好奇心は魔女っ娘は殺せないらしい…
「とりあえず、自己紹介しておきます。名前は武内晴幸、あ~と…正確には姓が武内で名が晴幸、見た通りの何も出来そうに無いオジサンです。」
自己紹介…なんて何年ぶりだろう…
そんな事する用事も仕事もしてないからなぁ…
「で、まず今の自分達の置かれてる状況を伝えておきますが、おそらく魔王を倒して無事に凱旋なんて、あのじいさん'sは考えてません。」
当然そんなこと言われても納得は出来ないだろう…
たぶん剣士の兄さんは食いついてくる。
「どう言う事だ?何でそんな事、あ…」
「それよりも魔女っ娘って何?」
あれれ?魔女っ娘の方が変な所に食いついて来たぞ…
しかも剣士の兄さんの言葉を遮るほどの勢いで…
「いや…それは、ただ単に名前を知らないから個人を特定する為の仮称として…」
「だぁ~!!そんな事よりも」
すると今度は剣士の兄さんが、こちらの言葉を遮る。
「あの司祭のじいさん達が俺達が帰って来るのを考えて無いってどう言う事だよ!!」
「うるさい…黙って…」
魔女っ娘が呟いて指を指すと剣士の兄さんが、泡を吹いてぶっ倒れた…
「え~と…これは…」
「大丈夫、只の麻痺系の拘束魔法だから直ぐに治る」
こちらが対応に困っていると魔女っ娘が、これ以上無いってくらいの笑顔で答えて来る…
なんとなくこの娘が此処へ来たのか判った気がする…
これで質問に答えないと、たぶん痛い思いをしそうだ…
「さぁ答えて、魔女っ娘って何?」
「いや…そこまで食いつかれると困るんだけど…さっきも言いかけたけどね、名前を聞いてないから見た目から予想して魔法使いなのかなとか…もしかして違った?こっちの常識とかよく判らないからね…」
「大丈夫、魔法使いであってる…」
魔女っ娘が答えて頷く。
とりあえず頷くのは肯定で良いっぽい。
その辺りは向こうと同じ様だ…
「そこで何かある毎に魔法使いの女の子とか呼んだら長いでしょ?だから省略して魔女っ娘と…まぁこんなオジサンにそんな可愛らしい呼ばれ方したらキモいって言うなら止めるけど?名前を教えてくれたらそっちで呼ぶし…」
「省略?キモい?何それ?」
あれ?何やら質問が増えたぞ…
魔女っ娘の意味を教えたらそれで終わりにならないのか…
だいたい【省略】が質問に含まれてるって事はこっちの世界にそういった概念が無いのか?
「流石に質問ばかりされたら話さなきゃいけない事を話す時間が無くなっちゃうんだけど…」
「嫌ッ!!」
あぁ…やっぱりこの娘は所構わず、この好奇心を発揮して人様にご迷惑をかけたタイプか…しかも話の腰を折られそうになると、さっきみたいに無理矢理に黙らせると…
仕方が無い…なるべく気になる様な発言をしない様に言葉を選んで行くしか無いか…
「…じゃあまずは省略ってのは意味だけ言うと長いものを短くすることで例えば、馬ってこっちの世界にも居るよね?」
「うん…居る…」
「でも会話であの【毛並みの白い馬】とか、いちいち言ってたら面倒でしょ?だからその場合は、その馬の重要な部分の【白】ってところと【馬】をとって【白馬】って言ったりしない?」
「確かにする…」
「それが省略するって事…で、次の質問のキモいってのは、単純に気持ち悪いってのを省略しただけ」
「ん?気持ち悪いは、そんなに長く無い…」
「そうなんだけどオジサンの居た世界の君くらいの歳の娘はそれでも長いらしくて色々と省略してたんだよ…」
とりあえずは納得してくれた様子だ。
これで今度こそ本題に…邪魔が入らなければ良いな…