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22番世界  作者: めくおそきみ
リクシア編最終章
1/2

有難い幸せ若しくはリンダリンダ

これは、趣味での投稿になります。改善案などはドブに捨てて頂けるとありがたいです。


原作の時系列で、1話〜3話です。

「おーい、リクシア!リクス!そろそろ朝だぞ、早く起きてくるんだ!」


 お父さんが『私』と『リクス』を呼ぶ声で、目を覚ました。

 この「体」になってから数週間経ち動かすのには慣れたが、それでもこの寝起きの気怠さを克服できる気配は無い。

 冷たい床を踏み、重い体を動かして私は朝食を摂りに向かった。


 ――――――――――――――――――――――――


「おはよう。リクシア、リクス。眠いのならもう少し寝ててもいいのよ?」


 と、お母さんが微笑みながら朝の挨拶をしてくる。確かにまだ眠気はあるが、神の体だった時は疲れ知らずだったのだ、そう考えると朝の眠気も新鮮で気持ち良いよね!


「大丈夫、少し眠いけど今日も魔法の練習したいから!」


「私はお言葉に甘えてもう少し横になりたいです…。」


 おいおいリクス、あなた約500年くらい封印されて無かった?まだ寝たいの?


「リクス、そんなんじゃリクシアに置いて行かれるぞ、子供は早起きして元気に動くものだ。」


「まあまあ、良いじゃないですかあなた、この子達、昨日は夜遅くまで魔法の練習してたのよ。」


 どうやら、リクスに頼まれてこの世界の大まかな歴史を教えていたのを、魔法の練習と勘違いしたらしい。まあ、都合がいいからいいんだけど。


「それでもせめて、朝ごはんは一緒に食べなさい。せっかくお母さんが早起きして作ってくれたんだ。」


 そう言われて私達は眠い目を擦りながら食卓を囲んだのだ。


「「「「いただきまーす!」」」」


 今日の朝ごはんもいつもと同じく、パンに野菜と少しの肉を挟んだサンドイッチとなっている。実にシンプルなものだが、使われている野菜が新鮮な事もあってか驚くべき美味しさなのだ。

 こういう物が食べられると、田舎に住む良さをひしひしと感じるができる。田舎万歳!


「やっぱり、お母さんさんの作るサンドイッチは最高だな!これを食べなきゃ一日が始まらない!」


 とかなんとか言いながら、お父さんが朝だと言うのに私達の何倍もの量のサンドイッチを口に詰め込んでいる。醜い。


「zzz…」


 リクスが船を漕ぎながら今日に肉だけを抜き取って食べている。龍って雑食なんだろうか。


「いやぁ〜食べた食べた!これで昼までもちそうだ。」


 早い、数十秒視線を外しただけで既に積み上がっていたサンドイッチは綺麗さっぱり消失していた。私達の数倍の量を数倍の速さで食べている。きっと死因は窒息死になるだろう。


「あっ!そうだ!この前商人に人から買ったチーズがあるわよ、食べてみない?」


 と、言ってお母さんが答えも聞かずに食糧置き場へ向かう。

 お父さんが食べ終わってから提案するあたり自分が食べたいらしい。

 残念ながらお父さんは目を輝やかせながら新しいサンドイッチに手を伸ばしてチーズを待っているのだが。


「キャーーー!」


 食糧置き場の方からお母さんの甲高い悲鳴が聞こえてきた、お父さんが、「どうした!」と、言いながらお母さんの元へ向かう、リクスもビクッと反応してから食べかけの肉無しサンドイッチをお父さんの皿に置いた。


「ね、ネズミがチーズを…」


 私達も向かうと、床にへたり込んだお母さんがのたのたと去っていくネズミを指差していた。どうやらいつの間にかネズミが巣食っていたらしい。

 後ろ足に怪我をしているのだろうか?一本の足を引きずりながら棚の影に消えていった。


 残念ながら、チーズは既にネズミにかじられていた、それも今日だけで無く、ここ数週間にかけて少しずつ食べられていたらしい。

 なかなか賢いネズミである。他の食糧もかじられているといけないので、棚の外にあった食糧は全て処分した。半分以上残っているチーズを捨てる時のお母さんは号泣していた。

 家は両親共に食事しか娯楽を知らない程に食事に執着しているらしい。

 なんて言いつつも私もチーズを食べるのは少し楽しみにしていたのだが。

 こういう事があるのは田舎の小さくない欠点かもしれない。


 そうやって今日もいつもどおりの騒がしい日が始まったのだった。



 ---------------------------------------------------------------------



 それにしてもさっきの騒ぎは不運だった、あれのせいで朝ごはんを満足に食べれず、昼までもちそうにもない、早く何かを口に入れたいんだけど…。


「リクシア、リクス。今日は魔法の練習は休みにして外に出かけるぞー。」


 これは幸運だ、外に出て行くのならその時に何か食べれるかもしれない、そう考えて私は横たえた体を起こして動き始めた。



 ――――――――――――――――――――――――




「お父さん、きょうはなんで3人で山に来たの?」


 道中で見つけた美味しい野苺を摘みながら問いかける、ハイキングだとしたらお母さんさんを家に残してくるのは哀れだ、もしかしたら昼ごはんの調達だろうか?食事をしたら次の食事を考える、お父さんだけはこの現代でも生き方が旧石器時代スタイルらしい。


「フッフッフッ、今日はな、お母さんの為にある物をこの山に採りに来たんだよ!いつもお母さんには何もしてあげられないからな、お母さんに喜んでもらいたいんだ。」


「でも、山にある物をプレゼントしたら、お母さん喜んでくれるんですか?」


 その通りである。お父さんさんのセンスの無さと能力の無さは芸術の域である。

 因みに先月のお母さんの誕生日に、お父さんは「剣の稽古をつけてやる!」と、息巻いていた。実際それぐらいしか彼は出来ない。


「たしか、ここら辺にトゲトゲの葉っぱで小さい白い花が咲いてる草があるんだ。それを一緒に探してくれないか?」


 どうやら悪い予感は当たってしまったらしい。トゲトゲの葉っぱの花をプレゼントに選ぶ感性はこの際無視して、付与:天の眼で即見つけて即帰ろう。

 だが、この辺りにその条件に合うような植物は一種類しかいないし、それは…。


「私!その花の場所知ってますよ!」


 天の眼を使う前にリクスが見つけてくれたらしい。この辺りはいつも一緒に特訓している場所なのでリクスは植生をある程度把握しているのだろう。


「本当か!凄いぞリクス、あまり数が多くなかった筈だから今日中には見つからないかもと思ってたんだ!」


「こっちです!すぐそこの場所に咲いてたと思いますけど1、2本しか無かったと思います。やっぱり足りませんか?」


「いや、1、2本あれば十分だ。まさか、こんなに早く場所がわかるとは、こんな優秀な娘2人を持ててお父さんは嬉しいぞ!」


 リクスに案内されるまま数分草を掻き分けて進んでいくと少し開けた場所で件の物らしき花が2本咲いていた。


「そうそう、これこれ!いやー懐かしいな子供の時はよく親父に採りに行かされたっけ…見つからない時は本当に見つからないんだよこの草!」


「でも、これあんまり綺麗じゃないですよ?この山にはもっと綺麗な花がいっぱい…」


 それもそうだがそれ以前の問題がある。私の記憶が確かなら、その一見パッとしない路傍に生えてそうな草は…


「こうしちゃいられない!お母さん凄く喜ぶぞ!リクス!リクシア!誰が一番先に家まで帰れるか競争だ!」


 言うが早いか、お父さんは全く追いつけないテンションで山を下っていった。

 やれやれ…大人が子供に全力を出して恥ずかしくないのだろうか?これは私の持論だが、立場や能力が上のものは下のものを育てる必要があり、それは全力を出して叩きつぶす事ではない。同じ立場で競い合い時には勝ちを譲る事も大切なのだ。

 しかし、お父さんには言ってもわからないのだろう。ここは一度神と人神と人(立場)の違いを叩き込んでやろう!

 そう考えた私は『異次元収納』から一振りの剣を取り出した。その後、


  「『神速』。神速(ゴッドヴェロシティ)


 そう呟いた瞬間、リクシアは木々の目前まで転移、いや、移動していた。

 そのまま、


「『絶対切断』。絶対(アブソリュート)切断(アンプテーション)


 を発動して、木々の体を縦に両断した。そのまま木々は力尽きたようだ。この剣はかなり使えるな。


「リ、リクシアさん?こんなげーむにまじになっちゃってどうするんですか?」


 何か言っているリクスを無視して私は全速力でお父さんを追いかける。先に仕掛けてきたのは、そっちだからね。全力を出して叩きつぶしてやる。






 結局、お父さんは一番最後、私が一番乗りだった。途中、リクスが口から吐く『カタストロフィ』の反作用で飛んでくるのを見られたが、複雑を極める魔法陣を完全に理解すると人間でも使用可能なのは、皆んなが『無意識』で理解している、『常識』なので事なきを得た。


 ともあれ、私達はお母さんへのプレゼントを持って帰って来ることができたのだ。早く帰りすぎて1時間も経っていないが…。




 ---------------------------------------------------------------







食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい





 ―――――――――――――――――――――



 機神剣を使った影響だろうか?これまでに感じた事の無いほどの空腹を感じる。やっぱり人の体で神器を使うのは無理があったのだろうか…。

 お母さんに頼んで、サンドイッチの余りをたべさせて貰わなければ今頃倒れていたかもしれない。




「あなた!ありがとう本当に嬉しいわ!今日は私が今まで生きてきた中で最高の日よ!」


 私達がしていた心配を他所に、お母さんの今まで生きてきた中ランキングで「草を貰った」日が、「私が生まれた」日、「結婚記念日」をぶち抜いて堂々の一位である。

 あの草はお母さんの常備薬だったのだろうか?キメる前からハイなので使わなくてもいいと思うが…。


「ふふん。なんとな、この草は根っこに毒があって、少量でもネズミを抹殺する事ができるんだ!」


 やはりそうか、そもそもお父さんに、花をプレゼントするという考えがある訳が無かったのだ。

 それより、この男は自分の妻に自分との出会いより、毒草との出会いを喜ばれているのだが、胸を張っているのはどのような胸中なのだろうか。


「ひひひひ…。これであの糞害獣を地獄の底に叩き落とせるわ…。」


 お母さんのネズミに対する憎悪がひどい。チーズ一つでこんな事言っていたら勿論彼女が地獄行きだろう。


 リクスはさっきから相容れないとでも言いたげな目で、両親を見ている。彼女は人から命を狙われていたらしいので、毒殺されそうになった事もきっとあったのだろう。ネズミに同情する龍というのも笑える話ではあるが。


「そうだ。リクシア、リクス。お前たちは冒険者になりたいんだったよな?それなら、今の内に経験した方がいいな。ついてきなさい。」


 そう言ってお父さんは毒草を持ってキッチンへと歩いて行く。


「私、嫌な予感がします…。」


 リクスの呟きに小さく頷いてから、私達はお父さんの後を渋々とついて行った。


「お前たちには、今から対ネズミ用ハンバーグ型決戦兵器を作ってもらう。

 コツとしては美味しそうに、かつ小さく作ることだ。大きすぎると食べてもらえないからな。

 目安は0.5cm〜1.0cmだ。沢山作って沢山食べてもらえ。

 まず、初めに…。」


「私達がいなくても代わりはいるもの」


「違う!お前達はお前達しかいない!なんてったってお父さんは不器用だからな!親父とお袋が作ってるのは見てやり方はわかるが、実際やってみるのとは話が別だ!」


「お母さんに作ってもらったらダメなんでしょうか…。お母さん器用だし、私とリクシアさんは料理もした事ないのにいきなり毒餌なんて作れません。」


 流石ネズミを愛する龍リクス!自己防衛に必死だね。

 その調子で頑張れ。


「お母さんに作らせたら、可愛い顔が怖くなっちゃうだろ。」


『因果の書』を開いてこの毒草の成人男性1人分の致死量を調べる。

 ………………チッ命拾いしやがって。


「さあ!観念して作り始めるんだ。確かに生き物を殺すのは苦しいかもしれない。だけどこれは俺たちが幸せに生きていくには必要な行為なんだぞ。

 よし!じゃあまずは………あ、目や口に入ったらすぐに洗えよ、できれば手につけるのも避けるんだ………。」






 ――約1時間後


「よし!作り終わったな!2人ともいい出来だ!もしかしたらお母さんよりも上手いんじゃないか?!」


 5分で説明を終えて55分剣を振ってきた父が帰ってきた。

 この愚物はお母さんより毒物の作成が上手いと言われて喜ぶ子供がいると思っているのだろうか?

 少なくとも尊属殺人はお母さんより上手いと思うが試そうか。


「これは必要私は悪くないこれは必要私は悪くないこれは必要私は悪くないこれは必要私は悪くない……」


 残念ながらリクスは30分前からトリップ状態だ、

 ……本当にこの草、違法じゃないんだよね?


 結局、私達が作ったハンバーグよりミートボールに近い小粒の肉塊は食糧置き場に置かれた。

 ここにいる事はわかっているし、他に食べるものが無い今、遅かれ早かれ哀れなネズミはその生涯を終えるだろう。

 ネズミ一匹のためにこんなに努力をしたのだ、彼には是非とも私の手作り最後の晩餐を腹一杯食べてもらいたい。



 そんなこんなであっという間に晩ご飯の時間である。

 今日はお母さんが実にご機嫌なので晩ご飯はご馳走!ハンバーグだ!

 …どうやら家の両親はもう手遅れらしい。

 なぜお父さんもあの作業の後にハンバーグを心待ちにできるのか、いや、こいつは剣振ってただけだわ。


「………………………」


 リクスはこの上なく晴れやかな笑顔である。なんだか今にでも腹を切りそうな雰囲気だが。


「あら、皆んなもう待ちきれないのね?リクシアもいつも私が作るハンバーグ大好きだったでしょう?」


 そりゃ『いつも』はスケジュールに毒餌作り入ってないからね。


「お父さんも、もう待ちきれないぞ!お母さんが作るハンバーグは世界一だからな!」


「はいはい。わかりましたよ。でも、ちゃんと挨拶はするのよ。食べ物とそれを作ってくれた人への感謝もね。」


「うん!それじゃあ………。」



「「「「いただきまーす!」」」」




 ……こんなありふれた日常も暇つぶしにはいいよね♪









                      続く


 -----------------------------------------------------------------





苦しい痛いよ気持ち悪い辛いお腹空いた死にたい殺したい憎い嫌い食べたい食べたい食べたい苦しい痛いよ辛い気持ち悪い寂しい悲しいどうして?死ね死にたい嫌だ怖くひどいなんで?お父さん痛いよ気持ち悪い寂しい悲しい辛い痛い痛い食べたいお腹空いた助けて助けてお母さん寂しい憎い嫌い死ね死にたい辛い殺して死にたい苦しい痛い嫌い死にたい気持ち悪い死にたい寂しい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたくない






















 私の名前はリクシアです!


 かるてりあ王国のかるむ村に生まれてライアンお父さんとカルナお母さんに育てられました!


 体を動かすのは苦手だけど、

 この前お母さんから「リクシアは家事がじょうずね。きっと可愛いお嫁さんになれるわよ。」って、褒められてから洗濯も、お皿洗いも、お料理もいっぱいいっぱい頑張ってます!


 今はどの家事もお父さんより上手くできるんだよ!

 でも、お母さんにはまだまだ届かないから、いつかお母さんのハンバーグよりも美味しいハンバーグを作って、お父さんとお母さんに美味しいって言ってもらうのが夢です!


 そしたらね!お父さんとお母さんに妹が欲しいってお願いします!私お姉ちゃんになって料理も洗濯もなんだって妹に教えたいです!私にお母さんがしてくれたみたいに!


 それでね!明日は私の8歳の誕生日なの!私はとっても楽しみです。お誕生日はお母さんがごちそうを作ってくれるし、お父さんさんがいつもより優しいし、でもね!8歳の誕生日はもっともっと特別!

 だってね!8歳になったらきよーかい?に行って神様にお願いしてすてぇたすをもらうんです!

 お父さんは剣とか運動のすてぇたすをもらったんだって!

 お母さんはお料理のすてぇたすをもらったからお料理が上手なんだって!

 私も、ちょっと心配だけど神様にいっぱいいっぱいお願いして、家事のすてぇたすをもらうんだ!

 でも…魔法のすてぇたすもちょっと欲しいかも…。


 明日はとっても楽しみだけど少し心配なことがあります。ちっちゃい時から私の中に私じゃ無い人がいるみたいで、初めはその人?もちっちゃかったけど、今は私と同じくらいな気がします。

 お父さんとお母さんにどうして?って聞いたら大人になったらその人はいなくなるよって、だから私は早く大人になりたいです!




 お父さんがもう寝なさいって!明日起きれなくなるよって!だからもう寝ます。神様、神様、明日は私の願いを叶えてください…。………おやすみなさい…。













 夢から

 目が

 覚めました












 どこもかしこも痛くなったこの体を動かします。初めは今より動けたけど、もう右前足と顔しか動きません。




 あの日、すてぇたすを見てもらう日に、

 私は私の中の『私』にはじき飛ばされました。


 それから、よくわからないうちに家の裏の死んだばかりのネズミさんの死体の中に入っちゃって、

 その時からずっと私の左後ろ足は動きません。


 でも、頑張って家に帰りました。お父さんが優しく撫でてくれてたから。お母さんが悩み事は全部消してくれたから。


 そこには、『私』がいました。そして『リクス』も、神様は『私』のお願いを叶えてくれました。

 でも、わがままでお母さんとお父さんをよく困らせた私は罰を受けました。


 私にはすてぇたすももらえませんでした。

 私には妹はもらえませんでした。

 私にはお母さんの言葉も

 私にはお父さんの温かい手ももう、もらえません。


 それなのに『私』は全部持ってました。凄い力を使って、

 可愛い妹がいて、お父さんもお母さんもいて。


 悔しかった、憎かった、それはきっと私のでした







 でもねでもねでもね


 わかったの!『神様』は、私が欲張りな悪い子だったから!

 わかままな悪い子だったから!私じゃなくて『私』に贈り物をあげたんだって!


 だからね!私はいい子になります!欲しがりません!言うことも聞きます!剣のお稽古も!家事も!いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいします!


 だから神様お願いします家族3人で過ごしたいです。














 おなかが空いて苦しいです。気持ち悪いです。辛いです。寂しいです。痛いです。怖いです。


 私は失敗しました。

 欲しがらないっていったのに!!!!!!

 わがまま言わないっていったのに!!!!


 おなかが空いてお母さんの大事なチーズを食べました独り占めして食べました『家族みんな』で食べるチーズなのに。

 だから私はもうだめです。神様からは見捨てられました。


 お父さんにも、お母さんにも、何も、してあげられませんでした。


 でも、大丈夫です。

『お母さん』も、

『お父さん』も、

『私』も、

『リクス』も、


 皆んな隣の部屋で笑ってます。


 だから、私はリクシアじゃ無いです。


 私でも無いです。


 きっとあの体も、妹も、お父さんも、お母さんも、


 あの子のでした。








「あら、皆んなもう待ちきれないのね?リクシアもいつも私が作るハンバーグ大好きだったでしょう?」


 ?!


「お父さんも、もう待ちきれないぞ!お母さんが作るハンバーグは世界一だからな!」


 !!


 私も!私も!お母さんのハンバーグが好きです!形も綺麗で美味しくて、お父さんがどんなに疲れてても食べたら元気になって!

 そんな世界一のお母さんの、

 優しくお母さんの優しいハンバーグが大好きです!


「はいはい。わかりましたよ。でも、ちゃんと挨拶はするのよ。食べ物とそれを作ってくれた人への感謝もね。」


 わかった!待ってね、今行くから!


 お母さんが作ってくれた、

 ちっちゃな沢山のハンバーグ!


 ありがとうございます!神様!家族3人にしてくれて!


 ありがとうございます!神様!


 これから絶対いい子にします!

 おやこうこうもします!

 おべんきょうもします!

 なんでもします!


「それじゃあ…………。」


「「「「「いただきまーす!」」」」」


























 ―――――――――――――――――――――



「ん?やったぞお母さん!死んでるよあのネズミ!」


「本当?!きっとあの子達が作ってくれたからよ!

 本当にあの子達は親孝行者だわ!」


「よかったよ、これでこれからも。」

「ええ!これからも。」






 家族4人で仲良く過ごして行くんだから。










                    終わり

体は作るのが面倒だから、誰かの体に入ろうかな。その体に入る予定だった魂は別の体に入っちゃうけど何も問題は無さそう。 


一話 神様、転生するより

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