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転生者の育て方~異世界子育て英雄譚~  作者: Abel
二章 ソラ、幼児編(6歳)
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宝石を探していたら。




「おっきー!」


「リフェンシル鉱山。王国の中でも一、二を争う巨大採掘場ですね」


「お父さんたちにぴったりな指輪、見つかるかな!」


「見つかると思いますよ」


「わぅ~!」


 スタードットの街から馬車で一日を掛けて、ソラたちはクエストの採石場を訪れていた。

 三つの山が連なる山中にあるリフェンシル鉱山は、王都の鉱石ギルドが中心に採掘を進めている。

 採掘される宝石の種類はそこまで多くはないが、王都で販売されている宝石の大部分はここで採掘され、加工職人の手を経由して王都に出回るのだ。


「ほらお嬢ちゃん、子供用のピッケルだ。露出してる宝石を傷つけないように、そーっと、そーっとだぞ?」


「そーっと、ですね!」


「はっはっは。いい返事だ」


 依頼主である鉱石ギルド『ジュエルズ』に所属するレダンが大声で笑う。

 宝石を加工するといった、繊細な仕事には見合わない熊のような大柄な男は、大きな手でソラの頭をわしわしと撫でる。


 今回のクエストに限り、ランクも低く、魔物との遭遇もないということでソラはコハクとの同行を許された。

 アイナと同じくAランクであるコハクであれば、Dランクのクエストで子供を連れて行くことも認められる。それだけの実力と信頼がコハクにはあるのだ。


 与えられたスコップとツルハシで地面を掘りながら、宝石とは呼べない小さい欠片がいくつも見つかる。綺麗な欠片はそれだけでも魅力的なモノだが、レダンの希望にはそぐわない。


「うーん。こういう集めてもいいと思うんですけどねー」


「宝石は大きさ、形で価値が決まりますからね。仕方ないんですよ」


 ソラがいた世界でも宝石の価値は似たようなモノだった。けれど、あちらの世界ではもっと技術が高いために形は特に問われなかったような気がする。

 それは機械文明が発達した向こうの世界ならではのものだ。魔法文明が発達しているこちらの世界では難しいのかもしれない。


「わぅー。埒があかないですね」


「こういうのは気長にやるものですよ」


 土を掘り、宝石を探し、慎重に採掘する。

 今までアキトにべったりで、外で土にまみれることの少なかったソラにとっては新鮮な体験である。

 だがしかし、いかんせんこれといった目標が定まらない。アキトたちに贈りたい物も見つけられない。

 三時間もすればさすがに飽きてしまう。コハクは隣で額に汗を掻きながら採掘しているも、疲れているのが一目でわかるほどだ。

 ソラの目から見ても全体的な効率が悪い。どこに宝石が埋まっているかもわからないのだから仕方のないことなのだが。


「あ、そうだ!」


 思い立ったソラは持っているピッケルで器用に地面に魔方陣を描いていく。

 エルフ――ジークリンデから譲り受けた魔道書の中に記されていた魔法の一つ。

 同じ魔法は人間が書き上げた魔道書にも記されていたが、エルフたちのは同じ魔法だが人間のものよりさらに高度な条件を設定できる優れものだった。


探査サーチ! 条件は、土と石以外の!」


 範囲はレダンが準備したこの鉱山一帯。宝石や鉱石を絞り込むために、土と石以外が当てはまるように探査サーチの魔法を発動させる。

 発動した魔法によってソラの頭の中に周囲の地図が一斉に浮かぶ。

 平面上の地図にいくつもの細かい青い点が穿たれ、それが宝石や鉱石の印なのだろう。


「むむ。むむむ……?」


 土と石以外、つまり地面の中をどこまでも探査サーチの魔法は駆け巡る。深ければ深くなる毎に色も濃くなっていく中で、ソラは一際濃い色で、広大な宝石を発見する。


「わぅ、わぅ!?」


 それはあまりにも大きすぎて、全容を掴む前にソラの目が回ってしまった。尻餅をついたソラを駆け寄ったコハクが抱き起こす。


「なにか見つかったんですか?」


「た、たくさん。たくさん、深いところにありました。それと、そこよりもっと下に……すーっごく大きいのが」


「本当かい、お嬢ちゃん?」


 ソラが探査サーチの魔法を使ったことに気付いたレダンが駆け寄ってくる。

 ソラが指差した場所を、人手を増やして一斉に掘り始める。

 掘削が進むにつれて湧き上がる歓声は、ソラが示した通りに大量の宝石が露出してきたのだろう。


「もっとかい?」


「もっと、もっとです」


 ソラが見えたあまりにも大きな宝石――いや、それは本当に宝石なのだろうか。

 ソラは土と石以外を基準にした。ソラの頭の中で石と宝石や鉱石は分別されているため、ただの石、というわけではないだろう。


 腕力に自信のある作業員たちがどんどん土を掘り起こし、次々に土が運ばれていく。

 その土塊の中にも宝石は眠っているが、レダンを初めとした作業員たちはソラが気付いた巨大な宝石が一目見たくて脇目も振らずに掘り続ける。


 スコップでは掘り起こせない地層に当たれば、コハクが魔法で手伝った。

 恐らく五メートル近くは掘り起こしただろう。中で掘り続けていた作業員が、スコップにぶつかる手応えを感じ取った。


「見つけたぞー!」


 声を張り上げた作業員に気付き、ソラたちは一斉に掘り起こされた穴を覗いた。

 丁寧に土が払われ、激突したなにかが見えてくる。

 それはあまりにも大きくて、おおよそ五メートル四方に掘られた穴の中だけに収まっていないようで。


「こりゃ魔石か!? 随分純度の高そうな奴じゃないか!」


「魔石……」


 ソラはこれまでに魔石を見たことは何回かあるが、記憶に残っているのはディアントクリスの体表を覆っていた真紅の魔石だ。

 だがこれは違う。確かに魔力は感じるのだが、普通の魔石よりも綺麗な澄んだ青い色をしている。


「すげえ。すげえなお嬢ちゃん! これだけのサイズの魔石なんて大発見だぞ!」


「えへへっ」


「宝石も想像以上の数が取れてるようだし、お嬢ちゃんの魔法は凄いな!」


「えへへ~っ!」


 レダンの大声に作業員たちが次々に道具をもって周囲を掘り起こしていく。宝石はもとより、これだけ巨大なサイズの魔石はこれまでに発見されたことのないものだ。


「こいつは魔法学院にそのまま売れるだろうし。ここから採掘できる宝石だけでも十分に釣りが来そうだぜ……っ!」


 どうやらレダンの目算ではここら一帯で掘り起こせた宝石だけで依頼に出した分は賄えるらしい。それはつまり、ソラの手柄で早期にクエストがクリア出来たことに他ならない。


「ほえー。さすがソラちゃんというか……いえ、さすがですね」


「えへへっ」


「コハクも負けてられないですねー。ちょっと一発魔法で地面掘り起こしてきますね!」


 ソラに負けじと、コハクも袖を捲って魔方陣を描き上げようと地面に手を伸ばす。

 おそらくは一斉に地面を隆起させる魔法でも使うのだろう。それに気付いたレダンがさっとコハクを止めに入る。


「おっと。魔石を傷つけちゃいけないから手荒な魔法はよしてくれよ?」


「がーんっ!?」

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