本編には関係ないプロローグ
1 本編には関係ないプロローグ
「グオオオオオオオオ・・・!」
断末魔の叫び声をあげ見上げる程の巨体が地に墜ちる。
「や、やった・・・!」
「倒したの・・・?」
「これで世界は救われたんだ!」
倒した巨大な生物を前に数人の若者達は喜びを抑えきれないといった表情で声をもらす。
そんな三人を少し離れた岩陰から覗く影がある。俺だ。
うんうんやったね君たち。
長い道のりを耐えてよく頑張った!感動した!
だけどね?油断してると死んだふりしてたその魔神がいきなり起き上がって、ヒロインの女の子、死んじゃうんだよね。
それで悲しみと怒りによって覚醒した勇者くんが魔神を滅ぼして、世界を救う。ってお涙頂戴システムでこのあともお話が進んで行くんだけどね?ヒロインちゃん復活する前に作家さん消息不明でこのお話し終わっちゃうんだ。
好きな作品だったからショックだったよ。いっぱい悲しい。
楽しみにしてたお話しの続きが来ない。ってのは前菜だけのフルコース。20分しか見られない30分アニメ。サビ前で終わる店内BGM。5分しか見られないエロ動画。みたいなものだ。
だから俺はちょっとだけこのお話を改変する事にした。
「おーい、勇者さん御一行〜!」
メガホンを持ち岩陰から頭だけ出して呼びかける。
「!?」
「だ、だれ!?」
急に現れた人物に驚く勇者御一行。
まぁそらそうだな。このお話の最初から、モブとして話には一切関わらずに影から見守り続けてたからな。
「怪しいもんじゃないぞー」
「その魔神死んだふりしてヒロインちゃん殺そうとしてるぞー」
「油断してないでさっさと消滅させろー」
と離れた場所から教えてやる。
「・・・生きてるだって?」
勇者がジト目で魔神を見ると魔神の体から大量の汗が流れ始める。
サッ。
ビクビクッ!
勇者くんが剣をかまえると魔神の巨体がピクピク動いた。
「・・・・」
「・・・・・」
2秒ほどの沈黙。その直後。
「エクストリームパニッシメントドラグノフ斬!」
勇者くんの最大の攻撃。聖剣を犠牲にして放つ最終奥義である。山をも消し飛ばせる威力の光の矢でが魔神を滅する。
斬ってない?なんのことかな?
「GYAAAAAAAAA!なぜばれたしー!!!」
残念な叫びを残して光の中に消えていく魔神。
後には何も残らず、光の粒子がキラキラと舞っているだけであった。
「ふぅ。危なかったな。まさかまだ生きていたとは。」
「完全に倒したと思ったよな!」
と、勇者君と戦士君。
「でも、もうこれで完全に倒せたよね。ちょっと情けない最後だったけど・・・。」
「あぁ、世界は救われたんだ。」
ヒロインちゃんの問いに答える勇者の語彙力。
「でもよ、あの岩陰の男は誰だ?なんで俺たちでも気づかなかった魔神の死んだふりに気づいたんだ?というか、なんでこんな魔界の奥の危険地帯に俺たち以外の人間がいんだよ?」
うむ、戦士くん脳筋の割に疑問点が的確。しかし答える気は無い。さて、俺は目的を達したし、これ以上お話の本筋に介入して勇者パーティと深く関わりたくはないので、トンズラさせてもらおう。
あ、これから真の黒幕とか出てきて、覚醒した勇者君たちを罠に嵌める展開になる。それに負けずヒロインちゃんを復活させる筈だった。しかし作者が最後まで書ききってないから勇者君たちは苦戦したままになる。ヒロインちゃんの死は回避したので問題ないのだが、黒幕との対立はこの先変わらず起こるだろう。
なので先手を打って黒幕が力を手に入れる前に儀式に必要な道具とかは全部処分してある。世界の根源に触れカオスの中から深淵の力を呼び出しその身に宿す魔神王化の儀式や、強力な魔神を大量に呼び出す魔法の封印を解く儀式、王国の民を操って勇者を攻撃したり・・・などはできなくなったわけだ。あとは勇者くんたちに黒幕の名前とか計画を記した置き手紙を残しておけば、まぁなんとかなるだろう。
「私は怪しいものではない!ただの通りすがりの村人Aだ!」
俺はそう言うと岩陰から飛び出し、足止めのマジックアイテムを撒き散らしながら脱兎のごとくその場から離脱する。身体強化魔法も重ねがけしているので、おそらく勇者くんや戦士くんが万全の状態でも追いつくことはできないだろう。
「さらばだぁぁ・・・!」
速度は音速を超えている。
周囲のものを吹き飛ばし、地面をめくりあげながら疾走していく超☆不審村人A(自称)をあっけにとられながら眺める勇者一行。
「怪しい怪しくないで言ったら、過去最高に怪しい( ^ω^)・・・!」
全員が同じ感想を持った。やがて静寂が訪れ虫の鳴き声が聞こえ始めた頃、勇者御一行はとりあえず帰る支度を始めるのであった。
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初めて小説を書きます。内容は作者の好きな設定で好きな世界を好き勝手書いていくものになろうかと思います。どうぞよろしくお願いいたします。