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山賊少女と魔法の杖  作者: babie
孤児時代
2/20

老婆

3話連続更新の2話目です。

面白いのか面白くないのか、でもまぁちょっとは覚悟しておけよ。

---

2017-06-25 「魔術師」から「老婆」に改題。また、加筆修正しました。

「いてて……」


 赤髪の子供は顔をしかめ首を振る。手元にバゲットが落ちている。急いで確保し、埃を気にして払いながら立ち上がる。そこは、まるで貴族様が住むような部屋だった。天井にはシャンデリア、四面のクリーム色の壁には、春夏秋冬の情景を描いた絵画が掛けられている。そして、まっさらなクロスがかけられた卓と優美な椅子が2脚。卓にはお茶とお菓子の準備がしてあり、椅子にはこの部屋の主人と思われる身なりからして上品そうな老婆が座っていた。


「奥様、屋根を壊してごめんなさい」


 赤髪の子供は焦って謝る。


「すぐ出て行きますし、屋根も直します」


 出入り口はどこかと見回したが、扉もないし窓もない。不思議に思っているところ老婆から声がかかった。


「まぁまぁ、せっかくだから、年寄りの相手をしていってくれないかね」

「はい、奥様」


 屋根を壊した身である。否応もない。幸い今日の仕事は上がりで、昼日中でもある。夕飯の時間にも間に合う。自分を待つ弟分・妹分のことを考えつつも、不思議な部屋と不思議な住人に興味が湧いて、少し腰を落ち着けることにした。


「どうぞ、お座り」

「はい、ありがとうございます」


 座るときにテーブルの下をそれとなく見てみたが、特に何もない。カミーユはバゲットをテーブルに置く。老婆は赤毛の子供に身振りでいつの間にか注いであったお茶を勧める。お茶は熱かった。


「ところで、あたしの名は、〇〇〇〇〇。お前さんは?」


 老婆の名前をはっきりと聞いたはずなのに、何も理解できなかった。少しぽかんとした後、慌てて答える。


「失礼しました。私はカミーユと言います」

「あら、カミーユちゃんは行儀がいいのねぇ。貴族の子かしら?」

「やだ、おばあちゃん、お嬢様が屋根から落ちてくるわけないじゃない!」

「そりゃあそうだ」


 2人の笑い声が響く。ひと段落したところで、カミーユは気になっていたことを訊ねた。


「奥様、不躾ながら気になるのですが、この部屋でどうやって暮らしているのですか? 窓も扉もありません」

「ふふふ、気になるかえ? 必要あるものはあるし、必要ないものは無い、とでも言っておくかね」

「……奥様がお望みとあらば」

「ふむ、納得してない顔をしてるね。じゃあ、あの絵を触ってごらん」


 老婆は春の絵画を示して言った。カミーユは、もしかしてと、ゴクリと息を飲む。おずおずと歩いて行って、絵画をよく観察してみる。なんの変哲も無い春の丘の風景。少しは花とか動物とか描けば良いのになと思った。手をかざしてみる。風が吹きつけることもない。いよいよだと、そっと人差し指で触れてみる。何も起こらない。額縁に触ってみる。ただの額縁だ。息を吹きかけてみたり、開けと念じてみたりするが、何も起こらなかった。


「ふふふ、ふふふふふ、ハハハハハハハ」


 老婆は笑い出す。カミーユはズカズカと席に戻り悪態をつく。


「もーっ、奥様。悪趣味ですわ」

「すまんすまん、そこの角の絨毯をめくってごらん」

「今度は大丈夫ですよね?」

「さあて、ふふ」


 カミーユは示された角の絨毯を捲った。すると、継ぎ目などないと思われた絨毯は、綺麗に四角に持ち上がった。ちょうど1人がくぐれそうな大きさの枠と取っ手が見えた。取っ手を引き上げてみると蓋が持ち上がり下へと続く穴があった。梯子が立てかけてある。カミーユは元に戻して、手をはたきながら戻る。


「今度は得心いったかね?」

「はい」


 カミーユはすっきりとした顔で頷き、お茶を啜る。


「カミーユちゃんのことを教えてもらっていいかい?」

「ええ、結構よ。なんでもおっしゃって」


 カミーユは澄まして答える。それから、老婆とカミーユは、お互いの暮らしや町のことなどを、楽しく話すのだった。


わからん、何も……

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