16/17
ぼくのともだち⑰
来月から僕は大学生になる。
母はその後、数回の手術を受け、今もピンピンしている。僕の独り暮らしに
反対していたのだが、どうにかこうにか説得。荷造りを手伝ってもらっている所だ。
僕はといえば、小学校高学年から学校に通えるようになり、晴れて高校を卒業。
この春から大学生である。
かのんを見つけたのは母だった。
「憲一郎さん、ほら、この子。覚えてる?」
母は僕のことを『憲一郎さん』と呼ぶ。さすがに人前では避けるが、家では
さん付けだ。
実際に目にするまで母の『この子』という表現にピンとこなかった。
父親が動物嫌いなのでペットを飼ったこともないし。だから
「ああ・・・」
何とも奇怪な反応になってしまった。質問を肯定した、覚えているよの
『ああ』ではないし、10年振りに親友と再会した喜びの『ああ』でもない。
マイクテストを行う直前の、
「あ、あ・・・マイクのテスト中、マイクのテスト中。」
こんな感じだったろうか。
「覚えているよ。かのんだ。」