第二術式 出会い(前編)
前回書いた短編を長編化しました!
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ロリ美少女がこの学校に来てから3日が経ったある日。
男子生徒は普段以上にソワソワしていた。
原因を言おう。
みんな彼募(彼女募集中)なのだ。
彼女持ちは、男子より女子が圧倒的に少ないこの高校では、英雄も同然の存在である。むしろ神。
ちなみに、『西風の五代英雄』に数えられる「合羽レイ」は『方程神』と呼ばれたが、6人も女子を掛け持ちしていたというし、彼女がいれば神も同然というのが1つの常識となっているのだ。
余談だが、『西風の五大英雄』とは、今では校則となっている『定石法典』の草創者5人のことを指し、校内には彼らが描かれた壁画まで飾られている。
もはや存在したかどうかも怪しまれ、五代英雄にまつわる七不思議も残されているぐらいの古人だ。
英雄であり神である。そんな存在である。
話を戻すが、そんな英雄に俺もなれるかも。などと下らない幻想を抱くものが、校内には少ないないという事だ。
そういった幻想を打ち砕く上条さん的な主人公がいれば万事解決だが。いるわけもなく……
馬鹿な男子どもは、魔女狩りならぬ女子狩りを行い、女子から毛虫の如く嫌われている訳なのだ。
そんなわけで、ここにも、なんとも至極残念な夢見男がいる。
「あのなあ……捕まるぞ……」
薫は、眼前の夢見男に対して、深〜い嘆息をこぼす。
「いや、ここで諦めたら旧友に会わす顔が無い!」
お前には旧友どころか俺以外の友人すらいねーだろ。とツッコミたくなるが、ここは可哀想なのでぐっと堪える。
当の夢見男は一体全体なにをしているかというと、柱に潜んでいた。
あたかも偵察隊のように、廊下を歩く生徒に目を光らせている。見てくれは結構な変態だが、本人平然と人間観察をしている。
「旧友どころか親が泣から……っていうかまずあの子が泣くから」
「たわけ。俺のカッコよさに嬉し涙を流すだろうよ。見てろよ我の伝説を……」
『聖母教会』屈指のロミニウス大聖堂で洗礼を受けた者とは思えないクズっぷりに薫は辟易とするが、それよりも気になるものが深夜の手には抱えられていた。
大量の小説。
本の内容はともかく、なぜこんな事になっているのか。
ことの発端は、2日前へと巻き戻る。
紫髪の美少女が転入して来て1日が経ったクラスでは、早くも美少女争奪戦が行われていた。
男子は積極的に少女へ話しかけ、情報収集。女子グループは戦力を高めるために、勧誘を。大勢のクラスメイトが、彼女の机を取り囲む中、1人だけ出遅れていた。
そいつはオタク。
深夜は基本的に2次元住人だが、今回に関しては別腹である。理由は、何と言ってもロリ美少女。まるでアニメヒロインのような美貌と体型に、深夜の心はメロメロだった。
しかし、恋愛経験ゼロ。コミュ力もゼロ。女子免疫が全くない彼にとって、女子へ自分から話しかけるのは無理難題だ。
そこで、1日試行錯誤した結果思いついたもの。
それは!
「名付けて、『廊下でぶつかってしまって、あっすみませんっ。作戦』!」
教室に響き渡る声で、心の声を漏らした深夜に対し、周囲は「またか……」みたいな顔をするが(薫は特に)、本人の目は少女漫画のヒロインのように輝いていた。
というわけでこの馬鹿は、それを実行しようとしている訳だ。
「お!ついに闇咲さんが通るぞぉ。ついにこれで俺もリア充だ」
ちなみに、ロリだか美少女と言われている彼女にもちゃんと名前がある。闇咲輝夜だ。
父親の転勤が理由でこっちへ引っ越して来たらしいが、彼女は断固として、父親の事を語りたがらないという。
誰もそのことを言及しようとはしないのは、父親の話題になると表情が暗くなる輝夜を気遣ってのことだろう。
そんなこんなで何かと話題の彼女は、可憐に紫髪を揺らしながら、深夜たちへと気づかずに近づいてゆく。
図書室の帰りなのか、彼女の手には、深夜と同じように本が抱えられていた。
「これはチャンスだ!相乗効果が期待できるぞ!」
「相乗効果の使い方間違ってるから……」
彼女との距離、僅か3メートル。
徐々に、彼女の息遣いが聞こえてくる。
徐々に、花のような甘い匂いが近づいてくる。
そして、すぐ柱の真横に来た瞬間。
「輝夜さーん!付き合ってくださ」
「フリーッズ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
これが、深夜と輝夜。オタクと魔女の出会いだった。
To be continued
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