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転生者の育て方~異世界子育て英雄譚~  作者: Abel
一章 ソラ、赤子編(0歳)
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ソラ、魔法に興味津々?




「はい。確かにグロードウルフの狩猟報告が送られてきてますね」


「よかったよかった」


「私もびっくりですよ。いきなり『報告はシェンツー家から来るはずだけど』って言われて私が理解できると思いましたか?」


「受付嬢なら余裕じゃないか?」


「貴族様経由での報告なんて前代未聞ですよ!?」


 着替えてミカが貯まっていた冒険者たちとの受付を終わらせる頃にはすっかり日が落ちていた。その間にソラの食事を済ませ、ぬるめのタオルで柔肌を優しく拭いてあげた。

 赤子用のお風呂はさすがに宿屋にないらしく、そこら辺はアイナがどうにかすると言っていたからアキトはアイナを信じて任せている。


 アキトの報告は当然ミカに信じて貰えるわけがなかった。確かにクエストの舞台である霧の森はシェンツー家の領内にあるが、ダンジョンと化している霧の森の管理自体は冒険者ギルドが任されているのだ。

 だから何があってもシェンツー家は関わってこないと思っていればこれである。


「バイラルさんから譲ってもらったミルトニアムの硬貨もあるぞ?」


「……あのー、アキトさんって何者ですか? シェンツー家のバイラル・フロード・シェンツーといえば霧の森で起きた不祥事ガン無視で有名な伯爵ですよ?」


「親馬鹿だったからさ……」


「はい?」


 ミカも信じられないだろう。アキトとバイラルが懇意になった最大の理由の一つが愛娘であるユリアーナを救ったことだとは。

 アキトは気付いていないが、バイラルからすればアキトはバイラルにとってもユリアーナにとっても恩人なのだ。それをどうして無碍に出来ようか。

 だからこそのミルトニアム硬貨だ。バイラルからアキトへ、感謝しきれない感謝を込めて。


「とはいえこれでクエストは終了です。お疲れ様でした!」


 ミカの明るい声でようやくクエストが終わったのだと改めて思わされる。昔からギルドの受付嬢から始まり受付嬢で終わるのが当たり前だったから、ミカの声でようやく冒険者に戻った自覚が湧いてきた。


「こちらが報酬の三万ゴールドですね。金貨でいいですか?」


「ああ。構わないよ」


 本来グロードウルフの狩猟だけなら10000ゴールドの報酬だけだったのだが、追加で九匹仕留めたのが大きかったのだろう。予想よりも多い報酬を前にさすがのアキトもほくほく顔である。


「アイナに借りてた分を返しても全然余裕があるな」


「だー(ほぇー。冒険者ってやっぱり稼げるんですねぇ)」


 ソラがここ二日間で見ていた街の物価はおおよそ自分がいた世界より安めな印象だ。

 貨幣の違いがあるから同じであるわけはないのだが、甘いジュースが100ゴールド前後なあたり相場は違いのだろう。

 宿屋の利用料金は冒険者ギルドとの共同経営だからか鷹の銀貨一枚、つまり1000ゴールドで三食まで付いているのだから相当安い。

 とはいえ今回の稼ぎでは全部をつぎ込んでも一ヶ月分にしか持たないのはアキトもわかっているのだろう。

 こまめにクエストをこなし、稼ぐしかないのだ。


「ソラ、なんか欲しいものとかあるか?」


「だー?(ほしいもの、ですか?)」


「ああ。クエストの成功を祝う感じでさ」


「だー……?(おとーさんがほしいもの買った方がいいですよ? ボクまだ欲しいもの扱えませんし)」


「はは……森での生活が長くて何が欲しいかもわからない」


「だー!?(おとーさん枯れてませんか!?)」


 欲がないアキトを心配しながらも、そのまま貯金ではせっかくのリハビリがもったいないと感じたソラは少しだけなにかないかと考える。

 出来ればアキトの役に立つものがいい。そもそも子供の玩具ではソラは満足しないし、知育の積み木なども必要ない。

 そしてソラが思いついたのは。


「だー(魔道書が、欲しいです)」


「魔道書?」


「あい!(魔法がもっと使えれば、おとーさん助けられますから)」


 思えば霧の森ではソラは完全にお荷物だった。アキトはそんなこと微塵も考えなかっただろうし、そもそも赤子であるソラに手伝ってもらうつもりはさらさらなかった。

 けれどもソラは一緒に行く以上はアキトの役に立ちたいと思っている。武器も持てない自分に何が出来るか考えついたのは、神様からもらったチート能力。


 肉体面については正直どうしようもない。これから成長するのだ。成長して可愛らしく美しく愛らしいびゅーてぃふぉーソラちゃんになってアキトを誘惑するのはこれから次第だ。

 けれども中身なら。ソラは前世の記憶を持っている赤子であり、生まれながらに念話によってアキトと会話も出来る高度な魔法使いである。


「ふーむ、まあ、ソラが欲しいならそれでいいが……絵本とかでもいいんだぞ?」


「だー!(魔法を覚えたいんです!)」


 そんなソラの気持ちを知ってか知らずか。アキトは頬をぽりぽりと掻きながら承諾する。

 アキトからすればちょっと背伸びしてるなーと思いつつ、内心は結構そわそわしているようだ。

 そら(子供からお父さんを助けたいとか言われれば)そうだ。


「じゃあ明日買いにいくか」


「あいっ!(はいっ!)」


 元気いっぱいに返事をしてソラは明日が楽しみだ。明日だけではなく、これからもアキトと過ごせる毎日を思うと楽しみで仕方が無い。

 アキトと出会ってまだ二日目。それでもアキトとソラはしっかり親子となっているようだ。

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