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転生者の育て方~異世界子育て英雄譚~  作者: Abel
二章 ソラ、幼児編(6歳)
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コハクが選んだプレゼント。




「はいよ。お嬢ちゃんの希望通りの指輪を仕上げてきたぜ」


「ありがとうございますーっ!」


 リフェンシル鉱山で魔石が発見されてから二日。予想以上の儲けが出たレダンは快くソラの願いである指輪の作成に取りかかってくれた。

 魔石は魔法学院が買い取り、研究に使うとのことで日夜採掘作業が行われている。

 どうやらソラが見つけた魔石はほんの一部のようで、どれほどの大きさになるかすら皆目見当も付かないらしい。

 それほど巨大な魔石だ。希少価値がある以上に、利用価値も凄まじいだろう。

 全容が掘り起こされたら、そのまま魔法学院に運ばれる。

 そこから先はもうレダンの管轄ではないらしく、手が空いた時間で指輪の加工を終わらせたようだ。


「ダイヤモンドの指輪と、普段使うための結婚指輪も……ありがとうございます」


「いいってことよコハクちゃん。こっちはお嬢ちゃんのおかげで大儲けさせてもらったんだ」


 持っている二人に『永遠の絆』を授けるといわれているダイヤモンドの指輪は、レダンの手によって最上級の輝きを放っている。決してその存在を主張しすぎず、煌びやかさを前面に押し出したデザインは見ているだけで惚れ惚れするほどだ。

 そしてさらにレダンからの感謝の証として、アキトたちが普段着けるための結婚指輪(ペアリング)も譲り受けた。

 それぞれのリングの内側にはアキトとアイナの名前が彫られており、正真正銘、この世に二つとない二人のためだけの指輪となっている。


「ありがとうございます。ありがとうございますっ!」


 これ以上ないほどの出来にソラは感激している。これならアキトもアイナも喜んでくれると確信するほどの出来映えだ。

 絶賛の言葉にレダンも破顔する。大声で笑いながらソラの頭をわしわしと力強く撫でる。


「アキトとアイナちゃんによろしくな、お嬢ちゃん」


「はいっ!」


 これから再びリフェンシル鉱山に向かうレダンを見送ると、ソラは二種類の指輪を慎重に箱に収める。盗まれたりシロが飲み込んでしまうかもしれないから、しっかり隠しておかなくては。


「さて。ソラちゃん、申し訳ないんですが今日は一人でお留守番出来ますか?」


「わぅ?」


 『秋風の車輪』二階の宿屋の一室は、アイナのおかげでアキトとソラの部屋となっている。アキトたちがクエストに赴いても、その間はアイナが管理をし、帰ってくる場所としてしっかり機能している。

 ソラはいつも通りに部屋に戻り、机の引き出しに指輪をしまった。

 コハクは指輪が仕舞われるのを見届けてから、ソラと視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。


「出来ますけど、どうかしたんですか?」


 ソラとしてもコハクが一人になりたいのであれば、尊重するつもりでいる。

 アキトがいなくて寂しくてわめき、散々迷惑を掛けたのだ。

 いくらコハクが叔母だからといって、これ以上甘えてしまうのも気が引けるのだ。


「コハクはコハクで、兄さんたちへのプレゼントを用意しようと思ってましてね」


 えへへ、と小さくはにかむコハク。

 そもそもアキトたちへのプレゼントを提案したのはコハクなのだ。

 指輪はあくまでソラからのプレゼント、ということだろう。コハクにはコハクの贈りたい物があるということだ。


「それならボクもお手伝いしますよ!」


 なにしろコハクはソラのために尽力してくれたのだ。ソラのためにクエストを受注して、同行することも許してくれた。ソラがコハクに抱いている大恩を、どう返せばいいか悩んでいたくらいだ。


「んー……」


「だ、ダメなんですか?」


「あーいえ。ソラちゃんの気持ちは嬉しいんですが、あんまり……その」


 コハクは決してソラを拒絶しているわけではない。

 だが、内容が内容なだけにソラを誘うのを躊躇っている、そんな表情だ。

 言い淀むコハクが、鞄から一枚の紙を取り出した。部屋に戻ってくる前にギルドから受けたクエストのようだ。


 クエストが書かれた紙を、ソラは受け取って読み上げた。




 ~幽霊屋敷の調査~


 ランク:D

 募集人数:一名~

 依頼人:大工ギルド『アツモト』棟梁・ジェノス

 報酬:5000ゴールド


『スタードットから十五分ほど歩いた所にある屋敷を解体することになったんだが、どうにも変な空気がしてやがる。

 作業員どもは声を揃えて「幽霊がいる」とか言い出すし、ケガ人も出ちまうし。

 お祓いしてもらおうにも司祭様もいないしな。

 ワシは幽霊なんぞ信じてないから魔物の仕業だと考えている。

 解体の仕事も納期が迫ってる。なるべく早く解決してくれや』




「とまあ、お化け退治なんですよね。……ソラちゃん?」


「だだだ大丈夫です。怖くないです。お化けなんて怖くないですっ」


 読み上げたソラはすぐさま布団に潜り込んでしまった。

 震えているソラの頭を優しく撫でながら、微笑むコハク。


「だから、コハク一人で大丈夫ですよ」


「……コハクお姉ちゃんは、このクエストでお父さんに何を贈るの?」


 見れば報酬はお金だけだ。いるかわからない幽霊事件の解決なのだから、この相場も頷ける。

 とてもじゃないが、アキトたちに何かを贈るために選んだクエストとは思えない。


「家を」


「……家?」


「ええ。これをクリアすれば大工ギルドに伝手が出来ます。コハクはそれで、兄さんたちに家を贈りたいんです」


 コハクがずっと考えていたのは、この部屋のことだ。

 『秋風の車輪』に気にくわない部分があるわけではない。

 だがアキトも所帯を持ったのだ。いつまでも宿屋の一室を借りているわけにもいかない。

 世間体、というわけではない。


「姉さんとソラちゃんが待っている、兄さんが帰ってくる場所。コハクが兄さんに贈りたいのは、暖かい居場所なんです」


「……居場所」


 コハクの言葉にソラはイメージする。宿屋の一室ではなく、自分たちの家で、帰ってきたアキトに「おかえり」の言葉を言える光景を。

 稼ぎに出るアキトと、そんなアキトを出迎えるアイナと自分を。

 自分たちだけの空間というものが、とても幸せな光景に見える。


「だからちょっとだけ待っててください。ちゃちゃーって解決してきますので」


「わぅ……っ」


 立ち上がるコハクの袖を、ソラは掴んだ。

 指輪を用意したのだから、ソラがコハクの手伝いをする必要はない。むしろ足手まといになってしまう可能性の方が高い。

 でも。

 それでもソラは、コハクの手伝いがしたかった。


「ボクも。ボクにも、手伝わせてください」


「……危ないかもしれないんですよ? 建物自体も老朽化してますし」


「それでも、手伝いたいです。コハクお姉ちゃんのお手伝いがしたいんです」


 布団から顔を出したソラは、じー、っとコハクを見つめる。

 少し困った表情をして、コハクは苦笑した。

 その表情だけで全てを理解出来る。


「わかりました。ソラちゃんの力を、コハクに貸してください」


「はいっ!」

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