」


寝ぼけまなこをこすりながら応える。

ママは謎の病にかかっていたんだけど、なぜか突然回復した。医者さんも奇跡だと驚嘆していた。


リビングへ行くとなにやら香ばしい匂いが漂ってきた。今日の朝ごはんはハンバーグかな?


「おはよう、ママ。」


「おはよう、ハイム。ちょっとヘーベルを起こしてきてくれない?」


「分かったわ、ママ。」


ハイムは妹のヘーベルを起こしに妹の部屋へ行った。


「ヘーベルー、起きてよー!」


「おはよう、お姉ちゃん。もう数分前には起きてたんだけど……何だか体が変なの…。どうしたのかな。」


「変って何よ?お腹痛いの?熱でもあるの?」


「違うけど…」


「じゃあ起きていらっしゃい。お姉ちゃんが見てあげる。」


「分かった……。」


ようやく妹が布団から出てきた。


「何よ、顔色も悪くないじゃない。」


「そうじゃないの…」


そう言って妹は手を私に見せてきた。


不安そうにこちらを見つめるヘーベルの手は赤く発光していた。

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