キミというヒト
キミはいつだって見ていないフリをする。
涙の行方、心の在り処を知っているはずなのに。
キミはいつだって冷たく人に接する。
闇を包んだ光の寂しさを感じていながら、寄り添うことを頑なに避けて。
***
茜映す雲を見ながら、キミは「出ていけ」と言い放つ。
彼女は泣きながら、その場を走り去る。
キミは出ていった彼女を窓からずっと眺めていたよね。
わざとらしくそう言って、彼女がどんな反応をするのか試していたんだ。
キミはキミが考えているよりもずっと残酷な人だ。
掴まれた心を潰そうかと迷って、結局自分を壊せなかったキミは、実のところはとても弱い存在なんだ。
キミはそんな弱い自分を認められず、それどころか隠すために他人を傷つけることを厭わない。
キミの本性のことならよくわかるよ。
だってキミのことをずっと近くで見てきたんだもの。
ほら、鏡をよく見て。
ちゃんと、自分の顔を見て。 見えるでしょ? キミの瞳に映っているんだから。
「――やっと見つけてくれたね。さぁ、僕と代わろうよ」
《了》