歌
今日は1話投稿です。ふう、ギリギリアウトだったぜ……
カミーユは夜遅く仕事を終え、朧な足取りで帰るところだった。今までの疲れからか、道を間違え、いつもとは違う通りへ来てしまった。ハッと気づいて辺りを見回す。
「ここ、どこ?」
どうやらそこそこ裕福な商家の集まる地域らしい。この都市の商家は、表通りに店を構え、続く裏手に自宅を持つのが普通である。その裏手の路地に来たみたいだった。引き返そう、そう思った時に何か聞こえて来た。
「〜〜〜♪〜〜〜〜〜♪」
歌だ。まだ遠い。興味を惹かれ声のする方に行ってみると、塀の向こうから、少女の歌声が聞こえる。
いったい誰?
闇に隠れて私の秘め事を聞いていたのは
カミーユは盗み聞きしているのがバレたと思ってあたふたした。謝罪の言葉を告げようと思ったが、その前に声が続く。
ロメオなのね?
カミーユはロメオではない。逢引相手と間違えられたようだ。
ああ、夜の暗がりで私の顔が見えないの?
わかってるでしょう?
あなたの眼に私の顔が赤らむのが映ったら
それはあなたに告げているのよ
私のこの純粋な愛を……
カミーユがいたたまれなくなって、違うと声を上げようとしたとき、中年の男の声がした。
「ミシェル、そろそろ演劇の練習は切り上げなさい」
どうやら劇の練習をしていたみたいだ。
「もう、これは歌劇って言うの! 何度言ってもわからないんだから!」
「はいはい、いいから寝るよ」
「もう、お父様ったら」
カミーユはホッとしたと同時に、人騒がせなと若干逆恨みした。だが、良いものを聴いたと顔を綻ばせるのだった。
ロメオとジュリエットの歌詞は、オペラ対訳プロジェクト様(ライセンス:パブリックドメイン)から頂きました。
https://www31.atwiki.jp/oper/pages/1368.html